2018年4月7日(土) よる11時40分〜

Specialスペシャル

Interview加藤雅也さん

瑠美(新川優愛さん)や千夏(伊藤沙莉さん)が通う看護師専門学校の校長であり、実は遠野(さとうほなみさん)と深い因縁のあった番匠。過去の医療事故を通し、白いままでいられなかった番匠を演じた感想を加藤さんに伺いました。
最初に登場したところで、番匠がどんな人物かはっきり描かれていませんでした。
物語自体、冒頭は大きなうねりがあるわけでなく、ドラマの舞台としては珍しい、看護学校が舞台の“学園ドラマ”でしたよね。番匠も原作の小説だとラスト近くになって登場する人物なので、ほぼオリジナルのキャラクター。話が進むにつれ、どう描かれるのか僕も興味がありました。
番匠は発言もどこか意味深でしたが。
多くを語らないので悪に見えるか、それとも善に見えるか。視聴者の方の主観によって、変わるだろうなと思いました。僕もセリフの端々に「あれ、この人ひょっとして?」と感じさせるニュアンスを出すよう心がけたんです。番匠が医療に対してどんな考えを持っているのか、社会に対してどう思っているのか、生徒たちをどんな風に見ているのか。明確なセリフがなかったので、そこかしこにほのかな色を漂わせる感じで。
ポスターの番匠も印象的です。瑠美たち看護学生が白い羽根を持っているのに対し、一人だけ黒い羽根を持っています。
そこは意味ありげでしたね(笑)。番匠と遠野の過去が判明して、彼女の家族からすれば、番匠は悪徳医師だと思うんです。でも、番匠にしてみれば遠野の妹の手術は大変難しくて成功率も低いけれど、この手術をすることで医療の未来につながるはず、との思いがあったのでしょう。そう考える医者がいたとしてもおかしくないと思います。ただ、番匠はきっと遠野と出会い、衝撃を受けたんじゃないでしょうか。
それはどういう点でしょうか?
僕は医師として、難しい手術に挑んだ番匠のことを否定はできません。きっと手術をする際、成功率がかなり低いことも患者家族に説明していたと思います。でも人間って、「可能性は低いけれど、助かるかもしれません」と言われたら、“助かる”という言葉にすがってしまうと思うんです。手術が失敗したときのことを考え、誓約書なども家族に書いてもらっていたはずです。だから患者が亡くなったことを申し訳ないと思いつつ、番匠は医学の発展を考え、前を向いていたのでしょう。それなのに遠野が現れ、なおかつ憎むべき相手を探すため、自分の体さえ大切にしていなかった。患者が亡くなったこと以上に、患者家族がそのことで崩壊したという事実は、番匠も想像だにしなかっただろうし、ショックだったと思います。
番匠の遠野に対する感情を加藤さんはどう捉えていますか?
男女の愛もあるとも思います。でも、身も心も彼女に、という100パーセントではない。同情心というか、「この子を救わなくては」という気持ちもあるでしょうね。放っておけないし、何とか立ち直ってほしい。どこか父親のような感情もあると思いますよ。
では、医療人としての番匠の思いとは?
医療に対してはとても真摯。だからこそ、成功率の低い遠野の妹の手術も行ったわけで。いまは耐える時期だと思っているでしょね。弱い立場で何か言ったとしても誰も聞いてくれるはずがない。いまのような状況で、発言しても潰される可能性のほうが高いし、番匠はそういうことをちゃんと理解できる人。だから現状では無駄なことはせず、力を蓄えようとしているんじゃないですか。
加藤さんは番匠のことを白いと思いますか? それともやはり黒なのでしょうか?
もとは真っ白。でもそこから汚れざるえなかったと思う。でも人間なんて、そうじゃないですか。黒じゃないにしても、誰だって世間に出れば汚れていくものだから。「自分は真っ白です」と言っても、知らず知らずに誰かを傷つけていることもあります。その人が勝者になったのなら、当然負けた人もいるわけで。この作品ではナイチンゲールのことを白い人物の象徴として描かれていますよね。撮影に入る前、僕もナイチンゲールのことを調べましたが、彼女だって本当に白いままでいられたのかな? と考えたんです。戦争の最前線では救える命に限りがあっただろうし、例えば年配の人と若者の患者がいて、救えるのはどちらか一人、という場合もあったと思う。そこでナイチンゲールもいろいろ選択を迫られたでしょう。生きていく上で人が白いままでいるのは可能かと言えば…。
確かに、そうだと思います。その上であえて伺います。ドラマのタイトルにちなみ、加藤さんの “白い”と思う部分を教えてください。
どんな役を演じるにしても、事前準備を含め自分にできることは可能な限りします。全力を尽くします。周りが「あのときはずいぶん手加減して演じていたな」と思ったとしても、それは役のキャラクターを考え、そう見える演技をしていただけのこと。ときに出番がワンシーンのみ、なんてこともあります。役に対して与えられる素材が木の葉一枚分だけだとしても、そこからどんな木に生えていた葉っぱなのか、樹木全体の姿まで想像し、演じます。演じる役のキャラ作りに対する姿勢は白いと思います。
ところでこの現場では、若手の清原翔さんとのシーンも多かったと思います。清原さんは、かつて加藤さんが出演していたファッション雑誌に登場する、“後輩”ですね。
かつて自分もそうでしたが、日本って若手が演技の基本を学ぶ場所や機会が本当に少ないんです。それを何とか変えたいと思っていて、清原くんにも、ときには自分の経験を話すことがありました。経験していなくても、先輩の話を聞いているか聞いていないかって大きく違います。ただあまりも押し付けがましいのは相手に迷惑になるので、そのさじ加減は考えましたけどね(笑)。