二百十、
2011/7/1
地熱
最近のニュースによく登場するのが再生可能エネルギーです。太陽光や風力など、自然現象を利用しての発電ですが、迷いやすいのが「地熱発電」です。「チネツ」か「ジネツ」か、読み方が問題なのです。
もともと「地」には、「チ」と「ジ」の二つの読み方があります。「意地=イジ」と「心地=ココチ」のように、心に関する言葉でも読み分けがある程です。
土地については、「チ」と読むものは「大地」「農地」「地下」「地質」「産地」などがあり、「ジ」と読むものには「地面」「地震」「路地」「地雷」などがあります。この読み分けに法則性は見当たりませんが、自然と身についているものです。
ところが「地熱」では意見が分かれます。文化庁の2004年世論調査に「チネツ=52%・ジネツ=43%」というデータがありました。「地下の熱」と解釈する「チネツ」と、「地面の熱」の「ジネツ」でしょうか。
この問題については、かつてフジ系列の放送用語の会議でも検討しました。調べてみると、研究者のなかでも読み方が分かれていて、地理学の分野では「ジネツ」、地学、土木工学、地震学では「チネツ」とされています。しかも、学術用語として決められた読み方なのです。なぜこんなに読み方が分かれるのか、不思議です。新しい言葉なので、まだ読み分けの評価が定まらないのかも知れません。
そして、地熱発電関係者や地熱学会では「チネツ」と呼んでいることが判明しました。どうやら「地中熱」ととらえているようです。そこで【チネツを優先する】と判断しました。「ジネツ」派もまだ少なくないようですが、放送では「チネツ」を使いますから、一般には徐々に「チネツ」派が拡大してゆくだろうと考えています。
漢字一字の読みが分かれているものは他にもあります。無は「無礼」「無事」の「ブ」と、「無視」「無職」の「ム」。不は「ブ」で「不用心」「不精」、「フ」だと「不満」「不十分」。大にいたっては「ダイ」「タイ」「オオ」と三種もあります。
文字だけなら何の問題もないのに、声に出そうとするとハタと迷ってしまいます。これは漢字の宿命です。だから面白いと思っています。