岐阜県関市に本社を置く刃物メーカー「貝印」の爪切りが今、インドで売れています。現地ではコロナ禍で衛生意識が高まり、切れ味抜群の貝印の爪切りが人気を呼んでいます。
貝印は世界から支持されていますが、いまでも関市での刃物の生産にこだわります。そこには、刀鍛冶以来続く、刃物づくりのスピリットがありました。
■コロナ禍で高まる衛生管理の意識…インドで注目を浴びた切れ味抜群の「tsumekiri」
インドで流通している貝印の爪切り。見た目は日本の物とほぼ同じですが、ピックのようなものが付いているのが特徴です。
人気を呼んでいる理由について貝印の現地法人の担当者は、「コロナ禍の影響はあります。そのうえにインド人の間で、健康や衛生に対しての意識が高まっています」と話します。
インドでは手を使っての食事の習慣があり、それだけに新型ウイルスが蔓延するなか、いっそう手指衛生への意識が高まりました。
中には、従来売られていた爪切りは切れ味が悪いため、歯で爪を切っている人もいました。そんななか、注目を集めたのが、2年前に販売を始めた貝印の爪切りです。
注目された理由は切れ味のよさ。爪が飛び散らない構造も、人気の1つとなりました。
さらに爪の裏についた食べカスなどが取れるよう、ピックのようなものも付け、インド人の生活様式に合わせました。
商品名はあえて「tsumekiri」に。他の商品と差別化を図るため、日本語のネーミングにしました。
爪切りは海を越えていま、インドで衛生管理に一役買っています。
■昔も今も刃物の町から…刃物メーカー貝印が刀鍛冶の町“関”にこだわる理由
刃物の町、岐阜県関市で創業した貝印。
明治41年小型ナイフの製造からスタートしました。
戦後、販売部門は東京へ移転しますが、商品の根幹部分である刃物の製造はずっと岐阜県内で行っています。
貝印の遠藤宏治社長:
「関には、800年前から刀鍛冶から始まって、長良川の水、「松炭」松ですね、それから良い土が採れたということで、歴史的な背景が連綿と受け継がれています」
良質な材料に加え、刃物を作る上で必要なインフラが整っていることも、関を中心とした岐阜県に工場を置く理由です。
今も東京ではなく、関に住む遠藤社長は「祖父の代から関に住んで、仕事をやってきた。関市には、こだわっている」と話します。
■社長「刀づくりからのスピリットを」…貝印100年の技術の粋を集めた医療用メスで世界へ
貝印と言えば、カミソリや爪切りなど家庭用の商品を扱う印象ですが、時代と共に変わってきました。今1番力を入れているのが、医療用メスです。
中でも「皮膚科用のメス」に注力しています。円筒状になっていて、クルッと回すと皮膚が切れ、遠藤社長は「普通にメスで切るよりも円筒状でやった方が、傷口が早く治るということもあるんです」と自信を見せます。
皮膚細胞をこそぎとる「トレパン」と呼ばれる医療用刃物。貝印が世界で50%以上シェアを誇る看板商品です。医療用だけに、様々な大きさを求められます。
医療現場でも、100年以上続く貝印の技術への信頼。遠藤社長は、「刃物づくり、モノづくりのスピリット。刀づくりの伝統から、岐阜に生まれ育った人間としてこれからもやっていきたい」と話し、これからも関市から世界へその精神を発信し続けます。