愛知県名古屋市に、シフォンケーキが人気のカフェがあります。そのシフォンケーキには「おから」が使われていて、フワフワとした食感と優しい味で人気です。
このカフェは、おからを愛する女性が一念発起して開業。今、多くの人たちから愛されています。
■優しい甘味で人気の手作りのシフォンケーキ…おからを愛する女性の店「こっこ屋」
名古屋市西区、枇杷島の住宅街に手作りシフォンケーキのお店「こっこ屋」はあります。
店主は飯塚徳子（61）さん。ご主人と3人のお子さんの5人家族です。店名の「こっこ屋」は、徳子さんの幼少期の愛称 “こっこ”からきています。
店はわずか6坪。1階は販売スペースと調理場。2階は10席ほどのイートインスペースになっています。店頭には徳子さん手作りのシフォンケーキがずらり。定番ものから季節限定品まで、常に10種類ほどが並びます。
女性客:
「フワフワしておいしかったので、また食べたいなと。素材にこだわっているので、小さい子いるので安心だなと」
男性客:
「優しい気持ちになれますね」
看板商品は「こっこちゃんプレーン」（20センチホール2400円・1カット240円）です。厳選した材料に、おからがたっぷりと入ったヘルシーなシフォンケーキです。徳子さんが2年かけて作り上げた自慢の味。
フワっとしながらもしっとり感もある優しい甘みが特徴で、年齢問わず愛されています。
店主の徳子さん:
「小さいお子さんからお年を召した方まで。食べた方の体に負担が少ないというのが基準ですね」
■「シフォンケーキは懐が深い」どんな食材でも抱き込んで美味しく仕上がる
原料の小麦粉は北海道産。オーガニックの菜種油に、きび砂糖。おからは近隣の豆腐店から仕入れています。シフォンケーキで一番多く使う卵は、豊田市の生産者から、新鮮な物を直接届けてもらい、品質と鮮度にこだわっています。
黄身は、小麦粉、おからと合わせて、卵白はメレンゲに。しっかりと泡立てたら、黄身の生地と手早く混ぜ合わせます。こうすることで、フワフワに仕上がります。おからを入れることでしっとりとなります。その代わり、フワッと膨らませるのが難しくなりますが、2年以上試行錯誤して、やっと今のレシピができました。
徳子さん:
「シフォンケーキって懐が深くて、どんな食材でも素材でも抱き込んで、美味しく仕上がるんです」
素材を優しく抱き込んだ、徳子さん自慢のシフォンケーキ。定番の「バナナシフォン」（1カット240円）。
力強い味わいの「いちじくとナッツのラムシフォン」（1カット300円）に…。
大人の和テイスト「玄米甘酒と杏子のシフォン」（1カット280円）。
季節限定の商品もあります。
■長男と次男が自閉症と診断…作業所がおからスイーツとの出会いの場に
徳子さんがおからを入れようと思ったあるきっかけがありました。23歳で同じ職場だった夫・博さん（70）と結婚し、3人のお子さんをもうけました。ある時、長男と次男が自閉症と診断され、子育てに主婦業にと忙しい毎日を送っていた徳子さんは、50歳のころ、次男が通っていた作業所でおからスイーツと出会いました。
徳子さん:
「おからが捨てがたいというか、お豆腐を作るための産業廃棄物なんですね。とんでもないなと思って」
不要なおからでも栄養価が高く、おいしくなる。いつからかおからを使ったスイーツの店をやりたいと思うようになりました。
徳子さん:
「少し大きくなったので、子供達が。誰かのお母さんではなく、奥さんではなくて、飯塚徳子として何かがしたいと思いました」
年齢的にも、店をやるなら最後のチャンスと思った徳子さんは、54歳の時に店を開くことを決意。
■夢のカフェ開店への高い壁…“ラスボス”の夫を2年かけて「倒す」
店を開くと決意した徳子さんでしたが、夫の博さんは「家賃を払うので精一杯となるから」と反対したといいます。しかし、あきらめきれなかった徳子さんは、自宅でケーキ会をしながら、周りの友人たちに協力してもらい、2年かけ夫を説得。
徳子さん:
「『じゃあ、物件見ていいよ』ってやっと言ってくれて、すごく嬉しかったです。やったーと思って『ラスボスを倒したぜ』と…」
徳子さんの熱意に押された博さんは、店がオープンした後、掃除・洗濯・食事の準備などほとんどの家事をこなしてくれています。
徳子さん:
「口で言うのはなかなか…。ありがとうぐらいしか言えないですけど、それ以上に感謝しています」
■客「人柄がシフォンケーキに出ている」…店のもう一つの魅力は店主の笑顔
念願の店を開いた徳子さんは、自分の中でいくつかの約束事を作りました。その1つが「休みを必ずとり家族との時間をもつ」。
徳子さん:
「家族のおかげでこのお店をやってこられたので。休みの日は、家族を第一に考えて過ごしています」
そしてもう1つ。店を開いている間、接客の心得として決めている事があります。カウンターに貼られている1枚のメモ…。
徳子さん:
「『うれしい・楽しい・幸せ・大好き・ありがとう・愛してる・ツイテル』っていうワードを、何かしらお客さんとの会話に入れていこうと思っています」
2つ目の約束は「どんな時でも笑顔で接客」。レジの横には、来てくれた客をもてなすための、色んな言葉が記されています。
女性客:
「開店して以来のファンで。（徳子さんから）元気をいただいて前向きになれるっていうんですかね」
別の女性客:
「やさしい味。飯塚さんの人柄がシフォンケーキに出ていると思います」
もう1つの店の魅力は、徳子さんの人柄。
徳子さん:
「とにかく笑顔で。お客さんがここを出るときは笑顔でだといいなと思って努めています」
こっこ屋は名古屋市西区の名鉄「東枇杷島駅」の近くです。