インタビュー

12/26 更新 丘みつ子さん(岡島佐代子役)

丘みつ子さん(岡島佐代子役)

――智子に「家庭とは?」「女性にとっての幸せとは?」という問題を「私たち夫婦の生活はすべて偽りだった」という驚きの発言で突きつけた母親の佐代子。
 「佐代子という女性は非常に“直線的”でしょ。私はこういう人物ってこれはこれで成立すると思いますね。と言うのも私の身近にもいるんですよ、佐代子のようにストレートなもの言いをする女性が。ただ、そういう発言をするだけで、佐代子は決して利己主義な人ではないんです。
 佐代子は若い時分、社会に出て働き、自分の個性を発揮するつもりだったのが思わぬ妊娠でそれが叶わず、さらに嫁いだのが良い家柄の家で。この食い違いがその後の人生を決めてしまったけれど、娘もまた自分とは違う形で結婚生活が破たんしたわけじゃないですか。人間というものは思うようにいかないんですね。多かれ少なかれ、いろんなものを抱え生きているんですよ。私だってそうですから。そういうものを繕いながら、中和と取りながら生きていくのが“人生”というものじゃないかしら」
――佐代子は夫が生きていた頃は胸に渦巻く不平不満を隠していたが、未亡人になったとたん、一気に爆発させてしまった。
 「今回の台本、よく出来ているな、とつくづく思うのよね。“人間”が描かれているでしょ。佐代子にしても、『よもやこんなフリがあって、こんな風になってしまうの』と思ったわね。昭和という時代に良家に嫁ぎ、多分当時はまだまだ男尊女卑の考えが主流で、嫁ぎ先も夫もそんな考えだったでしょう。いつも胸の中には重いものを抱えながら毎日を過ごし、子育てをしていたんだと思うの。言いたいことがあっても夫にも娘にも悟られぬよう、どうにか自分の胸で収めていたはずですよ。それで結局、片割れが亡くなれば何か始めたくてもそうそう出来ることも限られた年になっている。それじゃあ、自分から見ればまだまだ若い娘に何かを託したくても、その娘も子育ての最中で、さらに問題が山積みですから。夫の死という出来事で一つタガが外れ、佐代子の内面が崩壊した感じはよく分かったので、演じていても彼女の母親にあるまじき発言が私には許せたのね」

――とは言え、自分の母親が佐代子のような発言をしたら、やはり衝撃では?
 「だからそれが人間なのよ。取り繕って、普段はさも利口そうな顔をしているけれど、一人になったとき、心が裸になってしまったとき、内面にあるものを隠しきれなくなっちゃうんですよ。もし自分がそんな風になるのを恐れるなら、一人になったとき心の拠り所を持っておかないと。どんなときでも自分をきちんと制御して生きる術を身につけておかないと。でもそれって難しいと思うのよね」
――確かに、自分の感情をコントロールするのは難しいものだが…。
 「もちろん制御できる人もいますよ。そこは運とか不運とか、善と悪とかいろんなものが関係してくる話だから。人生はいろんなものが交差して紡がれていくものでしょ。不幸に見舞われた人がとことん堕ちていくことだってあるわけだし」

――では、長い間愛なき暮らしを続けた佐代子は“不幸”ということに?
 「そんなことはないですよ。佐代子はすごく…すごくとは言えないかもしれないけれど、分類としては結構幸せな女性だと思います。夫にも愛されたし、うっ積した不満を吐露するセリフもあったけれど、子供を育て上げ、孫にまで恵まれ。それだけでとても幸せなことですから。嫁ぎ先が名家だったことが佐代子にとって不幸だったのかもしれませんが、佐代子は打たれ強く、何事も乗り越えていく力、対処する力を持っていたと思うの。セリフに結婚より妊娠が先で、さんざんお姑さんに嫌味を言われた、なんていうのがありましたけど、『そうでございますか』なんて言いつつ、やり過ごしていたんじゃないかしら(笑)」

――そもそも丘さんは、佐代子と亡き夫の間には確かな愛が存在したと思っているとか。
 「自分では不幸だ、不幸だと言っているけれど、佐代子は結構恵まれた結婚生活を送ってきたと思うし、ご主人だって決して嫌な人じゃないですよ。だから何だかんだ言って二人の生活が続いたわけだし。名家の嫁としていろいろなしがらみがあり、ときにそんなものに“グルングルン巻き”にされてしまったこともあるでしょう。でもそれに耐え、自分を見失わずやってこられたわけですから。それは愛のある幸せな生活の上でなければ成立しないこと。“グルングルン巻き”にされた後、その時点で辛くて自己崩壊してしまう人もいると思いますよ」
――夫に先立たれ、一時は人格さえ変わったように見えた佐代子だが、その先に待つものとは?
 「これも私の周りの話だけれど、例えば熟年離婚したり、ご主人が先に亡くなったり、ある程度の年齢から一人身になった女性を見ると、月日が経つごとにエネルギッシュにパワフルになってどんどん若返るのよ。多分、女性が男性より現実を受けいれる力があるからなのかしら。佐代子も意外とそのうちピンク系の洋服を着たり、髪型を華やかにしたり、派手な口紅をつけたりするようになるかもしれないわね。個人的な願望としても、第二の人生を前向きに捉えていて欲しいし」

――ところで丘さんはこの作品に対して、ある思いを持っているそうだ。
 「メッセージ性がある作品でしょ。ご覧になる方々が『そうそう!』と共感したり、『そうじゃないでしょ!』と反感したり、『うちのほうがまだまし』と胸をなで下ろしたり、『うちのほうが問題があるかも』と見つめ返したり…。作品のどこかに自分を照らし合わせて考えさせられる作品って、作る意義があると思うの。ドラマって“投げかける”ものだから。今の時代、先が見えないからいかに自分を、家庭を、そして我が子を良い状況や環境に置くかに誰もが心を砕いていると思うのよね。それは仕方のないことだけど、そんな日々の中でも考える何かを投げかけるのがドラマの使命であり、私はそんな作品に世のお母さん方やおばあちゃん方の代表として参加していきたいのね。この作品ではそんな思いが多少なりとも果たせたかな、と思っています」

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