SPECIAL
INTERVIEW
渡辺麻友さんがAKB48卒業後、初の連ドラ主演に挑む「いつかこの雨がやむ日まで」。渡辺さんは今回、“殺人者の妹”として世間の目から逃れるように生きてきた、ヒロインのひかりを演じます。悲しみを背負いながら、ミュージカルスターに憧れる気持ちを抑えきれないひかりの思いをどう体現するのか。意気込みを伺いました。
- ひかりは兄の國彦(桐山漣さん)が刑務所に入っているだけでなく、母の由布子(斉藤由貴さん)も精神的に不安定です。ひかりの辛い現状をどう捉えていますか?
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まず、これまでこんなにも悲しみを抱えたキャラクターを演じたことがないので、どう演じればいいのか、と悩みました。私は何事も考え過ぎてしまい、かえって迷宮入りしてしまうところがあります(笑)。今回は必要以上に力まないように、でも考えるところはしっかり考えて、ひかりを演じようと思いました。
撮影が始まると、ひかりを取り巻く状況がどんどん変わっていき、ひかりの心情もその都度、変化していきます。そのときどきのひかりの気持ちに寄り添いながら、演じています。
- 役とはいえ、ずっと負の感情が心の中にある、というのは大変では?
- ひかりがこれまで歩んできた人生も重ければ、ストーリー自体も重い。“ズンッ”と重いものが背中にのし掛かっているようで、正直、かなり追い込まれています。ただ、今回は役の重みや苦しみを感じることが悪いことではないと思っています。ひかりの辛さと、演じることの辛さがどこかで重なり、演技に反映できるはずなので。
- ひかりの印象を教えてください。
- 15年前、兄が捕まるまでは天真爛漫な子でした。ミュージカルが大好きで、『将来、私もミュージカル女優になる!』という夢があって。人生が暗転してからは生きづらくなり、ミュージカルだけが心の支えです。きっとミュージカルがなかったら、生きていられないのだと思います。
- 目立つことを避ける一方で劇団に所属し、舞台に立つことを夢見るというのは相反するような気がします。
- 苦しい毎日の中でミュージカルがひかりの“救い”になっています。ひかりは生活のためにキャバクラで働いていて、お店では鎧をつけていると思います。愛想笑いをしたり、しつこいお客さんをうまくかわしたり。唯一、素に戻れるのが大好きなミュージカルに接しているときだけ。ミュージカルに臨んでいる瞬間だけは、ひかりは自分自身でいられるのではないでしょうか。
私もひかりと同じように、自分のことを信じて活動してきました
- 渡辺さんは「いつかこの雨がやむ日まで」のどんなところに魅力を感じていますか?
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この作品を一言で表すなら、ヒューマンラブサスペンスだと思います。波乱の連続なので、視聴者の皆さんを『土曜の夜に、何だかヤバいドラマがやっている』とハラハラドキドキさせたいです。
いろいろな事件が起こり、ひかりも『よくこんなにもさまざまな不幸が襲うな』と感心するほど、大変な状況に追い込まれます。注目していただきたいのは、ひかりが知らないところでも大変な事態になっていたり、怪しい人物が複数人いたり。それがやがてひかりにも関係してきて…、と予想を裏切る展開なので、ぜひのめり込んで見ていただきたいです。
- ひかりを演じるのは精神的にも大変だと思います。それでも渡辺さんご自身に通じる部分はありますか?
- 置かれている状況に共感するのは難しいのですが、先々の展開で『私はこれまで自分の力だけを信じて生きてきた』とひかりが話す場面があり、私もひかりと同じようにどんなに辛くて大変でも自分のことを信じて活動してきたので、ひかりのセリフに思いの外、共感しました。その場面を撮影したのはクランクイン当日で、さらにひかりに気持ちが近づけた気がします。
- キャバクラ嬢という設定を驚く視聴者の皆さんも多いと思います。
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キャバクラでは同僚にきつく当たられ、ひかりはどこに行っても生きづらいんです。演じていてもしんどくて。でも、キャバクラの場面を通してひかりの苦しみの一端を理解できたら、と思っています。
撮影ではひかりを贔屓にしてくれるお客様に毎回、ものすごいテンションで迫られるんです。これまでそんな経験をしたことがないので、これは私にとっても“新感覚”です(笑)。
- 共演者の皆さんについて伺います。お母さん役の斉藤さん、因縁のある幼なじみの和也を演じる堀井新太さんと撮影していかがですか?
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斉藤さんはそこにいるだけで圧倒されます。二人で対峙する場面が多くて、初日から斉藤さんが作り出す世界に引き込まれました。斉藤さんからは、自分でも気づかぬうち、いろいろなものを引き出していただいていると思います。
堀井さんとはまだ数シーンしか撮っていなくて、ひかりはまだ和也さんに心を開いていません。幼い頃の愛情は残っているものの、言える立場じゃない、と。そこから二人の関係もドラマチックに変化していくので、堀井さんのお芝居にしっかり反応して、ひかりの新たな一面を表現していきたいです。
- この作品の大きな要素の一つがミュージカルです。渡辺さん自身も熱心なミュージカルファンと公言されていますね。
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最近、ミュージカルブームという言葉をよく聞きますし、ドラマの題材になるなんてミュージカルが注目を集めていることの表れだと思うので、ファンとしてもうれしいです。さらにその作品に主演できるなんて、光栄です。
今年はミュージカルの舞台『アメリ』(5月〜6月)に主演させていただき、まだその余韻が体の中に残っているので、劇中でのミュージカルシーンの撮影が本当に楽しみです。もし私が視聴者の立場だったら、ファンとして中途半端なものは見たくないので、挑戦する以上、本当の舞台と同じように素晴らしいものにします!
- 実はその演目というのが…。
- きっと皆さんもご存知の有名な作品です。私もいつか挑戦したいと思っていた作品なので、こういう形で参加できることに驚きつつ、精一杯挑むつもりです。
舞台で掴んだ手ごたえを、このドラマでも掴みたいです
- ミュージカルの舞台に主演し、演技に対する取り組みで変化したところはありますか?
- 私は舞台が好きなんだ、と改めて感じました。ミュージカルって歌に合わせて感情を表現するんです。喜びを表すため、一気に高音になることもあって、気持ちが役に乗っていると違和感なく高い音が出せます。そのときの気持ちの良さと言ったら。そうやって役を掴んでいける瞬間が本当に楽しかったです。『アメリ』でミュージカルの奥深さに触れられ、女優として少しは殻を破れたんじゃないか、と思っています。
- 今回は舞台での経験が大いに役立ちそうですね。
- 正直に言うと、映像作品で演技をするのは、まだ苦手意識があります。性格的に必要以上に突き詰めてしまいがちですが、今回は何とか肩の力を抜いて。でも、主演させていただくのだから、やっぱり責任感も必要ですよね。と、結局いろいろ考えちゃってますけど(笑)。舞台に主演して、私なりに手ごたえを感じられたように、『いつかこの雨がやむ日まで』で映像作品でも、“演技ってこういうことなのかも”というものを見つけたいです。
- ところでひかりほどでないにしても、渡辺さんは最近、何か不幸な出来事はありましたか?
- ありました! この作品のロケで、顔にかなり大きな虫が直撃したんです。私、めちゃくちゃ虫が苦手なので、思わず叫びました。びっくりしすぎてその瞬間のことはちょっと記憶が飛んでいるくらいです(笑)。