インタビュー

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吉田多摩留 役 戸塚純貴 さん

2015.12.17

美輪子にのめり込み、その思いに苦しんでいる多摩留ですが。
多摩留はすごく真っ直ぐで純粋なんだと思います。育ってきた環境や家族、いろんなものが多摩留の人格を形成してきて、本当は心の優しい奴だと思うんです。そんな彼が美輪子という、今まで知らなかった世界を生きてきた女の子を好きになってしまった。セリフにロミオとジュリエットなんて言葉も出てきましたが、美輪子のことしか考えられなくなっているし、独りよがりかもしれないけれど、今は突き進むしかない、というところまで気持ちが追い詰められている状況ですよね。
最初に台本を読んだときの感想は?
前作の『牡丹と薔薇』が大好きだったんです。当時、僕は中学生で、偶然“ボタバラ”を見て、『これが昼ドラなんだ、すごいな』と一気に引きこまれました。昼ドラのおもしろさを改めて広めた、革命的な作品だと思っているので、今回はタイトルを聞いただけで興奮しました。台本を読んだら今回も前作同様に刺激的かつ繊細な物語で、登場人物一人ひとりの感情が丁寧に描かれ、まさに“完璧な台本”でしたね。どこにも隙がなくて。

完成度の高い台本に挑む心境は? 多摩留は演じるのが簡単な役ではないですよね。
クランクインまでは、“ボラバラ”の名の付く作品に参加できることに、ワクワクしていたんです。いざ現場に入ると、自分なりに考えていた多摩留像が全然浅かったことに気づき、そこから仕切り直して演じました。それに、いろいろ難しいこともあるだろうけれど、それもすべて楽しもうと思ったんです。何より“ボタバラ”の世界に入れたことがうれしくて。中学生の僕には想像も出来なかったことですから。
演じている際、監督からどんな言葉が?
セリフの吐き出し方や目線の動かし方など、一つひとつが弱い、と。どれも日常ではそんな風にはしないけれど、この作品の中ではそれが“日常”である、強い表現を求められました。日常と非日常のはざま、というか。
セリフで心に残っているのは?
例えば美輪子に想いを伝えるとき、好きということを5行ぐらいのセリフで言うんです。そういう表現方法はこれまでやったことがないので、自分の中に落とし込むまでに時間が必要でした。ちょっと戯曲っぽい感じもしましたね。

中島丈博さんの書く作品に出演して、プラスになったところは?
独特のセリフで感情をむき出しにする芝居は難しかったですけど、勉強になりました。多摩留と家族の関係、多摩留と美輪子の関係、多摩留と美輪子の家族の関係。それぞれの関係性の中で、多摩留の感情がどんどん変化していったんです。この場面ではこんな気持ちだったのが、次の場面ではここまで感情を高めて、という激しい起伏の変化が台本にしっかりと書かれていたし、演じながら構築されていきましたが、僕にとっては初挑戦の演技でした。
そもそも、なぜ多摩留は美輪子にあんなにも激しい恋をしたと思いますか?
人って、自分にないものを持っている人に惹かれることがありますよね。多摩留が自分とまったく違う場所に住む美輪子に惹かれたのと同じように、美輪子も多摩留の暮らしに興味を持ってしまったことが悲劇の始まりというか…。きっと多摩留は、それまで何の刺激もない中で生きてきたと思うんです。淡々と家族のためを思い生きてきた、というか。そこで美輪子との衝撃的な出会いがあり、話せば話すほどお互いの話が新鮮で、魅力的で。その時点で、家族のことを優先してきた多摩留が美輪子のことしか考えられなくなり、自分で自分を追い込んでしまったのだと思います。きっと多摩留にとって美輪子は、心だけでなく体も初めて一つになれた相手じゃないかと…。
愛が狂気へと変わった多摩留に対し、戸塚さんは理解できる部分はありますか?
演じていて、バランスが崩れてしまったことで気持ちが逸し、狂気に苛まれてしまったのかな、と感じています。理解できたかと言えば…。普段の僕とは育ってきた環境とか、考え方とか違うことのほうが多いので、どうにか歩み寄りたいという思いで演じてきました。

金曜日の放送では大変な事件が起きてしまいますが…。
多摩留は美輪子を愛してしまったことで、いろんなものを壊してここまでやってきました。金曜の放送で多摩留は、悲し気な表情を見せます。家族思いの良い青年だった多摩留が恋に狂った末、どんな境地にたどり着くか、視聴者の皆さんにぜひ見ていただきたいです。
劇中ではとんでもない恋愛を経験しましたが、戸塚さんの恋愛観とは? ちなみにぼたんと美輪子ならどちら派?
これまでろくな恋愛をしてこなかったので、これから勉強していきたいです(笑)。ぼたんと美輪子なら、美輪ちゃんですね。美輪ちゃんはどんな人にも分け隔てなく接することが出来るから、多摩留とも対等に付き合い、恋までしちゃう。好き嫌いは激しいかもしれないけれど、基本的には心の広い子だと思うので。
最後に、戸塚さんの目指す俳優像を聞かせてください。
できることなら、自分がおもしろいと思えることをやっていきたくて、最近はそんな気持ちで取り組んだ仕事を『おもしろかった』と言ってくださる人も増えてきています。ただそこに甘えていてはいけないと、多摩留を演じて思いました。この役は気を抜くと、自分が喰われてしまう危険性がありました。覚悟を持って演じたし、それがとても楽しかったです。多摩留を演じたことで次にどんな役が来ても、さらに上を目指そうという思いで向き合える気がしているので、この気持ちを忘れずに精進していきます。