お盆で仏壇に手を合わせた方も多かったと思いますが、三重県にちょっと変わったお坊さんがいました。実はそのお坊さん、東海テレビ報道部の『記者』なのです。

 世にも珍しい“二刀流”記者のお盆の里帰り。彼に密着したら、知られざるお寺の世界が色々と見えてきました…。

■マイクも持てば経文も持つ

 東海テレビ報道部・福山俊。入社2年目の駆け出し記者として、日夜ニュース取材等に明けくれますが…、お寺が最も忙しいお盆の時期は実家に帰って手伝います。

 名古屋から近鉄等を乗り継ぎ1時間半、三重県津市の山あいにある波瀬地区が彼のふるさと。

福山記者:
「地元帰ってくると落ち着きますね。いつもこの小学校通って帰るんですけど、もう廃校になっちゃってて」

 実家は室町時代から続く真宗高田派の清光山浄明寺。檀家数は約200軒と、この辺りでは大きなお寺です。

福山記者:「ただいまー」

 実家で福山記者を迎えたのは父親で住職の茂さんですが…髪を剃っていません。実はお坊さんの戒律は宗派によって様々。多くの宗派で髪を剃る決まりがありますが、日本で最も信者数が多い浄土真宗は髪型は自由なのです。

 法衣に着替える福山記者。お盆の時期は棚経と言われる檀家を回って念仏を唱える行事があります。浄明寺では1週間で約200軒の檀家を手分けして回ります。12歳でお坊さんの資格をとった福山記者は「釈蓮俊」としてこの日15軒…。

福山記者:
「おはようございます。浄明寺です」

 檀家でお経を唱える福山記者…。終えると、世間話。

福山記者:
「昨日よりも暑い気がしますね。お体大丈夫ですか?」

檀家の男性:
「大丈夫、大丈夫。それ…」

 檀家の男性が指さしたのは“お布施”。

福山記者:「ご供養になります」

 一軒あたりおよそ10分。終えるとすぐに次の家へ向かいます。

福山記者:
「こんにちは、浄明寺です…誰もおらんな」

 そのまま失礼しますと言って家に入っていく福山記者。しばらくすると中から念仏が…。

福山記者:
「誰もいない家も割とあって、勝手にお経唱えて、勝手にお布施もらってくるんですけどね」

■増える墓じまいと気になるお布施

 高齢化と過疎化が進む波瀬、その影響はお寺にも。お寺の裏にある墓地には空いた場所が…。

 少子化や跡継ぎがいないといった理由でお墓をなくす「墓じまい」。浄明寺の檀家でも毎年1、2軒あります。

 浄明寺の収支を管理している母の理絵さん。棚経でいただいたお布施を集計します。

福山記者:
「いくらくらいが多いん?」

母・理絵さん:
「色々だよ。1000円の家もあれば1万円の家もあるし」

 お寺さんにいくら渡したらいいのか…。なかなか聞けないお布施の相場。浄明寺では檀家にお任せですが、棚経は3000~5000円程が多いそう。ちなみにお葬式の場合、格の高い導師は15万円~30万円、後ろにつくお坊さんは5万円~10万円のお布施が多いそうです。

 浄明寺の場合、お布施から寺の維持費等を引いた手取りは年間100万円余。福山記者の父親も中学校の教員と住職を兼業。お寺だけで生活できるところはほとんどないそうです。

■お坊さん記者、人生初の法話は…

住職の父親と福山記者:
「こんばんは。失礼します」

 夜、福山記者は父親と一緒に初盆の法要へ。読経を終えると、人生初めての“法話”を任されました。

福山記者:
「お参りいただいてありがとうございます。皆さんのお念仏の声がすごい大きくて、僕も唱えていてうれしく背中で感じていました」

 そう話し始めた福山記者。名古屋に住んでいるからこそ実感する地元の良さを伝えました。

福山記者:
「名古屋に住んでて、波瀬に月に一回くらい帰っていつも思うんですけど、歩いててすれ違った人、もし知らん人でもこんにちはって言って、『きょうは暑いな』って話もできたらして。そういうのが波瀬の良いところやなって思ってるんです。やっぱり地域の人とか私たち寺の人や親戚の人とかとの会話っていうのはすごく大切なことで、いま大切な人を亡くして悲しいときやけど、そういうときやからこそ、会話を大事にして欲しいなって思うんです」

法話を聞いた檀家の女性:
「(地域の子)みんなを自分たちの子供のように思ってるし、子供は波瀬の人に見守られて大きくなったって思ってるみたい。波瀬にいて良かったです」

 この日の法要を終えた福山記者は…。

福山記者:
「一応、やり遂げましたね(笑)ちょっとでも檀家さんに良い話聞けたなって思ってもらえたらよかったですね」