7月21日に投開票の参議院議員選挙、 勝敗を分けるのが全国に32ある1人区です。
改選数が複数あれば与野党で議席を分けあうことが多いですが、1人区は勢力の増減に直結するため与野党ともに力を入れています。
東海地方では岐阜と三重が1人区です。
岐阜から立候補しているのは、自民党の大野泰正さん、野党統一候補で立憲民主党の梅村慎一さん、諸派の坂本雅彦さんの3人。
三重は自民党の吉川有美さん、諸派の門田節代 さん、野党統一候補で無所属の芳野正英さんが立候補していて、いずれも自民党の現職に野党統一候補の新人らが挑む構図です。
参院選の行方を左右する野党共闘の実情を取材しました。
■有数の保守王国・岐阜
6月 21日、岐阜市内で開かれた集会。
立憲民主党の枝野代表が演説する壇上で緊張した表情を浮かべる梅村慎一さん(48)。
立憲民主党公認で岐阜選挙区から立候補しましたが、司法書士で政治経験はありません。
野党統一候補で立憲民主党の新人・梅村慎一さん
「みなさんのために全力で安倍政権打倒のために頑張ります」
枝野代表も応援に駆け付け、梅村さんへの支援を呼びかけました。
立憲民主党・枝野幸男代表
「この選挙、厳しいけれども勝ち抜かなければならない」
梅村さんが選挙戦で対峙する相手は、自民党現職の大野泰正さん(60)。
自民党の現職候補・大野泰正さん
「参議院選挙というのは本当にひとりでは何もできない選挙であります」
選挙事務所の開所式には、野田聖子・前総務大臣ら閣僚経験者のほか、県内の自民党議員がずらりと顔を揃え、支援者が会場からあふれ出すほど多くの支援者が集まりました。
全国有数の保守王国・岐阜。改選数は1で、野党がバラバラでは勝ち目がなく、立憲民主党や国民民主党、共産党など野党の5党派は、5月、梅村さんを野党統一候補にすることを決めました。
6月20日、野党統一候補の梅村さんが訪れたのは労働組合。労働組合は、立憲民主党と国民民主党の最大の支持団体で、選挙では、その組織的な支援が欠かせません。
梅村さんは立候補を表明してからの半年間、県内各地の労働組合まわりを続けてきました。
梅村さん
「(まわった労働組合は)100は下らない思います。まずは組合の方々に自分を知っていただく、これが第一だと思っております」
この日、梅村さんがあいさつに訪れた地方自治体の職員らが所属する自治労岐阜県本部の中央執行委員長、櫻井靖雄さんは、「梅村慎一さんの名前を周知していく」と応援する姿勢を示しました。
また、岐阜県内に約300人の組合員を持つ名鉄労組の中央執行委員、河江健治さんも「立憲民主党は支援をする政党なので、一番支援していかないといかんのかなと」と 協力する構えです。
■容易ではない「1枚岩」
力強く梅村さんを支えるという労働組合。しかし、岐阜県内全ての労働組合がこうはいかないようです。
労働組合を束ねる「連合岐阜」の高田勝之会長、連合のなかでも梅村さんを全力で支援できない団体があると不安を口にします。
連合岐阜・高田勝之会長
「正直申し上げて、連合としての支持政党が分かれてしまっているということ、これがやっぱり一番大きな課題ではなかろうかなと思っています。さかのぼれば一昨年の衆議院選挙の直前に分裂した流れがいまだに尾を引いている」
民進党の分裂に伴い、連合の労働組合も立憲民主系と国民民主系に分裂。
国民民主系の労働組合のなかには、立憲民主党公認の梅村さんの支援に消極的な組織もあるといいます。
さらに「野党共闘」の一角の担う共産党を巡っても懸念が。連合岐阜の高田会長は、「考え方が異なる共産党と一緒に選挙活動はできない」と断言します。
高田会長
「(連合の)組織の中でハレーションが起きてしまいますので、逆のマイナス要因も出てくるということですから、それは何がどうあっても私たちはできない」
「野党共闘」、その言葉だけでなく本当の意味で一枚岩になるのは容易ではなさそうです。
梅村さん「考え方が違う政党・団体があるということは私も否定はしません。横を見ないで私だけを見てくださいと、前を向いて走る、その一点でなんとか応援していただけるようにお願いしている」
■岡田克也衆院議員のお膝元で挑む“野党統一候補”の無所属新人
一方、三重県は自民党の現職に野党統一候補の新人が無所属で挑みます。
6月23日、菰野町。
菅官房長官:
「この三重県もまさに最大の激戦区なんです。吉川さんを何としても勝たせてあげてください」
「令和おじさん」こと菅官房長官が応援するのは、三重選挙区から2期目に挑む吉川有美さん(45)。
自民党の現職候補・吉川有美さん:
「6年前の初心を忘れることなく、二期目に向かってまた皆さまにお世話になりながら走り抜いてまいりたい」
改選数1の三重で議席を維持するため、自民党は今後も大物議員を投入するなどして、吉川さんを強力にバックアップする方針です。
その吉川さんに挑むのが県議や市議などを務めた無所属の新人、芳野正英さん(44)。野党統一候補です。
野党統一候補で無所属の芳野正英さん:
「この参院選は、これまで6年半続いた安倍政治をこのまま続けていくのか、それともこれでストップをして新しい政治の流れを作るのか」
三重県といえば旧民進党の元代表、岡田克也衆院議員のお膝元。その岡田議員が中心となって去年立ち上げた旧民進党系の地域政党、「三重民主連合」が芳野さんを擁立しました。
岡田克也衆議院議員:
「芳野さん、よく体力が持つなというくらい懸命に頑張っていますけれども今回は新人です、相手は現職です。したがってまだまだ名前がしっかり浸透していない」
今回、芳野さんは立憲民主党と国民民主党どちらかの党の公認候補ではなく、「無所属」での出馬。
「無所属」だと街宣車が1台しか使えないなど選挙戦は不利ですが、立民と国民、双方の支援者から支持を得るのが狙いです。
芳野さん:
「(無所属は)選挙という手法で考えると活動も制約があるので、(街宣車)政党と候補者本人というのがあったほうがありがたいですね。でも無所属であるぶん、幅広く支援もしていただけるのかなと思っています」
6月13日、会見に臨んだ芳野さん。市民団体の「市民連合みえ」と、「安保法制の廃止」や「改憲の阻止」など4つの政策を掲げることで、選挙活動を支援してもらう協定を結びました。
この日、三重民主連合をはじめ、共産党や社民党なども市民連合みえの要望書にサイン。市民連合三みえを間に挟み、野党各党が芳野さんを支える形が整いました。
岐阜県で持ち上がる共産党と連携する「壁」についても、芳野陣営の選挙対策本部で副本部長を務めるベテラン県議は「共産党が理解を示してくれた」と「一枚岩」を強調します。
芳野陣営の選対副本部長・三谷哲央三重県議:
「共産党さんとの距離感ということに非常に敏感な方も正直言いますとありますので、そこはやっぱり市民連合さんを間に入れてきちっとした距離感を保ちながら、また共産党さん自身も、大変ご理解いただいていまして、少し下がった形で、積極的に応援していこうということを示していただいていますから、そういう意味では非常にありがたい」
「少し下がった形で応援」という共産党の事務所を訪ねてみると、芳野さんのポスターやリーフレットがありました。合同での街頭演説などはしないとみられるものの、党員や支援者に芳野さんの支持を呼びかけています。
共産党三重県委員会・大嶽隆司委員長:
「共産党としては候補者をおろしてまで応援するわけですから、当選のためには何でもやる。ただし、応援を受ける側の、芳野さんなり、民主連合さんがこれはやめてくれということは邪魔になるから、そういうことはやりません」
3年前の参院選では、共闘が成果を上げた実績がある三重県の野党。今回もその再現を狙います。
岐阜選挙区と三重選挙区には、このほかそれぞれ、諸派でNHKを見たくない人は受信料を払わずに済むよう法改正を訴える坂本雅彦さんと門田節代さんが立候補しています 。
『この記事は東海テレビとYahoo!ニュースの連携企画記事です。参院選の勝敗を左右する1人区の実情を伝えます。』