SPECIAL
INTERVIEW
本作は15年前の麻美(三倉茉奈さん)殺害事件の真相も大きな見どころ。真犯人を追う國彦も話が進むにつれ、狂気を増しています。“悲しき追跡者”を演じる桐山さん。憂いを秘めたその表情は、物語に一層の哀愁を漂わせています。
- ずばり、麻美の事件の犯人は誰でしょう(笑)。
- 視聴者の皆さんも15年前の事件の犯人を推理しながら、ご覧になっていると思います。この作品は登場人物が多いですよね。誰もが何かしら闇を抱えていて、狂気が垣間見られます。誰が犯人でもおかしくない状況が最後まで続くと思うでの、ハラハラドキドキしながらご覧ください。
- 犯人を捕まえるべく、國彦を駆り立てているのは何だと思いますか?
- 20歳で捕まってから15年もの間、刑務所にいて、青年時代の良いときをすべて失っています。その時間が國彦の闇の部分を増幅させたのでしょうね。國彦ってすごく純粋だと思うので、「出所したあかつきには真犯人を!」と思いつめているはずです。捕まえてやる、復讐してやるという思いはいまも変わらない麻美への一途な愛ゆえ。そこが國彦の狂気でもあるし、もしかしたら自分の手で犯人の命を…、というところまで思いつめているかもしれないですね。
- あまりにも大きな闇を抱えた人物を演じる上で、ご苦労は?
- とにかくセリフが少なくて。「…」ばかり(笑)。ドラマのポイント、ポイントで登場して、口数が少ない中で國彦が何を思っているのか伝えなくてはいけないので、そこは自分なりに繊細に演じています。さらにセリフがAの意味にもBの意味にも取れる、というものが多いので、その都度、監督さんやプロデューサーさんとセリフの本意を確認しています。
照明がビームのように暑かった(笑)。でも映像が美しくて救われました
- 國彦は黒ずくめの衣装です。今年は暑い日も多いので大変では?
- 先ほど夕方の場面を撮って、照明さんが夕暮れの日差しを作っていたんです。これがものすごく暑かったです。もう“ビーム”ですよ(笑)。本番ではさらにロングの黒いパーカーを羽織りましたから。VTRを確認したら、映像がとても美しかったので救われました。
- 國彦はひかりを不幸に追いやった張本人とも言えます。ひかりの置かれた状況をどう思いますか?
- (ひかり役の)渡辺さんとは今回が初共演ですが、最初にふたりの場面を撮ったとき、とても申し訳ない気持ちになりました。そのとき、スッと國彦になれていたかもしれません。渡辺さんがそこにいるだけで、兄と妹の関係性が出来ていたと思います。國彦は刑務所で闇を抱えていた一方、ひかりは社会の中で“犯罪者の妹”と蔑まれ、闇を抱えて生きてきました。渡辺さんのお芝居からそんな闇を感じ取れたので、お芝居がしやすかったのだと思います。
今回は残念なことに、渡辺さんをはじめ、共演者の皆さんと一緒の場面が少ないんです。隙間から様子をうかがっている、みたいなアングルばかりなので(笑)。だからこそ、誰かと一緒でセリフのやりとりがあるときは相手が発するものにビビッドに反応して、その場で生まれる化学反応みたいなもの大切にしています。
- 桐山さんは本作のどんなところに魅力を感じていますか?
- ひかりの生き様です。母親の面倒を見ながら大好きなミュージカルを続けるため、夜のアルバイトをしている。この設定だけで、心を掴まれました。好きなことを続けるのって、楽しいことだけじゃありません。演劇の世界なんて特に、駆け出しだったりキャリアがなかったりしたら、お金のことで苦労も多いです。それでも夢を諦めないひかりにグッと来ました。
- 桐山さんもデビューするまで、いろいろな経験を重ねたそうですね。
- アルバイトをいくつも掛け持ちしていました。当時は余裕なんてまったくなかった。洋服や雑貨が390円で買える店があったんですけど、着られそうな服がないか真剣に探しましたね。ああいう経験もいまでは良い思い出です。
家族に申し訳ない。そう思いながら、國彦の復讐心はまだまだ消えません
- “犯罪者の妹”という、とてつもないハンディキャップを抱えながら、それでもミュージカルスターとしての成功を夢見て努力するひかりの気持ちも理解できる、と?
- そうですね。國彦目線で言うなら、15年前のひかりの幼かった頃の場面もあって、当時のひかりは夢があって、キラキラ輝いていたんです。國彦にとってのひかりは当時のまま。だから出所して再会した妹がかつての明るさを失っていたことに、「俺が罪を認めなければ」との後悔の念を抱いたはずです。
- 千尋(星野真里さん)から好意を向けられながら応えることもなく、國彦はまだまだ暗闇から抜け出せないようですが。
- 15年ぶりの社会は大きく変わっていて、國彦は過去に取り残されたような存在であり、とにかく復讐にとらわれています。ありがたいのは、台本の中で國彦の心情がしっかり描かれているんです。台本の、母さんの國彦への愛があふれるセリフを読むたび、胸に突き刺さり、ひかりへの申し訳なさと同様、ただただ詫びたくなります。一方で、それでもなお國彦の復讐心は消えません。その気持ちが國彦をどんなところに連れて行くのか。演じていても心休まるときがないほどですので、國彦の今後にも注目していただきたいです。