厚生労働省の調査では、2019年10月時点で日本では約40万1326人のベトナム人が働いていますが、新型コロナウイルスの影響で仕事を失った人も多くいます。こうして居場所をなくしたベトナム人の駆け込み寺が名古屋にあります。
■新型コロナの影響で職を失ったベトナム人の駆け込み寺
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名古屋市天白区の曹洞宗徳林寺(とくりんじ)、100年前から続く禅寺です。
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昭和30年代に、学生の下宿用に建てた木造家屋で、今は50人のベトナム人が共同生活しています。
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彼らの多くは技能実習生として来日。
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日本の会社や工場で働いていましたが、新型コロナウイルスの影響で、仕事を失い、居場所がなくなりました。
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ベトナムでは海外からの入国を制限していて、ベトナム行きの飛行機は月に数便に減少。
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4月以降、最大で1万5000人が足止めされました。
■家賃も食事も無料でも「施されたら施し返す」ベトナム流で恩返し
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徳林寺の住職・高岡秀暢さんは、以前ベトナムから僧侶や留学生を預かっていた縁で、今回、帰れなくなった人たちを受け入れることにしました。
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三度の食事は自炊ですが、家賃も食費もタダ。
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支援者からの寄付で、まかなわれています。
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朝6時起床で、夜9時に就寝。
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食事の支度以外は、何をしても自由です。
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スマホで動画を見たり、ゲームをしたり…。
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体を鍛えたり、時にはカラオケも。
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とはいえ、勤勉で真面目なのがベトナム人の誇り。
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畑を耕して、みんなで食べる野菜を育てたり、工具を手に、お寺のために設備を作ったり。施されたら、施し返す、ベトナム流の恩返しです。
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お寺の本堂に続くスロープも、滞在しているベトナム人が作ってくれました。
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この日のランチ。
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メニューは根菜のサラダに、玉子焼きなど。
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お寺の宗派の決まりで、肉、魚、お酒は禁止です。
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タムさん:
「お寺だからお肉は食べない、みんな食べない」
■帰りたいのに帰れないベトナム人たち…不安な心は「座禅」で整える
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技能実習生として日本へ来たタムさんは3年間、香川県の縫製工場で洋服を作っていました。
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タムさんの一家は、母親が1人で子供3人を養っていて、大変な生活だったといいます。
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家族のためにタムさんは日本で一生懸命働き、お金を貯めて、ようやく帰国できるはずでしたが、コロナの影響で叶っていません。
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母親は、新型コロナの影響でタムさんが苦しんでいないか心配していますが、徳林寺では寝食にお金がかからないため、安心させてあげることができているといいます。
留学生として日本に来たソンさん(29)は、愛知県内の大学を卒業し、今年、日本の会社に就職が決まっていましたが、外国人同士のトラブルに巻き込まれ、内定が取り消されました。
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ソンさん:
「私は今、仮放免として日本に滞在しているので、ビザは交換できませんでした。もうがっかりしました、せっかく日本に来たんだけど」
日本の企業は4月入社が多いため、今、就職先を見つけるのは難しいと考えています。働く場所もなく、在留期限も過ぎてしまったソンさんは、入国管理局から「仮放免許可証」をもらって、お寺に駆け込みました。
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帰りたくても帰れない、不安な心は座禅で整えます。
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ローマ字で書かれた般若心経を毎朝6時から、読んでいます。
住職の高岡さん:
「心の不安定が出てくる可能性があると、だから座禅して少しでも安定した心をね、守りましょうと」
■帰国決まったタムさん「もう1度日本に来る」…住職は「帰るまで政府が責任を」
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お寺の暮らしも、2か月。タムさんに嬉しい知らせがありました。大使館から帰国できることを知らせるメールです。
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タムさん:
「あなたは一番先に帰れると。みんなこのメールをもらったらすごい嬉しい。わたしその日寝られなかった」
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8月から、ベトナム便が週に1便に増えました。それぞれの家庭の事情などを考慮して、帰国できる人を、大使館の裁量で決めています。
タムさんたちの送別会。
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米粉で作った麺に豆や芋を煮込んだ「ぜんざい」、ベトナムのごちそうです。
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住職の高岡さん:
「ありがとうね、今まででね、ここにいてくれてね。とても楽しくてにぎやかでしたけどもね、また会えるからね、ありがとう。乾杯!」
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春からお寺で暮らしたベトナム人は、あわせて100人。半年が過ぎ、ようやく帰れる人たちが増えてきました。
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タムさん:
「心から寂しい思いも、嬉しい思いもありました。日本は、すごい優しい人もいましたね。日本にまたもう1回来ます。戻ってきます」
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住職の高岡さん:
「外国から来て労働力を提供してくれた方々だからね、ある意味ではお客さん。帰るまでちゃんと日本の政府が責任を持ってお世話してほしいという気持ちはあります」
タムさんは帰国後、取材スタッフに「母に会えてめっちゃうれしい!すごい気持ちが楽になりました」とメッセージを送ってくれました。
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ベトナム人の駆け込み寺。日本とベトナム。コロナ時代の国際交流のカタチは…。