■死を“実感”…「納棺体験」とは

 お葬式では、死者を棺に入れて死を悼みますが、その棺に、生前に入る体験をする講座が話題になっています。

 儀式や棺に関する知識だけではなく、死を思うことに「今」をより良く生きるためのヒントがあることが分かりました。

 愛知県岡崎市で開催された、棺に入ってみる「納棺体験」。講師の尾崎圭子さんは、亡くなった人を棺に納める「納棺師」です。

したくや縁 納棺師 尾崎圭子さん:
「今日いらっしゃった方は、お棺に入ったことはありますか?」

 いわゆる「おくりびと」ですが、定期的に納棺体験の講座を開催し、これまでに800人以上が参加。人気になっているそうです。

 今回は、リポーターが実際に棺に入ります。一緒に20代から30代の女性4人も参加しました。

Q.棺に入るイメージは?
22歳大学生:
「亡くなった方が入るというイメージなので、すごく悲しい気持ちになります」

33歳主婦:
「棺をみるだけでちょっとドキっとする」

 と少し緊張気味。一体どんな世界が待っているのでしょうか。

 体験会は、お寺の本堂を会場にスタート、まずは座学で納棺師や棺についての理解を深めます。

したくや縁 尾崎圭子さん:
「棺の字には2種類あります。棺と柩の違いはわかりますか?」

参加者全員:
「……」

尾崎さん:
「“棺”はいわゆる“ひつぎ”です、空っぽの“ひつぎ”。人が入ると“柩”になります」

■『死』をイメージするとは?

 続いては『死』を具体的にイメージ。

尾崎さん:
「今からみなさん、一度死んでもらいます」

「もし“今”死んだら」という設定で人生を振り返ります。

尾崎さん:
「死ぬ前の最後のご飯は何でした?」

22歳学生:
「クリームパンを食べたんですけど、クリームパンがパンの中で一番好きではないので、一番好きなものを食べておけばよかったなって思いました(笑)」

尾崎さん:
「自分が死んじゃったときに、何て言ってもらったらうれしいかな?」

参加した女性:
「(息子から)お疲れ様、大好きだったよ!って」

別の女性:
「亡くなった時は(夫に)たくさん女性がいる中で自分を選んでよかったっていう風には言ってほしいなって思います」

 こうして死を具体的に想像することで、自分の「やり残したこと」が明確になり、今の生活を見つめ直すきっかけになるそうです。

 続いて登場したのは、頭につける「天冠(てんかん)」。

尾崎さん:
「仏教では人は亡くなると、仏様の弟子になるということで、位がひとつあがると言われているんですね。亡くなって『108つの煩悩がもうありませんよ』というマークとされています」

 装束や葬儀の道具にはもともと意味があり、正しい知識を持つことが、亡くなった方をきちんと弔うことにつながるそうです。

 リポーターも白装束を身にまとい、布団の上に横たわったら準備完了、いよいよ棺に入ります…。

尾崎さん:
「失礼いたします」

リポーター:
「あっ、宙に浮いた!ふわっと宙に浮いて棺に納まりました」

 見送る側は、体に触れながら声をかけます。

参加者(友人役):
「後のことは心配しないで!」

参加者(両親役):
「孫の面倒は見るから安心して」

リポーター:
「触れてもらったぬくもりを感じます」

 そして、ふたが閉じられると…。

リポーター:
「ふたが迫って来ました…真っ暗、違う世界に行ってしまったような感じがします」

 暗くて狭い棺の中ですが、不思議と怖いという気持ちはなく、実際のスペースより広がりを感じるくらいだったとのこと。

 そして再びふたを開けると…。

リポーター:
「あ~開いた、みなさんの顔が見えます」

 棺が開けられ、初めての納棺体験が終了。「死ぬのはひとり」と言いますが、弔ってもらうには周りの人の手がないとできないことも実感します。

■「納棺体験」…参加者の感想は?

22歳学生:
「普段、なかなか両親と話すこともなくて、もっとたくさんコミュニケーションをとって、後悔のない人生を送りたいと思いました」

参加者の女性:
「(棺は)暗いイメージしかなかったんですけど、温かいんだなっていうのがわかりました」

 “死“を実感することで、逆に生きている幸せやぬくもりを再発見したようです。

尾崎さん:
「“死ぬ“ということを体験してどう生きたら良いのか、今までの生き方をどう変えていったら良いのか、というのを考えていただきたいです。(納棺体験は)生きる意味を考える体験だと思います」

 今の暮らしの中で、何をやり残しているのか、何をすべきなのかを考える機会として、体験してみるのも良いのではないでしょうか。