百九十一、
2010/8/27
横書き原稿
日本語文書の多くが横書きになりました。パソコンで文書を作成するようになったからです。官公庁や企業の文書はほとんどが横書きです。縦書き文書は挨拶状、招待状のようなものだけです。個人の出す手書きの手紙やハガキも、横書きのものが多くなりました。
数字や英字も多く含まれる事務的な文書や資料などは、横書きのほうが読みやすいこともありますが、小説など文芸モノはやはり縦書きでないと、どうも落着きません。
アナウンサーが読む原稿も同じです。ニュースはパソコン入力になった今も、独自にソフト開発した縦書き原稿です。ドラマ、バラエティ番組、情報番組の台本も縦書きが圧倒的多数です。
それには理由があります。日本語の音声表現は「頭高尾低」といって、文頭から文末に向って自然と音程が下がっていきます。たとえば「私の名前は△△です」と言うと、文末の「です」は文頭より低くなるはずです。
タテ書きの原稿なら、文字を追うと眼と首は上から下へ動きますから、音程が下がっていくのと生理的に矛盾がありません。これが横書きだと、眼も首も左から右への水平の動きになるためか、[高]→[低]への音程変化が難しくなってきます。
日本語の読みは単語のアクセント、文章全体のイントネーションによって表情が出ます。横書きだとベテランのアナウンサーでも「頭高尾低」の幅が狭くなり、表情のない読みになってしまいます。
それでも放送の現場では、横書き原稿が増えてきました。同僚アナウンサーのナレーションを聞くと、「これは横書きの原稿だ」と分かることがあります。高低の変化が乏しいからです。それほど横書き文は「音」に出るものです。
若者を中心にアクセントに起伏のない「平板言葉」が蔓延しているのも、横書き文書の急増と無関係ではないと思えてなりません。どうにも気になります。