三重県南部の伊勢志摩地方。日本有数の観光地ですが、新型コロナウイルスの影響で、この地も観光産業が窮地に追い込まれています。
そこで、三重県が独自に打ち出したのが…「宿泊施設への協力金」。4月25日から5月6日の間に、予約の延期やキャンセルに応じた事業者に一人当たり一泊6000円、上限12万円を支給します。
行政と事業者、そして利用客。三位一体の対応が求められている旅館の今は…。
リアス式海岸と数々の離島が浮かぶ伊勢志摩の海。新鮮な伊勢海老に、柔らかな食感のアワビなど、美しい海に育まれた高級食材の数々が旅人を魅了します。
2016年に開かれたサミットを機にその魅力が改めて見直され、世界的な観光名所となった伊勢志摩。
しかし、今は…。
(リポート)
「三重県南部の鳥羽駅前です。ここの駐車場は、本来は旅館の送迎バスで埋め尽くされているはずですが、今日は一台もなくガランとしています」
タクシー運転手:
「観光客は全体的に、日曜日も土曜日も全然なし」
賑わっていた観光地に人の姿はありません。
観光客の激減で窮地に追い込まれている観光産業…。中でも、大型連休を見込んでいた旅館やホテルは厳しい環境にあります。
三重県鳥羽市の老舗旅館「戸田家」。
戸田家 寺田社長:
「この時間ですと、(普段であれば)チェックアウトのお客様でごったがえしている。やはりこうして見てみると、非常に寂しい感じがしますね」
明かりの消えた真っ暗なフロント。宿泊客が朝のコーヒーを飲んでくつろいでいたロビーも、静まり返っています。
この旅館では20日から5月6日まで休業することにしました。
部屋から臨める鳥羽の海が自慢の戸田家。大型連休ともなると170ある部屋がほぼ満室になりますが、今年は数少ない予約も全てキャンセルとなりました。
寺田社長:
「宿泊人員からすると、1割に満たない人員でございますので、7~8%の売り上げになるんだろうなという風に見ています。億の単位になりますね」
三重県の重要な産業である観光。その受け入れに欠かせない宿泊業がこのままでは壊滅的な影響を受けかねないと、危機感を覚えた県は…。
鈴木三重県知事:
「予約の延期、キャンセルの協力金として、1人の1泊あたり6000円。ゴールデンウィークがスタートする、4月25日土曜日から」
旅館やホテルに対し「宿泊予約延期協力金」を三重県が独自に設けると発表。大型連休中の予約の延期やキャンセルに対して、客1人あたり6000円を上限に12万円まで支給します。
21日朝から始まった県の電話相談には「ビジネス客も対象になるのか」「医療従事者の予約はキャンセル対象になるのか」などの問い合わせが殺到し、改めて厳しい状況に置かれていることを印象付けていました。
今回、三重県が支給することにしたのはあくまでも協力金で、最大でも12万円。億単位の売り上げがなくなる見通しの戸田家は「ありがたい」としつつも、将来への不安はぬぐえません。
寺田社長:
「政府からの融資もありますし、セーフティネット等の融資も活用しまして資金の調達はさせていただいています。借りるのもいいけれども、いずれにしても返さなきゃならない。我々にとっては借金になりますので」
今を乗り切っても、その先にある次の試練。それでも、わずかな光に希望を見出すしかないのかもしれません。