ベレー帽が似合う女性…。愛知県で今も現役で活躍する画家で、実は今年100歳です。
100歳になってもまだまだ元気、絵を描くことへの情熱もこだわりも変わりません。
岩に打ち寄せる荒波…。山肌がリアルに描かれた油絵の赤富士は力強いタッチです。描いたのは画家・森田禎子さん。大正8年生まれで、今年2月、100歳になりました。
森田さん:
「これ(絵)ね、置くところがないのでこうやってあるのよ。本当に狭くって狭くって」
自宅の物置きがアトリエ、人が1人、ようやく入れる広さです。
森田さん:
「(描いてるのは)庭に作ったひまわりですよ。きれいだから描いてあげた」
Q.絵を描く時ってどんなことに一番気を付けてますか?
森田さん:
「気を付けてって…そんなこと考えたことないよ。ただ一生懸命描いてる」
筆の動きも受け答えも年齢を感じさせません。
幼い頃から絵を描くことが大好きだった森田さん、子育てをしながら洋服店で働き、趣味で絵を描いていましたが、画家になったのは45歳の時。
森田さん:
「好きで描いとった絵がね昔美術館で飾った時に、そのときの瑞穂区の区長さんがね、『この絵は生きてるから欲しい』って言って。そういうことがあって嬉しくって一生懸命絵を描くようになっちゃった」
その後は日本だけでなく、エジプトやニュージーランドなど海外にもスケッチブック片手に飛び出しました。描いた作品は700点ほど、そこにはあるこだわりがありました。
森田さん:
「(その場に)行かなきゃ描かん。見なきゃ私は写真では絶対描かん。心が違うじゃない、情熱がないじゃない。写真見ると上手に描こう描こうと思って、テクニックで自分なりに描くでしょ。絵は上手でも感動がないの。海を描いたら手がズボっと入るように描く、山があったら山の向こうに空気があるように」
森田さん:
「みなさん、おはようございます。楽しく、絵は楽しく描いて下さいね」
森田さんはおよそ40年前から、絵画教室を開いています。
生徒は60代から92歳までおよそ20人。この日は室内でスケッチの予定でしたが…。
森田さん:
「花とか用意してくださったんですけど申し訳ないけど、荻須美術館の公園などをね散策して、スケッチしてください」
現場主義の森田さん、予定を変更して公園に出かけます。
Q.歩くのは好きですか?
森田さん:
「好きじゃない。こんなに暑くなると思わなんだね。しんどい…坂道だし、疲れるわ…」
足腰もまだまだ丈夫、公園でバラを見つけ、生徒のスケッチを見守ります。
生徒(71):
「後ろのバックを入れようかと思ったんだけど、花だけにしようと」
森田さん:
「あんなの入れん方がええ」
生徒(69):
「あーそうやってやるんだ…。(線が)細かったり太かったり」
生徒(69):
「楽しくして描かないと、絵に表れるって言われてる。(森田さんは)教室も1度も休んだことないんですよね。生徒の方が風邪引いたのなんのって休むことあるんだけど」
生徒(71):
「あの元気はどこから来るかなって思っちゃうよね」
こうして描かれた生徒たちの作品。6月開かれた展覧会で、森田さんの作品とともに展示されました。
森田さん:
「かぼちゃかね?おいしそうに描けてるけど、ちょっと色がきれいやからまんだ青いわね。でもがんばっていいじゃん」
生徒:
「ありがとうございます」
森田さん:
「私この絵あんまり好きじゃない。これってね、写真見て描いたでしょ。私いつも言うでしょ、写真見て描かないでってね。下手でもいいから」
生徒1人1人にアドバイス。褒めたり、ダメ出ししたり、包み隠さず伝えるのが、“森田流”です。
そして、自らも生涯現役、100歳になってもまだ筆を置くつもりはありません。
森田さん:
「待ってるのよ、みんなが。『ありがとう』って言われると嬉しいよね。仏様じゃないで拝まんでええって言っとるけど(笑)目標はもうないね、何にもないね。楽しく、とにかく楽しければ、毎日が幸せなら」