2021年3月の春のセンバツで、2年連続東海地区の代表校となった県立岐阜商業高校。その野球部を影から支えるのは、選手からマネージャーとなった河内健太朗くんでした。
河内くんは去年、大会が中止となり夢の舞台に立てなかった先輩たちの思いを受け継ぎ、甲子園で裏方としてチームを支えます。
■選手からマネージャーへ…名将・鍛治舎監督「うちのマネージャーは“助監督”」
甲子園常連の名監督、鍛治舎巧監督が就任して3年。県立岐阜商業高校野球部は、中止になった去年に続き、春のセンバツの切符をつかみました。
鍛治舎監督:
「去年、これでもかこれでもかという感じでしたからね、今年は何が来ても大丈夫だなと思います」
選手たちの中で大きな声を出している部員。マネージャーの河内健太朗くんです。
河内くん:
「選手が練習しやすい環境づくりをするのと、監督とコミュニケーションを多くとって…」
時間管理に道具の片付け。練習中も部室やグラウンドを走りまわり、バッティングケージの位置を監督と確認し、部員に指示します。
河内くんの仕事ぶりには、鬼の鍛治舎監督も「うちのマネージャーは助監督。私の分身」と全幅の信頼を寄せます。
河内くんは、毎日監督とLINEでやり取り。自身の練習メニューの提案が採用される事もあり、励みとなっています。
■自分がチームのために出来る事は…選手から1人選ばれる「マネージャー」への決断
今はマネージャーとしてチームを支える河内くんですが、1年前は選手の1人でした。野球好きの父の影響で、5歳で野球を始めた河内くんは小学生の時、県大会の試合を見て以来、県岐商に憧れていました。夢が叶い、2019年、県岐商に入学し、1年間内野手としてプレー。
しかし、年が変わる時に選手から1人選ばなければならないマネージャー。河内くんは、自分がその候補となっていることを先輩マネージャーから聞きました。
そして2年生になり、監督から正式に受けたマネージャーの打診。マネージャーになる、それは選手として野球が出来ないということ。しかし、その時ある思いがありました。
去年5月、部員に告げられたセンバツに続く夏の甲子園の中止。多くの3年生が悔しさをにじませる中、先輩マネージャーが発した「後輩たちにはこの辛い経験をしてほしくない」という言葉…。
河内くん:
「聞いた時は自分がチームの一員として戦力になっているか不安だったけど、自分も後輩や仲間を思いやれるような存在になっていきたいなって」
練習ができない中、自分はチームのために何ができるのか。河内くんは「マネージャー」の道を選びました。当初は、仲間がプレーしている姿を見ていて複雑な思いでしたが、いつしかマネージャーとして仲間と日本一を目指していくことに誇りを感じるようになりました。
■「マネージャーとして出来る事は全部やりたい」…キャプテンと共にチームを引っ張る
河内くんと共に人一倍チームメイトに声をかけるのは、キャッチャーで4番、キャプテンを務める高木翔斗くんです。キャプテンとマネージャー。立場は違いますがチームを引っ張るのはこの2人です。
キャプテンの高木くん:
「夜遅くまで残ってデータを集計したり、練習しやすいように、朝早く起きてくれたり」
キャプテンの高木くんは「普段練習できているのも、河内マネージャーのおかげなので感謝している」と話します。
河内くんは「高木キャプテンはチームの柱で、チームで1番真面目。甲子園で良い結果が出るよう、自分にできることは全部やりたい」と話します。
河内くん、最後まで片付けをしてグラウンドを去ります。
■選手もマネージャーも全力野球…2年越しの夢の舞台「春のセンバツ」
2月23日。この日は長良川球場で練習。その間に何度もスマホを確認する監督。この日は、センバツの大切な初戦の相手が決まる、組み合わせ抽選会が行われていました。
コロナの影響で今回はオンラインでの開催となり、県立岐阜商業の初戦の相手は市立和歌山に決まりました。
高木キャプテン:
「相手が決まって、より楽しみ。相手はどこであれ関係ないので、自分たちの野球をして勝っていきたい」
河内くんは「冬からずっと甲子園を目標にやってきたので、自分を信じてやってほしい」とチームメイトを鼓舞します。
コロナを乗り越え、2年越しで実現した春のセンバツの舞台。県岐商は初戦で、市立和歌山に0-1で惜しくも敗れましたが、選手もマネージャーも、甲子園のグラウンドで全てを出し切りました。