来年4月に外国人労働者の受け入れを拡大する法案が国会に提出されました。

 専門学校では「和」の文化を学び、卒業後も日本で働こうと就職先は決まりますが、在留資格がおりずに帰国せざるを得ないのが現状で、新しい法案に期待の声もあがっています。

■留学生だけのクラス新設

 名古屋市中村区。日本人の先生の説明を受けながら、神社を参拝する外国人の若者たち…。

先生:
「この中からはもう神様の住まい、お家だからふざけたらダメだよ。大きな声もだめだよ」

留学生たち:「はーい」

 彼らはホテルや空港などでの接客を学ぶ名古屋の専門学校の学生で、これも授業の一環です。

 この専門学校では、165人の学生のうち半数を超える88人が外国人留学生で、日本で観光業界への就職を目指しています。

 今年、東南アジアを中心に外国人留学生が急増、新たに“留学生だけのクラス”を作りました。現地の所得水準が上がっていることや、日本企業の進出で、日本に興味を持つ若者が増えたことが背景にあるとみられます。

 留学生たちは日本語学校を卒業後に入学し、日本での生活や就職のため、「日本の風習」も学びます。

 国会では、政府が外国人の受け入れを拡大する改正入管法などの法案を提出。深刻な人手不足に対応するため、来年度からの実施を目指していて、14日、5年間の受け入れ人数が最大で約34万人となる試算を公表しました。

 在留資格は、これまで研究者や外国料理の調理師など専門的な知識や技能が必要な職業に限られていましたが、新たな法案では、この専門学校で教える「宿泊」や「航空」を含む14の業種も対象となるため、教育現場にも期待が広がっています。

専門学校の担当者:
「今までホテルに就職をさせても、フロント周りの仕事しかビザがおりなかったんですけど、レストランとかそういったところにビザが大幅に緩和されるということは非常にありがたいと思っています」

■雨でも雪でも病気でも学校へ

 教室に敷かれた畳の上に正座する外国人留学生たち。

先生:
「今叩いた足をトンと上げて、すっと立つ。これが美しい立ち方ですね」

 就職後に、ホテルや旅館でフロント以外の仕事もこなせるよう、学校では「和食の作法」を教える授業が開かれていました。

先生:
「まず器を『の』の字を書いて『露ぎり』の所作。左手にあずけ、右手に置く。両手で器を取って、右手で箸を取る」

 箸やお椀を器用に持ち替えているのは、中国から来た留学生・徐翠萍(じょ・すいへい)さん(27)。

 留学生の中でも、一番の優等生です。

 一方…、多少の失敗は気にしない陽気なベトナム人留学生、ファン・ニュー・イさん(25)。1コマ90分、この授業はその間ずっと正座。授業後には足を伸ばす仕草も…。まだまだ慣れません。

 国籍も性格も違う徐さんとイさんですが、大の親友でアルバイト先も同じホテル。

徐さん:
「いつもご飯食べたり、一緒に帰ったりとか。イさんはいつも笑顔。性格が明るいから友達になって」

イさん:
「(徐さんを指して…)わたしのおばあちゃんです(笑) いつも厳しくて、でも授業の中はちゃんと勉強して、アルバイトでもすごく責任持ってます」

 徐さんは来日4年目。港区の自宅を訪れると、日本でとった資格や賞状を見せてくれました。

徐さん:
「試験を受ける、合格するために、日本に来てから頑張りました。雨降ったりとか寒かったりとか、雪が降ったりとか、病気にかかっても、やっぱり学校に行った方がいいと考えて行きました」

 1人暮らしの徐さん。留学生のアルバイトは週28時間までの制限があるため、収入は月に10万円程度。家賃などを差し引くと自由に使えるお金はほとんどありません。

徐さん:
「(服をたたみながら…)これ、これ、これ、全部もらった服ですよ」

Q.買ったんじゃなくて?

徐さん:「そう」

 ほかにも…。

徐さん:
「鍋とか、全部友達からもらいました。こちら(炊飯器)も、全部友達からもらいました。いつも学校終わってから、急いでアルバイト先へ行って、家へ帰ったら11時になります。料理を作りたいけど、力も全くなくて、それでカップラーメンを沢山かって家に置いてあります。でも、学業が忙しくてもアルバイトを辞めるわけにはいかないです」

■「就職できてもビザおりないと…」

 再び、専門学校。ちょうどイさんが帰るところでした。

イさん:
「さようならー先生!」

先生:「アルバイトね」

イさん:「いってきまーす」

 一方、親友のイさん。授業が終わって向かったのは、千種区のホテルの中にある日本料理店。アルバイト先です。

イさん:
「これはお客さんの使っているおしぼりを巻いています。120本です!」

 食事時、店に客が来ると、接客の仕事もこなします。

イさん:
「ここでみんなとコミュニケーションして、日本語の単語とかも段々覚え、沢山覚えられるようになりました」

 来年春に、専門学校を卒業するイさん。卒業後は日本のホテルで仕事をしようと就職活動しています。

 そしてある日。イさんが学校へ行くと、大事な知らせが…。

先生:
「イさん、ちょっとね、伝えたいことがあるんだけど……、名古屋のホテル、内定出ました!」

イさん:
「えー!(笑) 今はなんでも大丈夫です!(と言って踊り出す)」

 自宅に帰ってスマートフォンを操作するイさん。

イさん:
「妹と話しました。就職できたら、お金あれば、いっぱいお菓子送ってくださいねって(笑)」

 希望していた日本のホテルに内定したイさん。来年の春の就職となるため、新しい制度の対象にはならず、日本で外国人が働く際の制度に、不安もあるといいます。

イさん:
「最近、外国人ほとんどは、就職できてますね。私の周りの友達。でも就職できても、もしビザがおりないと、大変になります。国に帰らなきゃいけないから。就職したところと、勉強したことが関係ないから(ビザがおりず)。私の友達3、4人ぐらいはそんなことがあって帰っちゃったんですよ」

 日本で働く夢を持つ留学生たち…。新しい日本の受け入れ制度は、彼らが望むものになるのでしょうか。