「あなたを見つめる」「熱愛」「愛慕」。これは、ひまわりの花言葉。
弁護士の胸に輝く金色のバッジ、それは「ひまわり」である。
太陽に向かってまっすぐに伸び、花を開くその姿が、
「自由」と「正義」を表している。
鈴木泉弁護士。63歳。愛知県一宮市に事務所を構えている。
鈴木弁護士は、35歳の時、一つの事件に出会った。
『名張毒ぶどう酒事件』…。
昭和36年、三重県名張市で女性5人が毒殺された。
犯人とされた奥西勝死刑囚は、獄中から無罪を訴え続けていた。
鈴木弁護士は、27年前、わずか五人だった弁護団に加わった。
初代弁護団長の故・吉田清氏に話を聞き、1審の無罪判決と2審の死
刑判決を読み比べ、「こんな判決で、人の命を奪うことが許されるのか」
と怒りがこみ上げたのが、弁護団入りの理由だった。
再審への動きは紆余曲折を経ている。5年前、新らたな証拠の積み上げで「再審」=「裁判のやり直し」が認められた。
しかし、検察の異議申し立てにより、その決定は一転取り消し。
そして、今年4月、最高裁は名古屋高裁へ審理を差し戻す決定。
これは、いわば判断の先送り。弁護団は会見で「一点の光が差し込んだ」
と表現したが、奥西死刑囚の年齢は84歳。
この高齢で再審無罪までの道のりは厳しい。
会見する弁護団長の顔に悔しさが滲んでいた。
番組では、名張毒ぶどう酒事件への取り組みを軸に、鈴木弁護士を追い、知られざる弁護士の実際を取材しながら、開いたかに見える『重い扉』の意味を検証したい。