2018年12月、三重県津市で時速146キロの車がタクシーに衝突し5人が死傷した事故。16日の判決裁判では、刑罰の重い危険運転致死傷罪ではなく、過失運転致死傷罪が適用され、被告に懲役7年の判決が言い渡されました。
おにぎりを食べたあと、海苔を歯につけ笑顔を見せる男性。結婚を目前に事故で亡くなりました…。
亡くなった男性の婚約者:
「あれが危険運転じゃなかったら、あれはなんていう運転なのか教えてほしい」
判決後、遺族らは涙ながらに無念さをにじませました。
国道を、猛スピードで走るメルセデス・ベンツの乗用車。事故はこの直後に起きました。
2018年12月、津市の国道23号線でベンツがタクシーと衝突。
タクシーの乗客ら4人が死亡、1人が大ケガをしました。
タクシーが飲食店の駐車場から反対車線に出ようとした矢先に起きた事故でした。
事故で逮捕されたのは、ベンツを運転していた末広雅洋被告(58)。
起訴状によりますと当時、末広被告は国道を時速146キロで走行しタクシーと衝突。危険運転致死傷罪に問われています。
タクシーの乗客で、事故で亡くなった津市の会社員・大西朗さん(当時31)。結婚式を挙げる直前でした。
朗さんの母親:
「彼女の作ってくれたおにぎりをバクっと食べて、海苔を歯に貼ってニッと見せるんですって。葬儀場のマネージャーさんに『ちょっと、ふざけてますかね?』みたいな感じで聞いたら、もう断トツ一番(良い写真)ですって言っていただいて」
朗さんの父親:
「私と嫁さんと妹と弟と、12月29日からみんなで(朗さんが生死をさまよった)6日間はつらかったな。脚が腐って、切断せいとかさ。バイクがここ(家の前)通るやろ。朗のことをな…」
朗さんの母親:
「バイクでな、通勤しとったもんで、朗が帰ってきたような気がするってね」
今回の裁判で、大西さんの両親らは危険運転致死傷罪が適用されるよう願っていました。
危険運転致死傷罪の適用を巡り争点となったのは、当時、危険な運転だったのか。そして、末広被告にその認識があったかどうかでした。
これまでの裁判員裁判で末広被告は、「進行の制御ができなかったとは思っていない」と述べ、制御でき危険な運転行為に該当しないとして、危険運転致死傷罪は成立しないと主張。
弁護側も、過失運転致死傷罪が妥当とし、執行猶予付きの判決を求めていました。
一方、検察側は被告が過去8回事故を起こしていたことを指摘。そのうえで「時速146キロの速度は制御困難」として、危険運転致死傷罪での懲役15年を求刑していました。
朗さんの母親:
「危険運転致死傷罪にしてもらって、最高の刑を与えてもらわんことには、これは使命やと思います。そういうふうにして亡くなった息子たちの使命やと思う」
注目の判決。
<柴田誠裁判長>
「主文、被告人を懲役7年に処する」
判決で津地裁は、「ハンドルやブレーキ操作の僅かなミスによって、事故を発生させる危険があったことは明らか」と指摘。危険な運転だったことは認めました。
その一方で「被告が運転技術を過信し、事故が発生する可能性を想定していなかったとみる余地が多分にあり、故意と認定するには合理的な疑いが残る」として、危険運転致死傷罪の成立は認めませんでした。
そして地検が予備的訴因として追加した過失運転致死傷罪を適用、その上限となる懲役7年の判決を言い渡しました。
判決を受け、亡くなった大西さんの母親と婚約者は…。
朗さんの母親:
「ありえないです。戦います。馬鹿らしいなって思いました。意味がよく分かりません」
朗さんの婚約者:
「あれが危険運転じゃなかったら、あれはなんていう運転なのか教えてほしい。だって(懲役)15年だったとしても、15年たったら出てこれるんでしょ、それで家族に会えるんでしょ…。私会えないんですよ、もう朗とは。朗、返してほしい…」