■国内史上最高の『優勝賞金100万ドル』

 去年12月、日本で開かれたeスポーツの世界大会「Shadowverse World Grand Prix 2018」。日本国内で開かれた大会としては、史上最高額の優勝賞金100万ドル(約1億1千万円)をかけ、日本のほか、アメリカ、フランス、中国、台湾から24人がタイトルを争った。

『Shadowverse(シャドウバース)』は東京のゲーム制作会社Cygamesが開発し、キャラクターカードを組み合わせてオンラインで対戦するゲームだ。

■3位に名古屋大学大学院生…『シャドバ』の魅力は頭脳戦

 この大会で3位に輝き、約500万円を手にした選手が名古屋にいる。

 松田亮平さん、23歳。現在、名古屋大学の大学院で電子工学を研究する学生だ。ゲームに熱中する昔の「オタク」ではなく、“イマドキ”の空気をまとっている。

 三重県松阪市出身で大学入学を機に名古屋へ。ゲームは昔から好きだったという松田さん。子供のころゲームボーイアドバンスSPに熱中し、ふとんの中に隠れて遊んだ。

 ゲームでの名前は「Riowh(リオウ)」、自分の名前の「亮(りょう)」に近い響きとスペルを探してこれに決めた。

 今回の世界大会では上位に入る自信もあった。出場が決まったのは11月中旬、残り1ヶ月は1日に約15時間練習に励み、その間、研究室の教授にお願いして専念させてもらった。eスポーツはオリンピック競技のように認知されていないが、快く送り出してくれた。

 緊張しなかったという大会当日は、友人も駆けつけて最前列で応援してくれたが「スポットライトがまぶしくてわからなかった(笑)」と、楽しむことに集中していたようだ。

 世界大会で3位に入った実力者。しかし『Shadowverase』を始めたのは2017年の夏ごろ、まだ2年も経っていない。最初は暇つぶしで始めたに過ぎなかったが、小規模な大会に出場したのをきっかけに『競技』と認識してプレーするようになった。

 その後、『シャドバ』にハマっていった松田さん、魅力は「頭脳戦」だという。

松田さん:
「相手の手を読んで、勝率の高い選択肢をどれだけ積み上げられるかが重要な、地頭の良さが問われるところがおもしろいですね。トッププレーヤーには東大生が多いです」

■友人は“就活中”…今後の進路「まだ決めていない」

 大学院では電子工学を専攻していて、半導体の制御について研究している。『シャドバ』を大学のカフェやなじみの中華料理店でも練習し、友人につきあってもらうこともある。大学入学時からの友人が多く、自宅に集まると盛り上がるのは「ボードゲーム」だ。

 そんな友人たちは就職活動を始めているが、松田さんは将来をまだ「決めていない」と話す。

■世界大会3位の選手が期待するeスポーツの未来

 決めていない進路の中には、もちろん「eスポーツ選手」の選択肢も含まれている。eスポーツ自体はここ数年で知名度が飛躍的にあがったものの、まだまだ「競技」としての理解度が低いと感じている松田さん...。その未来についてはこう話す。

松田さん:
「賞金が高額だったり、魅力的な大会が増えれば、プロ野球やサッカー選手のように憧れる子どもたちも出てくると思う。僕自身はもうeスポーツに染まっているので、『新しいスポーツ』だと声を大にして広めていきたい」

 愛知県では今年8月に常滑市にオープンする国際展示場のこけらおとしで、eスポーツの大会を開くことが決まっている。オリンピックやアジア大会の種目にしようという動きもあり、今後成長が続けば今は想像できないようなスター選手が続々と登場するかもしれない。

【eスポーツ】
 複数で対戦するコンピューターゲームで「エレクトロニック・スポーツ」の略。海外では高額賞金の大会も多いが、国内では、景品表示法や風営法などに抵触する可能性もあり、少ないとされている。

 ゲームの種類も多いため、複数のタイトルで成績を残すのは難しく、松田さんも「自分の得意なゲームに特化して戦わない」と勝てないと話す。