百七十四、
2009/12/11
大横綱
大相撲九州場所で優勝した横綱白鵬が、来年の抱負として「平成の大横綱、貴乃花関に並びたい」と語りました。この新聞記事を読んだ後輩アナウンサーから、大横綱の読みは「ダイヨコヅナ」か「オオヨコヅナ」か、と質問されました。アナウンサーはいろんな場面で「オオ」と「ダイ」の読み分けに悩まされます。
接頭語「大」については、空言舌語・第七話「大地震」でも述べました。一応のルールとして、漢語(音読み)の言葉の前なら「ダイ」。【例=大自然・大多数】 和語(訓読み)の言葉の前なら「オオ」。【例=大銀杏・大昔・大芝居】 ただ、これには例外が多いのです。第七話でも書いたように「大(オオ)地震」「大(オオ)舞台」がその代表でしょう。
質問された「横綱」の場合は、一応のルールを適用すると「オオヨコヅナ」ですが、正解は「ダイヨコヅナ」です。辞書によると「ダイ」には【程度や規模が普通以上】の他に【優れている・最高位】という意味もありますから、「特に優れた横綱」という意味で「ダイヨコヅナ」なのです。
質問した後輩は、「横綱」は訓読みなので「オオ」の方がふさわしいと考えていたようですが、「ダイ+和語」となる数少ない例外のひとつです。
それでは、「オオ」には【大きさや程度が普通以上】の他にどんな意味があるかというと、【序列の上位】があります。「大(オオ)旦那・大(オオ)番頭」などがその例です。古典落語で聞く言葉です。
和語である「オオ」のほうが昔からよく使われたためか、「オオ+漢語」は結構目につきます。「大火事・大御所・大道具・大所帯・大騒動」などです。また、明治時代には「大得意・大評判・大迷惑」なども「オオ」と言う人が多かったそうです。私も明治生まれの祖母が「オオアンシン(大安心)」と言うのを聞いた記憶があります。
どうやら、今は「ダイ△△」と言っている言葉のなかには、昔は「オオ」だったものがあるのかもしれません。
もしかすると「ダイ横綱」は新しい言い方で、「オオ横綱」の時代もあったのかも、と思えてきました。