スマートフォンなどを使いながら車を運転する「ながら運転」の罰則が12月1日から強化されます。この罰則強化に至った背景には、「ながら運転」で息子の命を奪われた父親の懸命な活動がありました。
行きたい場所を声で伝えるだけで案内してくれるシステム。LINEが今年9月に導入した「LINEカーナビ」です。
スマホに話しかけるだけで、LINEのメッセージや音楽の再生も出来るこのシステム。開発当初は、カーナビとして使う想定はしていませんでしたが、あるきっかけでカーナビに応用することになったといいます。
LINE Clova企画室 中村浩樹室長:
「元々12月1日からながらスマホの厳罰化が施行されるというのは我々も知っておりまして」
携帯電話などを使いながら運転する、いわゆる「ながら運転」。スマートフォンの普及に伴い年々増加し、今年愛知県内では、10月末までにのべおよそ5万3000人が検挙されました。
この「ながら運転」、12月1日から罰則が強化されますが、法改正に至った背景には「ながら運転」の犠牲となった多くの命と、遺族の懸命な訴えがありました。
愛知県一宮市の則竹祟智さん(49)。3年前、当時9歳だった次男の敬太くんが「ながら運転」の犠牲になりました。
2016年10月、一宮市の交差点で敬太君はトラックにはねられ死亡。
運転していた男(当時36)は、スマートフォンのゲーム「ポケモンGO」をしていました。
則武さん(事故直後):
「『ポケモンGOかよ』というのが正直です。本当にはらわたが煮えくり返る腹立たしい事件だと思っています」
身勝手な「ながら運転」で最愛の息子を奪われた則竹さん、事故直後から厳罰化に向け活動を続けました。
国に要望する則武さん:
「悲しい悲劇が、繰り返されないように是非、厳罰化に向けてもお願いしたいと…」
しかし法改正には時間がかかり、事故のおよそ半年後に迎えたトラック運転手の男の判決は「禁錮3年」。執行猶予が付くことの多い交通事故。当時は「異例の実刑判決」といわれましたが…。
則竹さん(判決後):
「被害者からすれば、これは一つの命を考えたときに(禁錮)3年というのはあまりにも天秤にかけた時に軽すぎるな、というのが率直な意見ですね」
則竹さんは、その後も「ながら運転」の厳罰化にむけ、全国で講演をするなど活動を続けました。
そして、事故から2年半後の今年5月。罰則を強化した改正道路交通法が可決されました。法改正で罰則は、事故を起こした場合、現在の「3カ月以下の懲役または5万円以下の罰金」から、「1年以下の懲役または30万円以下の罰金」に引きあげられます。
また、違反点数も2点から6点に引きあげられ、即免停になります。
事故から3年。毎日欠かすことなく、事故現場を訪れ、敬太くんに話しかけている則竹さん。
則竹さん:
「3年っていう月日は流れたんですけど、基本的に何か僕たちに節目があるのかっていうと、そういうものでもないっていうことなんですよね」
家族の時間は止まったままです…。
則竹さん:
「なんとか、今できるギリギリの厳罰化だったんだろうなと。ようやくスタートしたっていう感じじゃないんですかね。ただ、これで全てが解決するわけではありませんので。やはり、ながらスマホするということは危険な行為ですから。危険運転致死傷罪というものがあれば、今一度見直していただくということも必要なのではないかなと。「本当にみなさんが事の重大性を理解して、すぐやめていただくというのがあるといいなと思っていますね」
今回は、事故を起こさなくても運転中に通話や画面を注視した場合の罰則も強化されました。法改正前は5万円以下の罰金だった罰則が、法改正後は6カ月以下の懲役または10万円以下の罰金に。
違反点数も1点から3点に引きあげられました。