名古屋市千種区に、2021年1月にオープンしたばかりのカレーのテイクアウト専門店があります。地元の大学生が開いたこのお店は、新型コロナウイルスの影響で飲食店が厳しい中、知ってもらうためにSNSなどを駆使し、奮闘しています。
たくさんの色鮮やかな野菜を使い、5種類のスパイスを合わせたカレーは、徐々にファンを増やしています。
■大学生2人で立ち上げ…女性に人気の色鮮やかなカレーのテイクアウト専門店
名古屋市千種区。地下鉄・自由ヶ丘駅のすぐそばにカレーのテイクアウト専門店「八O吉(やおきち)」はあります。
メニューは、定番の「八O吉カレー」と月替わりの2種類だけ。どちらもスパイスが香るルーに、彩りよく大きくカットされた野菜が盛られており、女性に人気です。
女性客:
「すごい、めちゃくちゃかわいい」
別の女性客:
「車で25分かけてここまで来て」
この店を立ち上げたのは、南山大学2年生の吉田泰翼さんと名古屋大学4年生の若山純さんの2人の現役の大学生です。
2人は去年、共通の友人を通じて知り合い意気投合。2人が中心となって、1月にこの店を開きました。
■たっぷりグリル野菜にスパイス香る本格的な味…大人から子供まで楽しめる辛さ控えめカレー
午前9時、1台の車がやってきました。積まれていたのは野菜です。吉田さんの実家は、店名の由来にもなった青果店『八百吉商店』。毎日仕入れたばかりの新鮮な野菜を、店にも運んでもらっています。
調理は、南山大学4年生の古澤春さんが担当します。まずは、野菜の持つ本来の甘味を引き出すために、ニンジンの表面を焼いていきます。その後、オーブンに入れさらに1時間。しっかりと火を通します。
ルーは前日から仕込みます。材料は、ヨーグルトとスパイスに漬け込んだチキンと、トマト、タマネギ、エノキなど6種類の野菜です。それに、合わせるスパイスも5種類と本格的です。
古澤さん:
「スパイスカレーって子供も食べられるかなとか、ハードルあると思うんですけど」
「野菜をいっぱい使った旨味たっぷりの辛くないカレーなので、どの世代の人にも食べてもらいたい」と古澤さんは話します。
定番の「八O吉カレー」(1280円)は、にんじん、ピーマン、長芋などの新鮮野菜のグリルがたっぷりと盛られます。その下には、ルーと一緒に煮込まれたチキンが隠れていました。やわらかくてジューシー。スパイスが効いて、いい香りです。
もう1つは、月替わりのカレーです。1月は、「柚子香る鰆とカブのカレー」(1480円)でした。どちらも、あえて辛さ控えめなので、大人から子供まで幅広い人たちに支持されています。
調理担当の古澤さんは学生でありながら、この店の正社員。卒業後もこの店で働くことを決めました。父親は『好きなことをやりなさい』と言ってくれましたが、母親は…。
古澤さん:
「お母さんは普通の会社員になって、というのを想像していたと思うので『カレー屋さんになるの?』って、めちゃくちゃ驚いていました」
両親は毎週カレーを買いに店を訪れ、応援してくれています。
■同級生の起業に「刺激になる」「すごい」…大学の友人たちもカレーを買って応援
午前11時開店。すぐに客がやってきて、月替わりのカレーを購入してくれました。
女性客:
「職場がそこにあるので、夜勤で終わってご飯を。(店が)できたことは知っていて」
古澤さん:
「ありがとうございます。よかったら、ぜひインスタとかで感想聞かせてください」
緊急事態宣言の最中ということもあり、大勢が押し寄せるワケではありませんが、SNSで知った人や、偶然通りかかった人たちが買っていきます。
女性客:
「お店の雰囲気もおしゃれだし、メニューが少ないけど魅力的」
別の女性客:
「車に乗っていて『カレーだ』と思って…。『カレー食べたい』って車停めて走ってきた」
中には、近所に住む80歳のリピーターも…。
男性客(80):
「味ほんと最高、おいしかったです。出て来た時は、カレーどこ?と。野菜ばっかりで、現代的で変わったイメージかな」
若山さんの大学の同級生もやってきました。同級生は若山さんの起業をどう見ているのでしょうか。
若山さんの同級生の男性:
「刺激になりますね。頑張らなきゃと思います」
同・同級生の女性:
「同期で起業している人もいるんだと思うと、すごいなと思って。友達として応援し続けたいなと思っています」
■授業が全てオンラインに…余った時間を使いカレーのデリバリーからスタート
しかし、コロナ禍で飲食業界が大打撃を受ける中、なぜ、この時期に店を始めたのでしょうか?そこには 若者らしいある思いがありました。
吉田さん:
「コロナ禍で、いろんな人に勇気を与えられるような行動をとりたいなと思って」
2020年4月。コロナの感染が拡大し大学も全部オンライン授業に。その時、有り余った時間で何かできないかと思い、まず始めたのがカレーのデリバリーサービスでした。
若者らしくSNSを駆使して宣伝。イベントにも積極的に出店するなどして知名度を上げ、この店を開くまでに至りました。
吉田さん:
「(イベントの)出店とかでリアルに人に手渡しで接客して、楽しいなというのがあったので」
接客の楽しさが、店の開業のきっかけでした。開業資金はクラウドファンディングや、応援してくれる人たちからの資金で賄いました。しかし、このタイミングでの開店に勝算はあったのでしょうか。
吉田さん:
「(店を始めて)逆境しか知らないというか、僕たちがこれを始めた時からこういう(コロナの)状況だったので…」
逆境の中での開店ではあるものの、自分たちの若さや勢いで頑張れていると吉田さんは話します。
■「頭を柔らかく使い工夫してやっていきたい」…苦戦も彼らは前を向く
午後8時閉店。この日はどれ位売れたのでしょうか。
吉田さん:
「今日がカレーが45個ですね。平日でまぁまぁかな」
まだまだ、利益が出るところまではいっていませんが、前向きです。
吉田さん:
「厳しい中ですけどこの流れをうまく自分たちのチャンスに変えて、頭をやわらかく使って工夫してやっていこうと思っています」
カレーのテイクアウト専門「八O吉」は、地下鉄名城線・自由ヶ丘駅目の前です。