最近よく耳にするようになった「生前整理」。残された家族が困らないように、生きているうちに家具や資産など身の回りのものを片付けておくことで、ニーズは年々高まっています。生前整理のプロに、自分でできるコツなども教えてもらいました。
11月下旬、名古屋市内で開かれたある講座。参加しているのは生前整理のプロ「生前整理診断士」をめざす人たちです。
受講した男性:
「自分が相続を経験して本当に大変な思いをしたので、亡くなる前に片付けをしておくことで、本人も家族も安心して過ごせるようにしたい」
受講した女性:
「そう滅多に(実家に)帰れないという自分の都合だけで、いっぺんに片づけてしまって。あとで母から『それは残して欲しかった』とか…」
講師で生前整理診断士の三浦靖広さん、実は年末年始こそ生前整理にピッタリの時期だと説明します。
生前整理診断士 三浦靖広さん:
「(年末年始は)帰省される方が多いのでこれを機に家族で話し合いをしながら(生前整理ができる)。また、お子さんが実家の自分が生活していた部屋を倉庫代わりにしているケースもよくあります。(年末は)荷物の片付けや大掃除をすると思いますが、この時に一緒に生前整理をするといいと思います」

■プロ直伝!生前整理のコツ
ちょうど、三浦さんに生前整理の作業があると聞き、取材させていただくことに。依頼者の山田喜代子さん(69)、夫と96歳の義理の父親との3人暮らしです。
山田さん:
「私が多少なりとも元気な時にやっておかないと、もし私の方が先に逝った時にこのままの状態だと思います」
今回の目的は、倉庫代わりに使われてきた離れと8畳の和室の片付けです。早速作業開始。まずは20年以上手つかずという和室から。
箱に入ったままの布団やタオルなどが次々と出てきましたが…。
山田さん:
「みんなこれ、頂き物なんですよ」
引き出物やお歳暮などの贈答品。いつかは…と思いながら、使わないままずっと置いてあるもの、皆さんも多いのではないでしょうか。
そして、長年使われなかったお客さん用の食器やお膳、さらに昔の火鉢、豆炭を入れて使うこたつも。昔懐かしい品々に、見ているだけで1日終わってしまいそうです。次から次へと出てきた「もう使わないもの」を生前整理のプロはどうするんでしょうか?
生前整理診断士 三浦さん:
「実を言うと海外に行きます。海外でオークションに出されて、メイドインジャパンの食器ということで買い取って頂きます」

■ポイント1:捨てずにリサイクル
捨てずにリサイクル、業者に買い取ってもらうんです。三浦さんによりますと、買い取ってもらえるものは意外に多く、特に日本製品は人気で結構な金額で引き取ってもらえるそうです。
三浦さん:
「このノリタケの食器は、倉庫に眠っていたのがこれから世の中の人に使われる」
山田さん:
「そうですね、使っていただければ、それはそれでお茶碗も幸せじゃないかな」
結局、集まったのは食器、家具、日用品など、2トントラック2台分、東南アジアなど海外へ輸出する会社に2万5600円で買い取ってもらうことができました。

■ポイント2:写真は厳選してアルバムに
山田さん:
「顔のあるものは、ハサミをいれちゃいけないって言うよね。どうやって処分していいかわかんないもん、私なんか」
続いては「写真の整理」。何冊もの分厚いアルバム、どこのお宅にもありますよね。でも思い出はなかなか整理がしづらいものです。
そこで、達人三浦さんの提案は、「厳選した写真を集める」」
三浦さん:
「本当に必要なものだけ集めて、またひとつのアルバムを作るというのもひとつの手ですね」

残しておきたい写真を選び、アルバムを作ります。子どもの頃からの写真を順に並べることで、自分の人生を振り返るいい機会にもなるそうです。
ちなみに…。
三浦さん:
「可燃のゴミとして捨てることはできるんだけど、やっぱり顔のあるものは抵抗あるわ、と言われて、お焚き上げされる方もいます」
郵送で写真供養を受け付けているお寺や神社も増えているそうです。
■「楽しく家族と会話しながら」
離れの片付けも順調に進み、ずいぶんキレイになってきました。そして作業もいよいよ大詰め、最後はキッチンです。
業者の女性:
「(食器棚の)一般的に上の段はよく見直しされるけど、盲点なのが下の段。目の前に物が並んでいて…」
山田さん:
「使っていないですね」
つい、食器棚の前に物を置きがちですが、つまずきや転倒の原因にもなります。重箱など使用頻度の低いものは、下の段の取り出しにくい場所に移動させます。
山田さん:
「もう重いです、散々使ってきたんですけど、持ってみても本当に重いんですよ」
来客用の重たい大皿は洗うのもしまうのも大変。本当に必要か、この際検討してみてもいいかもしれません。

こうして2日間の作業が終了、すっきりと片付きました。山田さん、きれいになった離れを見て…。
山田さん:
「いいなと思って。私の部屋にしようかな、ここ」
そして、山田さんの96歳の父親も感慨深げです。
山田さん:
「きれいになってよかったでしょう、ここ」
父親:「そりゃそうだわ」
生前整理診断士 三浦さん:
「ひとりで黙々とやると疲れてしまいますので、なるべく家族と一緒に、楽しく、会話しながら、一つ一つの物を片づけて頂きたいと思います」