高校生が飼育した牛の品評会「和牛甲子園」に情熱を傾ける女子高校生が岐阜県高山市にいます。新型コロナウイルスの影響で、学校に行くことができず大好きな牛に会えない日が続きました。
「肉牛を育てる農家になる」という将来の夢も休校期間に自分を見つめなおすことで変わってきました。
■「動物研究部」に所属する牛に青春を捧げる女子高校生
岐阜県高山市の飛騨高山高校、生物生産科の3年生、糸田葵さんは「牛に青春を捧げる」高校生です。
50頭の飛騨牛を飼育する生物生産科で学びながら動物研究部にも所属し、授業以外の時間も牛の世話をしています。2020年1月には、全国の高校生が育てた和牛のNo.1を決める大会「和牛甲子園」にも出場。
ところが、新型コロナの影響で春から休校に。
糸田さん:
「大好きな動物に会えないのは、本当につらい事だなって実感できて。牛と接したりできるのは、自分にとって本当に大事なものなんだろうなって」
■コロナ禍の中で募る「牛に会えない寂しさ」
4月2日、春休み中の糸田さんは同級生と、直接世話をすることができない牛の管理について、話し合っていました。休校中は、先生たちが代わりに飼育しています。
糸田さんが愛情を注いでいる5歳の雌牛「ももちゃん」。1年生の時に一目惚れ。
絵が得意な糸田さんは、休みの間、ももちゃんの絵をたくさん描いていました。
「ツンデレ」なももちゃんに…。
ももちゃんに追いかけられる糸田さん。
同級生も糸田さん本人も「尻にしかれている」ような関係だといいます。
この日、牛の様子が気になり、同級生と学校を訪れましたが、新型コロナのため牛舎に入れず、遠くから眺めるだけ。
遠くから声をかけたり、双眼鏡で見てみたり…。
糸田さん:
「自分の担当牛が見られないのって、こんなに寂しいものかと思いましたね。早く会いたいです」
■休校中に始めたのは「筋トレ」!?将来の夢は「牛を飼育する農家」
両親が犬と猫の保護活動をしている糸田さんは、幼い頃から動物に囲まれて育ちました。中学生の時の職業体験で触れ合って以来、牛は特別な存在です。
糸田さん:
「元々は、犬とか猫の職業に就こうと思ったけど、今は牛関係の職業に就きたいと思っています」
将来の夢は肉牛を飼育する農家になること。元々、体があまり強くない糸田さん。休校期間を利用して、筋トレを始めました。
糸田さん:
「知り合いの農家さんに、牛関係の仕事就きたいって言ったら、『まずは体力付けんと始まらんぞ』って言われたから、頑張ろうって思って。牛のことですね。牛のことしか考えてない気がする」
糸田さんの母・恵子さん:
「水族館に行ったら、『飼育員にはどうやったらなれるの?』とか聞いたりして、大きくなってきたので、動物に関わる仕事はするのだろうな、とは思っていたんですけど。牛と聞いてちょっとビックリしましたけど、自分が選んで向かっていくのであれば、応援したいと思っています」
■会えなかった時間を埋めるように…3か月半ぶりのブラッシング
春休みから2か月経った6月。ようやく学校が始まり、新学期がスタート。3か月半ぶりに部活動も再開されました。
糸田さん:
「ももー。久しぶり。元気やった?」
会えなかった時間を埋めるように、ずっと顔を撫で続ける糸田さん。
そして、牛とのスキンシップを図るためのブラッシング。
糸田さん:
「超抜けるよ。もも、ごめんな」
3か月半ぶりのブラッシング。冬から毛が生え変わったこともあり、沢山の毛が落ち、気が付けばいつもの倍の時間がかかっていました。
■出産間近のももちゃん…将来は「人工授精」に携わる仕事に就くため大学進学へ
ようやく戻り始めた日常。糸田さんは、牛に触れ合える喜びを噛みしめていました。
糸田さん:
「今日会えてうれしかった。元気出ました」
ところが、あるアクシデントが…。
糸田さん:
「ももちゃんが、ちょっと前に放牧場で倒れていて…」
ももちゃんが、足を取られて立ち上がれずに倒れていたといいます。ももちゃんは、実は妊娠していて、9月17日は分娩予定。
糸田さんは、担当者としてお産に立ち会いたいと考えています。
この長引いた休校期間で糸田さんの中には、ある変化が起きていました。
糸田さん:
「牛の農家になって、牛を育てるっていうのも考えたんですけど、直接牛に触れて育てていくよりかは、育てていく人の手助け、支えになるような仕事がいいかもしれないって」
改めて自分の将来について向き合った結果、農家に質の高い遺伝子を提供する人工授精に携わりたいと考え、大学へ進学することを決めました。
糸田さん:
「(休校中)牛に会えなかったのは寂しかったですけど、自分の将来の事をじっくり考えることができたので、そういう面では、いい時間が過ごせたかもしれないです。牛と関わったり、接したりできるのは、自分にとって本当に大事なことだと感じました」
※動画は8月26日に放送したものです