高井アナの空言舌語

東海テレビアナウンサー高井一が、正しい日本語の読みや、謂れをご紹介します。

2004/7/25
五十四、
外来語の発音
 若いアナウンサーから「番組でリラクゼーションをとりあげますが、リラクセーションと濁らない読み方もあるようです。どちらを使えばいいでしょうか」と意見を求められました。
  緊張やストレスを取り去る「リラクゼーション」は、癒やしブームの昨今よく聞く言葉です。英語の綴りは[relaxation]で、発音は「リラクセーション」と濁りません。
  現代用語やカタカナ語の辞典は「リラクセーション」で項目を設けています。新聞各社も表記は「リラクセーション」を採用しています。
 どうやら外来語として定着する過程で「リラクゼーション」と濁ってしまったようです。その理由は「モータリゼーション」「オーガニゼーション」のような「…ゼーション」型の外来語に馴染みがあったことにあるようです。もちろん「…ゼーション」型の綴りは「… zation 」ですから別物です。
  では、放送はどうするか。フジテレビ系列の放送用語は「外来語は原語の発音に準じる」という考えが基本ですので、やはり濁らない「リラクセーション」とするのが妥当です。
  それよりも気になるのが、日常会話に登場する外来語の多いことです。特に若い人はカタカナ言葉のほうが今様な気分になるのでしょう。
  このままでは「て、に、を、は」以外はカタカナ語ばかりになってしまうと、日本語の行く末を嘆く声があるほどです。何より大切なことは安易に外来語を受け入れるより、日本語でどう表現できるかを、まず検討してみることです。
  国立国語研究所も「分かりにくい外来語の言い換え」を提案していて、【コンプライアンアス→法令遵守】【リニューアル→刷新】【トレンド→傾向】のように約140語を言い換えています。
  この作業では、言い換え語を四字や二字の熟語にしたため、堅苦しく面白みに欠けるものもあるのが残念です。気の利いた、思わず使ってみたくなるような言葉(日本語訳)を提案してくれると嬉しいですね。 
  「リラクセーション」も濁る濁らないの検討をする前に、分かりやすい言い換え語を作りだす努力が必要だと痛感しています。