■増える女子生徒の「スラックス」
4月を迎え、街でも新しい制服を着た中学生や高校生の姿を見ますが、皆さんはどんな制服を着ている、また着ていたでしょうか?
制服も時代の流れとともに変化。元号が変わろうとする中、女子のスラックスも認められるなど、新たなスタイルも登場しています。
名古屋の街中には新しい制服に身を包んだ学生たちの姿が…。
新高1女子:
「入学したばかりです。人見知りなので、友達をまずつくりたいです」
新高1男子:
「高校生活の目標は、楽しく3年間を送ることです。制服はちょっと大きいくらいだけど、いいかなと思います」
一方で、今までの時代とは違う新生活を始めた学生も…。
この春、静岡県藤枝市の中学校に入学した女の子、紅林さん。履いているのはスカートではなく「スラックス」です。
新中1の紅林さん:
「好きというのが一番大きいけど、冬とかも温かいし、という理由でスラックスにしました」
紅林さんの中学校では、この春制服を一新して、女子生徒がスカートかスラックスかを自由に選べるようになりました。
紅林さん:
「スラックスの子たちは結構少ないけど、スカートの時より全然動きやすいし、私はやっぱりこっちの方が好きだなと思ったから」
■採用校数は年々増加し800校に
このスラックス、「動きやすさ」や「防寒」、「痴漢などからの防犯」というメリットがあるのに加え、性別を問わず選べる「ジェンダーフリー」でもあります。
全国的にも導入が進んでいて、制服メーカーによると、女子のスラックスを導入する学校は年々増加。今では全国におよそ800校もあるそうです。
そんなスラックスOKの学校が名古屋にもありました。名古屋市立緑高等学校では…。
緑高校 生活指導主事 朝田先生:
「スカート、キュロット、スラックス。特に規定なく、この中のどれを組み合わせても構わないというのがうちのルールです」
■きっかけは「生徒や教員の意見」
生徒や教員の意見を受けて、2002年から女子生徒の制服を3パターンに増やしていて、名古屋市立の高校では、いち早く女子のスラックスを取り入れたんだそうです。
朝田先生:
「割と多いのは、スカートとスラックスを組み合わせて買う子です。スカートの丈が短いんじゃないの?と(仕事柄)気になるので、スラックスはそんな心配ないので助かります」
時代の変化とともに大きく変わっていく制服事情。かつて学生だった街の大人は…?
60代女性:
「(女子生徒でもスラックスを選べることについて)え!あるんですかそんなの。(昔は)パンツがそもそも頭に浮かばなかったんじゃないかな。私たちの学校はセーラー服でしたね」
50代女性:
「すっごくスカートが長い時代でした。足首くらいまでが“おしゃれ”でした」
■セーラー服からブレザーへ
そんな“昭和”の制服。今から40年近く前の昭和56年(1981年)の名古屋の百貨店・松坂屋の制服売場では、昔ながらのセーラー服に対し、当時登場したばかりの『ブレザー』が憧れの的に。
ひざよりも、ずっと下のロングスカート丈が主流。この頃は皆さん足首の位置で採寸していました。
■制服にDCブランドも登場
そして昭和60年代に入ると、名古屋でも有名デザイナーによる「DCブランド」がブームに。
愛知県にある、安城学園高校の1987年当時の制服は、紺のベストの裏地にはタータンチェックが入っていて、リバーシブルで組み合わせを楽しめるブレザーでした。
■制服は、より男女差のない時代へ
同じ年の東海女子高校(名古屋市天白区)の制服も有名ブランドのデザイナーが手掛けましたが…ずいぶんと斬新でした。
そして時代は平成へ。
この時代の制服は学校ごとの個性を出し、カジュアル化する方向に。「コギャル」、「アムラー」などの言葉も生まれた1990年代には、ミニスカートが大流行し、ルーズソックスを合わせるのが定番でした。
そして元号が令和になろうとする今、制服は、より男女差のない時代になってきているようです。
2人組の高校1年女子:
「スカートじゃなくてキュロットなところ。ズボンみたいになっているから楽だなって思います」
「女子だけどネクタイというところが気に入っています。かわいいものよりはかっこいいじゃないですけど、シンプルなのが好きなので。スラックスかスカートだったらスラックスの方がいいかなと思います」
イマドキの高校生たちの感覚に大人たちは…。
Q.“自由に選べる制服”は賛成ですか?
60代男性:
「積極的じゃないですけど…そこ(自由)に焦点が当たり過ぎているという気がしなくもないです」
50代女性:
「私のころは、体操服もチョウチンブルマだったので。ぴちぴちブルマとか。今考えると、すごくおかしな話ですよね。(制服を選べるのは)良いと思います。女の子だからスカートという考えではないですもんね、すでに」
■北国発祥説…徐々に都市部へ
制服スラックスは導入する学校が増えていますが、北国発祥ともいわれています。
制服メーカーに聞くと、寒冷地ではスカートだと足が出ていて寒いため、スカートの下にジャージをはこうという学生が増えてきたそうです。
ただ、スカートの下にジャージをはくのはどうかという意見が様々なところから出て、制服をスラックスにしようという流れになったそうです。
その制服スラックスは徐々に東京、大阪など大都市に増えていきました。
理由は1つ目に機能性にあり、例えば自転車に乗ったときなどスラックスの方が安心ということ。2つ目には男女の枠にとらわれないという考え方が普及してきたようです。
■名古屋の“風潮”と制服スラックスの導入状況
ちなみに、名古屋市内の市立高校14校では4校で制服スラックスが認められていますが、決して多くはない状況。どの学校も制服をリニューアルするタイミングで、生徒や先生からスラックスを求める声があがって導入するところが多いようです。
取材で感じたのは「名古屋は伝統を重んじる」という風潮。世の中に選択肢が広がっていく中、「女子の制服の選択肢」はどんなスピードで広がっていくのでしょうか。