2月に入院していた患者の新型コロナ感染が判明し、一時は外来や手術、救急外来も全て停止していた名古屋市緑区の「南生協病院」は、10日後には外来の再開にこぎつけました。

 感染が拡大すれば医療崩壊にも繋がりかねない事態に、どんな対策をとったのか。病院の院長に当時の話を聞ききました。

 名古屋市緑区の「南生協病院」。

 入り口の通路は受診する科ごとに分けられ、休憩スペースも人が滞留しないよう封鎖されています。

長江院長:
「やっぱりいつ何時、自分たちの身に降りかかってくるか分からないという恐怖感が、今も続いています」

 病院として何としても避けなければならない「院内感染」。

和歌山県の会見(今年2月):
「外科の患者さんが肺炎になっているわけだから、そこでうつったんじゃないかなと」

神奈川県の小田原市民病院の会見(5月2日):
「この状況を見まして、院内感染が発生したと」


 全国の医療機関で相次いで発覚した、病院関係者や患者の新型コロナウイルス感染。

 院内で広がり病院の診療が長期停止すると、医療崩壊に繋がりかねないため、最大のリスクの一つとされてきました。

長江院長:
「院内で突然出たということは、すごく衝撃的でしたね」


 2月、肺炎で入院していた患者が新型コロナに感染していることが判明。下痢や嘔吐で緊急搬送されてきた、70代の女性でした。

長江院長:
「通常だったら、肺炎球菌の治療をすれば短期間で良くなるはずなのに、なかなかきれいに症状が取れていかないということがあって、ちょっとおかしいと」

 症状に違和感を覚えた医師は、4人部屋にいた女性患者を個室に移します。

 この判断が、のちに院内感染を防ぐ結果となりました。一方で…。

長江院長:
「事前にわかっていたジムとかね、ここらへんが危ないよというところじゃないところからですね、しかも最初の肺炎の患者さんはですね、下痢・嘔吐で来たんですよ。保険センターの方も、まずは『もうちょっと様子見たらどうでしょうか』ということで…」

 当時、愛知県内で確認されていたクラスターがスポーツジム関連の1つだけだったことなどから、女性はPCR検査を受けることができませんでした。

 その後、女性の呼吸状態は悪化。再度保健所に連絡して検査をした結果、“新型コロナウイルス”の感染がわかりました。

 コロナ患者の受け入れ病院に指定されていない南生協病院。現場は混乱しました。

 陽性判明の翌日に開かれた会議のホワイトボードには、「外来閉鎖」「手術、検査…これからは一斉なし」などの文字が…。

長江院長:
「いろんなことについて、何があるのかなという問題点を出しながら、一番は濃厚接触にあたる人は誰なのか、どんどんどんどん、あの人もあの人も接触していたという話が出てきて、大変でした」


 最大のリスクである院内感染を防ぐため、病棟勤務の医師と看護師などおよそ40人全員を、感染発覚後、自宅待機と決めました。

 さらに発覚翌日からは外来や手術、夜間診療もすべて休止し、院外で行う処方箋のみの対応へと変更しました。

長江院長:
 「(陽性患者が入院した)病棟のスタッフ全部を待機にしてしまったから、その病棟をどうまわすかということで、(休止した)外来のナースとか、その病棟に応援に入ると」


 診察を1週間単位で休止したのは、44年の歴史で初めての事態です。予約が1日あたり500~600件入っているため、全ての患者に急いで受診日を変更してもらわなければいけません。

 休みの職員も呼び出して、スタッフ総出で電話をかけ、2日がかりでなんとか対処できたといいます。

長江院長:
「医療関係者としてはそれに対してどう対応していくか、みんなの知恵を集めながらやっていくしかないなと。すごい不安と混乱の中で、よく頑張ってもらったなと思います」

 結果、入院患者や医療スタッフに感染が広がることなく、10日後には外来の再開に。

 一番のカギは、現場が持っていた危機感だったと院長は振り返ります。

長江院長:
「どこから出るか分からないという危機感は持っていたので、現場のスタッフの方も緊張は高まっていた。こういう所できちっと受け入れていかないと、結局行く所がなくなっちゃうかもしれないので。この病院の使命としては、発熱のある人を受けないということじゃなくて、受けた上でちゃんと安全に診るという風にしていかなきゃいけないと思っていますけど」

 日本看護協会によりますと、全国の54施設で783人に院内感染が確認されているということです。