岐阜県の飛騨高山高校で、飛騨牛の飼育に青春を捧げる高校3年生の女子高生がいます。彼女が情熱を傾けるのが、高校生が飼育した牛のコンテスト「和牛甲子園」です。
2021年1月オンラインで開催された今年の大会で、飛騨高山高校は肉質を審査する“枝肉部門”で見事優秀賞に輝きました。
卒業後、牛の“人工授精”などを学ぶため東京の大学への進学を選んだ彼女は、将来は地元に戻り質の高い飛騨牛を生産したいと夢を語ります。
■三年間の集大成…高校生の飼育した和牛NO1を決める「和牛甲子園」今年はオンライン開催に
岐阜県高山市の飛騨高山高校3年生の糸田葵さん。
50頭の飛騨牛を飼育する「生物生産科」で学びながら「動物研究部」にも所属、授業以外でも牛の世話に明け暮れる日々を送っています。
1年生の時に一目惚れし、愛情を注いできたメス牛の、ももちゃん。2020年の秋、彼女に子供が生まれました。糸田さんは、母牛の名“もも”と、自らの名 “葵”が“き”とも読めるため“百葵(ももき)”と名付けました。
糸田さん:
「娘に子供ができたみたいな感じ。孫?おばあちゃんになっちゃう」
そう微笑む糸田さん。しかしこの1年はやはり、いつもとは違う高校生活でした。
2020年4月、新型コロナの影響で3か月間の休校。毎日していた牛の世話すらままならず、遠くから眺めるだけの時期もありました。
そして2020年12月。翌月に行われる高校生活最後の大会に向けて準備をしていました。全国の高校生が育てた和牛のナンバーワンを決める「和牛甲子園」です。
例年は東京の会場に集まり、これまでの取り組みの発表や肉質の審査が行われますが、今年はオンラインで開催になったため、牛だけが東京の会場に向かいます。取り組みの発表は事前に収録した動画を提出します。
糸田さん:
「他県の子たちがどんなことをやっているかとか、交流するのが結構楽しみだったので、寂しいなって」
提出期限まで、あと数日。遅くまで学校に残り、準備を進めます。
■「牛の人工授精について学びたい」…春から東京の大学への進学決めた娘を家族も応援
糸田さんは、卒業後の進路を決めていました。牛の人工授精について学びたいと東京の大学に進学。地元・高山を離れることになります。
母の恵子さん(52):
「心配やけど、やっぱりコロナがあるので。ずっと続かないと信じて」
父の尚さん(55):
「気の済むまでやれと。頑張ってねって。父ちゃんも学費頑張るから」
家族団らんも、あと少しです。
■たゆまぬ努力が実るとき…枝肉部門で優秀賞「メス牛」の中ではNo.1を獲得
1月15日、高校生活で最後の大会となる「オンライン和牛甲子園」当日。今年は過去最多の、19県から33校が出場。リモートで東京の会場とつなぎます。
良い肉質になるようにどう育ててきたか、その取り組みの発表と、肉付きやサシの入り方などを見る「枝肉の審査」で評価されます。糸田さんの高校は3年生の6人で出場します。結果は…。
賞の発表者:
「(優秀賞)枝肉番号28番、岐阜県立飛騨高山高等学校」
サシが細かく、余分な脂肪が付いていない点などが評価され、「枝肉部門」で最優秀賞に次ぐ「優秀賞」を入賞。日々の努力が実り、仲間たちと抱き合って喜びを分かち合います。
糸田さん:
「今回出たメス牛の中では一番の成績っていう結果だったので、私はそれで嬉しかったです。満足しています」
■巣立ちの春 牛とも別れ東京へ…「飛騨牛をもっといい物に出来る人になって戻ってきたい」
3年間通い続けた牛舎。牛にかけた高校生活もあとわずか。
糸田さん:
「出産を見たり、肥育したりとかを通して、牛に愛情がすごい湧いてきて…。せっかく生まれてきた牛たちがお肉になった時に、たくさんの人に『おいしい』と思われるようになってほしい」
4月から糸田さんは質の高い飛騨牛を生産するため、大学で人工授精について学びます。
「4年間研究室に入って、技術を持って高山に戻り、飛騨牛をもっといいものにできるような人になれるように頑張ります」。糸田さんの新たな出発です。