インタビュー

12/12 更新 川久保拓司さん 篠田俊夫役

川久保拓司さん(篠田俊夫役)

――――智子への熱い想いをどうすることも出来ず、時に暴走することもある篠田。
 「篠田の言動って、人から見たら外れているかもしれませんが、意外と納得しながら演じています。篠田って純粋で真っ直ぐなだけ、それに不器用なだけなんですよね。僕は彼のことを異常だとかおかしい奴とは思ってないです。もしかしたら妄想癖は他の人より強いかもしれないですけど…。でも“それだけ”なんですよ。だから生理的に拒否する感じは僕の中にないです」
――確かに、智子と出会うまでの篠田はごく普通の生活を送ってきたわけで…。
 「だって花屋を経営してますから、人と接することはできる男なんですよ。ただ、仕事でなくプライベートな面だとコミュニケーション能力は低いのかもしれないですね。燿子にそそのかされ、智子さんを襲ってしまいましたが、好きな人にどうやって想いを伝えればいいのか学んでこなかったせいだと思いました。あまりに智子さんに夢中になり、のめり込んでいくところを演じていたときも、『もっと幅広くいろんな人と接することが大切なのに』と思いましたね」
――篠田を熱演してきた川久保さんから見て、篠田に欠落しているものは何だと思っているのだろう。
 「単純に“愛情”でしょうね。それを手に入れる術を知らないから、間違いを犯しそうになったわけで。感情のバランスがすごく悪いですよね。もし、人を求める気持ちと同じくらい人を思い遣る気持ちが持てたら篠田は数々の問題を起こさないで済んだはずですよ」

――篠田は自分でも生きづらさを感じているのかも?
 「智子さんを襲い、未遂に終わったあと生き方がガラッと変わりましたよね。ひたすら智子さんのことを思い、自分がどうなろうと構わない、という風に。気持ちの折り合いの付け方が下手だなーと感じています。人に対して無償の気持ちというか、どこまでも尽くす姿は見ようによっては美しいかもしれませんが、自分のことを二の次にしているところや、自分の感情を押し殺し過ぎなところは、やっぱり『もう少し自分の気持ちに正直になってもいいんじゃない?』と思わずにいられないです」

――そんな篠田を川久保さんは、ドラマの中でどんな存在になればいいと思っているのか。
 「クランクイン前、篠田と燿子ほど自分の気持ちに正直な人間ってそうはいない気がしたんです。良くも悪くもですが(笑)。一方で自分の気持ちを抑圧して暮らしてきた浅倉家の人々がいるわけで、まずその対比がおもしろく映ればいいと思いました。やがて家族の絆が壊れる中で智子さんや達彦さんは篠田と燿子に“裸”の気持ちをぶつけられ、日常生活に支障をきたすまでになりますが、自分だけの幸せを願っては人を幸せには出来ないし、みんなの幸せを願うことが自分の幸せに繋がりはしませんよね。幸せとは何か? 家族とは何か? という作品が伝えたいメッセージをさまざまな角度から見せられるのが篠田だと思っています」

――ここまでの篠田の日々を見ると、この人物に“幸せな時間”があったのか、疑問にさえ思うが…。
 「幸せな時間はありましたよ。智子さんと出会い、生まれて初めてと思えるほど幸福な気持ちを味わえましたから。そこは本当にノーマルな感じで、篠田にはそういう面も持ち合わせているんです。だから物語上、かきまわす役割ですが、彼のまっとうな部分やまっとうに生きてきたところをしっかりにじませることが、のちに心に芽生えた狂気を際立たせるためにも大切だと感じました」
――川久保さんは台本をもらう度、何度も何度も読み返したとか。
 「篠田として発する言葉や動きを成立させなければいけません。そうしないとリアリティが出せませんから。台本を読む度、いろんなことを思い描けたし、最初に感じた気持ちともしかして真逆の感情がそこにあるんじゃないか、と思うこともよくありました。だから撮影直前まで台本は手放せなかったです」

――川久保さんは6年前、この枠で放送された「紅の紋章」に出演。それ以来の昼ドラ出演となるが、今回は反響の大きさに驚きつつ、確かな手ごたえを感じているようだ。
 「毎回、出演する作品のためなら命をかけるという気持ちで演じてきましたが、それは今回も変わりません。ありがたいことに今、僕のブログにたくさんの方が遊びに来てくださっていて、僕自身のことをもっと知ってもらいたいし、最後まで『幸せの時間』の魅力を皆さんに伝えていくつもりです。
 『紅の紋章』のときは20代半ばで自分の未熟さを嫌というほど痛感させられたんです。今後もこの世界で活動するためにはもっと経験を積まなくてはいけないと思い、舞台にも積極的に挑戦したし、雑誌のモデルも始め、自分をどう見せればいいのか勉強しました。僕と同じ世代の役者の多くが“イケメン俳優ブーム”というのを経験し、その中に加えていただけたからこそ演じられた役もありましたが、ありがたいと思う一方で、『もしかしたら同じような役しかオファーが来なくなるかも』という焦りもあったんです。30代になり、篠田のような役が演じられたことは本当にありがたくて。これまで学んできたことが篠田という役に活かせられているなら努力してきた甲斐もあったかな、と思っています。
 ただ反面、努力しなければたどり着けない場所があるということも再認識しました。努力するもしないも、全て返ってくるのが役者という仕事なんですよね。それがおもしろくもあり、怖くもありますが、もっともっと貪欲に演じることを追求していきたいですね。」

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