演劇が活発で多くの劇団もある名古屋。しかし、新型コロナの影響で、劇場で演劇を観ることができなくなっています。名古屋の役者たちのいまを取材しました。

 名古屋の劇団「劇座」。新型コロナウイルスの影響で舞台の予定がなくなり5月20日、事務所では役者たちが相談していました。

劇団の女性:
「アルバイト先から『半分にしてくれ』と言われまして、役者仲間が同じところで社員扱いなんですけど『就職先を探しておいてね」と言われている状況です」

劇団の男性:
「バイトも休業になっています。自分が懸けてやってきたことが全くできなくなっちゃたという喪失感みたいなものがものすごくありますよね」


 「劇座」は1985年、今から35年前、名古屋で旗揚げしました。若手を育成する全日制の俳優養成所を持っていた時代もあります。

「劇座」の二期生、岡田一彦さん(52)は、高校を出て演劇界に飛び込み、役者を34年続けてきました。

岡田さん:
「私たちがやっていることが仕事として認められていないというのはよくあるんですけど、そこがまた難しいんですよね。 難しい仕事をやっているんです、多分」


 役者が役者だけで食べてはいけない、名古屋の演劇事情です。

演劇の場合、公演の2か月前には稽古を始め、本番が近づくと、5日は仕事を休むことになります。

岡田さんは週に2日、カプセルホテルやスパなどを展開するリラクゼーションの会社で働いていますが、ありがたい職場だと話します。

同僚の女性:
「お芝居の時は(岡田さんは)全然違いますので、役者さんなんだなって、お芝居が好きなんだなって思っていつも拝見しています」


「劇座」の6月公演は、新型コロナウイルスの影響で無期限延期になりました。岡田さんはこの先、劇団をどうしたらいいのか悩んでいました。

岡田さん:
「今、答えは出ていないです、今この段階では。どうやっていったらいいのか僕にもわからないですね。『劇座』をなくさないでほしい、もっともっと活動して活躍してほしいとついこの前言われたばかりです。自分はまだまだだと思っていますけど、『劇座』はちゃんと芝居ができる劇団だと思ってくださっている」


「劇座」は去年4月、事務所を移転しました。家賃は半分になりました。

5月27日、久しぶりに座長夫妻の天野鎮雄さん(84)と山田昌さん(90)が事務所に。名古屋演劇界の重鎮です。

役者の心得も劇団運営の難しさも、岡田さんは2人に教えられてきたといいます。

「劇座」が経験した16年前の2004年、経営危機を迎えていました。

【2004年当時】
劇団の男性:
「今こういう経営が苦しい状態で、このまま消えていってしまっては、もう完全な敗北なので」

別の男性:
「また、そういう強い劇団にできるのならそうしたいなと」

岡田さん:
「もう少し活発にしていかなきゃいけないということ。つまり、ここだけでやってる」

天野さん:
「僕に従っていたら、なくなるよね、劇団は。具体的なアイディアがあればね、それで二重丸ですよ。言うだけでは話にならん」

ノーギャラで出演し続ける座長、アルバイトで食いつなぐ仲間たち、劇団はそれぞれの熱意で、荒波を乗り越えてきました。

6月になり劇場の自粛が緩和されましたが、まだ客席の定員制限もあるなど、劇座は公演に踏み切れない状況が続いていました。

危機の中、「劇座」はしばらくの間、満席の劇場を夢見て動画で活動を紹介することに。

創立35年の劇団「劇座」の動画は「GEKIZAでShow」で検索できます。