福岡から名古屋に来て40年の女性から、愛知で「お店の開店時に、祝い花を近所の人が取っていく光景を最近見ませんが、今でも行われているのでしょうか?」という質問が届きました。
開店の際に店前に並べられた祝い花を持ち帰る、愛知ならではの風習は、今でも残っているのか?オープンした店をまわり調査しました。
■愛知ならではの風習は未だ健在か!?…花が取られて無くなるのは「商売繁盛の証拠」
そもそも開店の祝い花を取っていく風習を知っているのか、名古屋の街で聞きました。
女性:
「早く行かないと(お花が)無くなっちゃう」
別の女性:
「開店と同時に取っていくので、遅れると花がない。取っていってもらって、それでお店が繁栄するっていう」
やはり、多くの人がこの風習を知っていました。
東海地方では「花がすぐ無くなるのはお店が繁盛している証拠」とされ、開店と同時に近所の人たちが競うように持っていく習わしがありました。
たくさん飾られていた花が、オープンわずか5分で全て無くなる事も当たり前でしたが、今時の名古屋の若者に聞いてみると…。
若い女性:
「え?取るんですか?やばくないですか?」
別の若い女性:
「取らんでほしい。せっかく飾ってあるのに…」
若い世代は、この風習自体を知りませんでした。知っていた人に、花を取った事があるかを聞いてみると…。
女性:
「自分は恥ずかしい感覚だったから…やったことはない」
別の女性:
「(祝い花を取るのは)あつかましいなと思っちゃう…」
比較的上の世代の人でも、“取らない派”が多くいました。愛知の伝統は、消えてしまったのでしょうか。
■店主「商売繁盛のために取って行って欲しい」…寿司店のオープン当日 花は取ってもらえるのか
この風習がまだ残っているのか?確かめるために、名古屋市北区にオープンする寿司店へ。オープン当日ということでお店の外には、祝い花が届いていました。
「すし葵」の店主:
「(花が無くなると)嬉しいですね、それだけ人が見られたってことになるので」
店側としては、商売繁盛のためには持って行ってほしいという思いがあります。間もなくオープンの時間。果たして開店と同時に人が集まり、一瞬のうちに無くなってしまうのでしょうか。
早速、店の前を通る年配の女性が…。
(リポート)
「花をチラッと見たけれど…」
そのまま通過していきました。続いても同じく年配の女性。立ち止まり、看板を見て迷っている様子でしたがそのまま行ってしまいました。
開店から1時間が経過。人通りはあるものの、まだ花は「無傷」のまま。そこから更に2時間、開店から3時間近くウォッチングしていましたが、結局、最後まで花を取る人は現れませんでした。
寿司店の店主:
「(心境は)ちょっと、複雑な気持ちがありますけど…」
少し落胆の店主。先ほど街で聞いた話を裏付ける結果となりました。
■時代の移り変わり…今は開店後も店のインテリアに使える祝い花が急増
なぜ、祝い花を取る人がいなくなったのか?創業75年、名古屋を代表する生花店「坪井花苑」、業界20年のベテランに話を聞きました。
坪井花苑の担当者:
「外に賑やかにスタンド花を飾るのは、少なくなってきている。昔は『いかに華やかに飾るか』ってところがあったけど、今はお花も空間の一部で置きたいと」
経費削減もあり、最近は開店後もそのまま店のインテリアに使えるような祝い花が増え、昔ながらのスタンド花の発注は、全盛期の3割程度にまで落ち込みました。
さらに大型の路面店ではなく、規模の小さな店が増えた影響もあり、場所を取らない胡蝶蘭に人気が集中。
これらが、この風習を見かけなくなった一因ではないか、と担当者は話します。
■遂に発見!愛知の伝統文化…やはり残っていた「一気に祝い花が無くなる」光景
11月にリニューアルオープンした地下街セントラルパークは、10店舗以上が新規開店。オープン初日に調査しました。
祝い花はありましたが、生花店で聞いた通り、店内にインテリアのようにして飾られていました。
本屋ではレジカウンターの棚の上に置かれ、この位置では取っていくことは難しいです。
さらに、店の前に飾られている場合もスタンド花ではなく、多くが今のトレンド「胡蝶蘭」が。ビニールで覆われている花も多く見られます。そもそも取って行くことを想定していないようです。
愛知の伝統的文化は、本当に絶滅してしまったのでしょうか?その時、手押しカートに祝い花を入れている女性が…。
女性:
「『(店員さんに花を取っても)いいですよ』って言われたから」
店員の女性:
「『商売繁盛だから、是非お持ちくださいって』お声がけをしました」
花を持ち帰る真の愛知県人を発見かと思いきや、この女性は九州出身。愛知でこの風習を最初に見た時どう思ったか聞いてみると…。
九州出身の女性:
「失礼やけど盗んでいるんじゃないかと…」
初めて見たときは抵抗があったものの、今では店からの承諾があれば、持ち帰っているといいます。その後は、次々に花を取る人が現れ…。
女性:
「(花を)朝見ていて、早速お昼休みに」
別の女性:
「お店が繁盛しますようにって」
先ほどまで見つからなかったのが、ウソのように次々と、あっという間に花がなくなりました。
お店の担当者:
「まず誰かが抜くと、ワーッと抜いてくださったりするので」
誰か1人が取ると続けて他の人も取っていき、一気に無くなるようです。
開店の祝い花を取っていく愛知の風習。最近は「取っていっていいのかな」という迷いがあるものの、店から「いいよ」と言われたら持ち帰る、という結果でした