藤井聡太七段の活躍で将棋ブームがまだまだ続いていますが、お膝元の愛知からまた1人プロの棋士が誕生しました。一宮市の21歳の女子大生が今月から女流棋士に。一度はあきらめかけた夢をかなえました。

 11月4日、愛知県一宮市で開かれた将棋大会。空前の将棋ブームとあって、多くの子供たちの姿がありました。

「えーどうしよう、どの辺に書けばいい?この辺?この辺?」

 慣れないサインにあたふたしているのは、脇田菜々子さん、21歳。11月デビューしたばかりの新人女流棋士です。子供のころからの夢を叶えました。

脇田さん:
「やっとここから始まったんだなという感じがします」

 名古屋の名城大学に通う脇田さん。現在大学4年生で、心理学のゼミに所属し、卒業論文に大忙しです。テーマは「SNSでいいね!が欲しい心理」だそうです。

 人の心を読み解く心理学。ちなみに将棋で役立ったことは…?

脇田さん:
「そんなに、感じたことはないです(笑)」

 脇田さんが将棋と出会ったのは6歳のとき。中学1年で女流棋士の養成などを行う「東海研修会」に入会し、小学生時代の藤井聡太七段とも盤を挟んだことがあります。高校時代には、全国大会で3回優勝したことも。

脇田さん:
「他の女の子より自分の方が強い自覚もあったので、高校生の間に(女流棋士に)なれたりするんじゃないかなと思っていました」

 現在、女流棋士は全国でおよそ70人。女流棋士になるには、実力ごとに13クラスに分けられた研修会で、上位のB2以上になることなどが条件です。

 脇田さんも当時の規定であと1勝すれば、高校3年にして女流棋士となるはずでしたが…。

脇田さん:
「当時、資格を得られるかどうかの将棋で負けてしまって、そこに届かなかったのは結構悔しかったです。女流棋士になるのを迷って一度諦めました」

 わずか1勝届かず、初めての挫折。研修会を辞め、女流棋士への道を断ちました。

 大学に進んだ脇田さん、それでも将棋から離れられず将棋部に。すると大学生の大会で2連覇!さらにプロの女流棋士にも勝利し、失いかけた自信を取り戻します。

 そして今年9月。再び門をたたいた「東海研修会」。

 相手はプロ棋士を目指す男子中学生。女流棋士になるための最後の対局で見事勝利し、一度はあきらめた夢をかなえました。

脇田さん:
「長い道のりになってしまったんですけど、無事女流棋士になれてよかったという気持ちがあります」

Q.長かった?
脇田さん:「長かったです」

 念願を叶えて女流棋士になった脇田さん、11月4日、プロとしての初仕事で、地元・一宮市での将棋イベントに出席しました。

脇田さん:
「私、4日前に女流棋士になりまして、女流棋士になってから初めてのお仕事を、こちらで務めさせていただくことになりました」

子供を指導する脇田さん:
「逃げていける道を作った方がよかったかなぁ」

 こうした普及活動も女流棋士の大事な仕事。子供たちへの指導にも熱が入ります。初仕事を終えた脇田さん、今後の目標は?

脇田さん:
「誰かの目標にされる女流棋士になりたいです、誰か私の棋譜をみて、女流棋士になりたいなって 思ってくれる人がいるような棋士になりたいです」