【番組概要】

 5年前に廃校になった知多市の県立高校。そのグラウンドに、白球を追う若者たちの姿…。彼らは、タバコ・喧嘩・いじめなど様々な理由で前の学校をドロップアウトした“元高校球児”だ。チームの名前は「ルーキーズ」。2年前、NPOが、高校中退者を集めて野球チームを作った。“野球と勉強の再チャレンジ”を柱に、グラウンドで白球を追いながら、高卒の資格をめざして通信制高校に通っている。
 チームのセカンド・小山雄嗣(17)。彼も挫折からの再チャレンジをめざす一人。一度は愛知の野球強豪校に入ったものの、わずか1年で退部して、ルーキーズへとやってきた。 新しい環境でチームメイトとの関係などに悩み、このまま野球を続けるかどうか揺れ続けている。
 元球児の再チャレンジを掲げたNPOの理事長・山田豪(44)。生徒募集をしているが、思うように集まらず、赤字経営が続いている。理事長の私生活も苦しく、家賃滞納からアパートを追われ、ネットカフェを転々とする。ホームレスとなった理事長は、それでも、日夜金策に走り回る。そして、いつの日か、人生の“大逆転”を狙っている。
 高校野球は、毎年全国で約6万人を超える入部者がある運動部の中でも花形だ。しかし、光が当たる一方、影もある。約9千人がトラブルなどから途中で退部し、とくに特待生制度などで野球強豪校に入った“野球エリート”たちは、退部と同時に学校も中退してしまい、社会からドロップアウトしていくケースが多いのである。つまり、退部した途端、プロ野球を頂点とするピラミッドから滑り落ちて、目標を失ってしまうのである。これは、学業や就職など一度レールから外れると再挑戦が困難な日本社会の縮図でもある。
 野球でアウトになっても、人生のアウトなんかではない。何度、失敗したっていいじゃないか。試合は、終わってみなきゃ分からない…。いつも9回裏ツーアウトのつもりで、立ち向かえ…。退学球児たちの場所を守るため奔走する理事長の生き様を追いながら、この社会の閉塞感なるものと、その突破の仕方について、大らかに考えてみたい…。

プロデューサーより

 たくさんのメールをありがとうございます。
多様に番組を受け取ってもらえたことを嬉しく思います。その中に、監督が「ルーキーズ」の選手を叩くシーンについて、不愉快だったという感想が複数ありました。不快な思いをされた皆さんには、お詫びします。このシーンについては、面白半分に、またセンセーショナルを狙って出したわけではありません。この番組は「ルーキーズ」というチームの成り立ちと現状を伝えることが、骨子です。ですから、チームの内外で行われていることをドキュメントし、その内容を包み隠さず、お知らせすべきだという信念から、放送することにしました。放送に至るまでに、悩みました。しかし、番組を作る側が配慮を繰り返し、また観る側が自粛の圧力をかけるような関係が、よりよい社会を作る礎になるとは考えられません。この番組については、言うまでもなく体罰問題を主題にしたものではありません。まず、高校の野球部からドロップアウトした青少年たちのやり場のない実態があります。そして、「ルーキーズ」という場を通じて、もう一度生き生きと白球を追う青年たちの姿を目撃しました。そして、その場を維持しようとしている人々の思いも知りました。批判するのは簡単ですが、これまでにない新しい場を設けるのは、一筋縄ではありません。「ルーキーズ」と理事長の現状は、私たちの社会の一断面だと思います。そして、この番組を観た皆さんの考え方も、この社会のありようを映し出していると思います。人のやらないことを切り開く…。長所も、短所もあるでしょう。怪しげなことも、純粋なことも、理解不能なこともあるかもしれません。人間は多面体です。生身の人間のすべてを一つの番組で伝え切れるということも、難しいことだと思います。番組を作る時、私たちは皆さんの存在をイメージしますが、皆さんにあわせて番組を作ることはしません。その時々の気持ちにフィットしたり、しなかったり、受け取る側もまた多様だと思うからです。
最後に、私たちは誰かを傷つけるために、番組を作っているわけではありません。今後も、多様な生き方を認め合う優しい社会を目指して、皆さんと一緒に歩みたいと思っています。激しい気持ち、厳しい批判、そして励ましの言葉、たくさん頂きました。今後の番組作りに生かしていきたいと思います。