岐阜県中津川市に、世界的な発明展で銀賞に輝いた中学3年生がいます。発明品は、火災などの際に室内から外せる機能を付けた、住宅の窓に取り付ける防犯用の「格子の柵」です。

 大人も驚く斬新な発想で、様々な発明品を作る原動力は、困っている人を助けたいという思いでした。

■女性や子供でも簡単に取り外せる、ありそうで無かった『格子柵』…発明したのは中学生

 一見、どこにでもありそうな格子柵。

 しかしこれが、10月に開催された世界各国の青少年の発想や創造性を競う「世界青少年発明工夫展」で銀賞に輝きました。発明したのは、岐阜県中津川市の中学3年の稲垣龍樹さん(15)です。

 この格子柵は室内側、窓の下に「クランプ」と呼ばれる留め具が付いています。

 そのオレンジの部分を上に上げると、柵を室内から簡単に取り外すことができます。

 火災などの緊急時、室内から柵を外して避難できるようになっています。こだわったのは…。

龍樹さん:
「どうやって簡単に抜けるか、力の弱い人でも使えるか。誰かに偏るんじゃなくて、どんな人でも」


 ポイントは簡単に柵を取り外せること。道具を使わずに、力のない女性や子供でも使えるようにしました。

 コンクールに推薦した団体や県によると、中学生が社会性の高い問題に取り組んだこと、盗難対策と避難対策の観点から安全性・防犯性、2つを兼ね備えたこと、それにクランプを取り入れた構造が評価されたといいます。

 製作期間は1か月ほど。車庫を改装した工房で、配管工の父親に技術的なフォローをしてもらいながら、母親の意見も聞き、家族で相談しながら作りました。

■硝子店社長「メーカーに見せたい」…建設業界の人間ではまず思いつかない発想に驚き

 中学生が考案したこの格子柵をプロはどう見るのでしょうか。格子窓などを扱う硝子店で聞きました。

 市販されるものは防犯のみを目的とするため接着しながら固定し、全部外からつけられていて、室内から取り外しできるものは見たことがないと言います。

硝子店の社長:
「すごいなと、壁に穴をあける感覚が、建設業界の人間にまずない発想。到底思いつかなかったですね。メーカーに見せたいですね」

 銀賞を受賞したことに両親は…。

父親の祐樹さん:
「びっくりですね。まさか、そこまでいけるとは思ってなかったので」

母親の頼子さん:
「『もうやめたら』と思うくらい夜遅くまで続けて。『よくがんばったね』って素直にほめてあげたい」

■命を守るためのものがなぜ命を奪うのか…発案のきっかけは“京アニ放火事件”

 プロも驚くこの龍樹君の発明品。その発案は、1年前の京都アニメーションの放火事件にありました。

龍樹さん:
「窓から逃げようとした人が、防犯用の格子柵に阻まれて逃げ出せないことが…。『なぜ、命を守るための防犯用の格子柵が、逆に命を奪う形になっているんだろう』と」


 命を守るためのものが、逆に命を奪う…その疑問を突き詰めた結果、この格子柵が生まれました。

 龍樹さんは小学2年生の時、図工の授業で創る喜びを知って以来、「困っている人の意見」をきっかけとして発明を続けてきました。

■祖父「常に困っている人の事を思ってくれて嬉しい」…世の中の役に立つ発明を続ける中学生

 困っている人の立場でモノをつくる、子供とは思えない発明品は他にもありました。

 10歳の時、母親からのリクエストで作った伸び縮みするテーブル。

 炊飯器を置く収納台のレールからヒントを得て、ばね付きの金具で簡単に固定できる、使い勝手のいいテーブルです。

 また、普通のものの5~6倍はある黒い大きな将棋盤も。

龍樹さん:
「おじいちゃんが弱視で目に見えにくく…。置くと、黒の盤に白なので分かりやすくて」

 目の悪い祖父のためにと、小学2年生の時に作りました。龍樹君は将棋盤が大きすぎて、対局しづらいのが難点だったと振り返りますが、大阪に住む祖父は…。

祖父の原田熱士さん(79):
「嬉しいですよ。絶えずそういう風に思ってくれているからね。人の役に立つようなものを考えてくれたらいいなと」

 父親にとっても自慢の息子です。

父親の祐樹さん:
「好きなことをなんでも自由にやらせていますので、どれか一つ伸びてくれればいいなと」

 「自由に好きなことを」その方針が若き発明家を生みました。龍樹君は将来、プログラマーを目指しているといいますが、発明は続けていきたいと話します。

龍樹さん:
「どんな小さな案でも広げていけば、必ず世の中の役に立つようなものができるので。困っている人のため」


 若き発明家は困っている人を助けるため、これからも発明を続けます。