三重県志摩市の海沿いに、伊勢志摩の伝統食の甘い干し芋を使ったスイーツが人気のカフェがあります。美しい黄金色の『きんこ芋』を使ったこのスイーツは話題となり、今では志摩の新たな名物となっています。

■柔らかい食感が自慢の『きんこ芋』…希少サツマイモから作った伝統的な干し芋

 青い海と空、そして白い灯台が目印の三重県志摩市の安乗岬園地に、2020年12月にリニューアルしたばかりのカフェ「きんこ芋工房上田商店」はあります。

 このカフェを営むのは、店主で主婦の橘麻衣さん(37)。ご主人と2人の息子さんを持つお母さんです。

 店の自慢は、店内のどの角度からも海が見えること。内装は麻衣さん自らがデザイン。段差に腰掛けたり、寝そべったりしながらのんびりとティータイムが楽しめます。

 そしてもう1つの自慢が、志摩市の伝統食品「特選きんこ芋」(1袋1180円)です。全国的にも希少なサツマイモ「隼人芋」で作った干し芋で、柔らかくねっとりとした食感が特徴です。

 大きな釜で3時間煮たあと、1週間天日干しをすることで甘みを凝縮。砂糖や甘味料は一切使わず、芋自体の甘さだけで仕上げています。

■上品な甘さで人気…お取り寄せでも人気の『きんこ芋スイーツ』

 店内にはそのきんこ芋を使ったスイーツも並びます。看板商品が自家製プリンの上にきんこ芋の煮汁の蜜で作ったキャラメルソースと、きんこ芋そのものを乗せた「芋蜜のムースプリン」(400円~)です。

 食べてみると甘みには奥行きがあり、きんこ芋はもっちりとした食感。ふんわりとした上品な甘さが後から口の中に広がります。

 味はプレーン、伊勢茶とベリーの3種類。地元食材と組み合わせた志摩市の新たな名物として、お取り寄せでも人気です。

■結婚出産で一時退職も…きんこ芋の魅力を発信するため再びスイーツの世界へ

 麻衣さんの実家はきんこ芋の製造工房。麻衣さんは子供の頃から父親が作るきんこ芋が大好きでした。今でも時間がある時は、実家の作業を手伝っています。

麻衣さん:
「肉厚でおいしそう。やわらかくてもっちりとしていて美味しく仕上がっています」

 麻衣さんは、高校卒業後は洋菓子作りの専門学校に行き、パティシエの道に進みましたが、結婚、出産を機に退職。家事と育児に追われる中、子供の頃から好きだった「きんこ芋」の魅力に改めて気づき「これを使って何かをやりたい」と考えるようになりました。

 「きんこ芋をいかに可愛く、美しくするかが自分の使命」と考えた麻衣さんは5年前、きんこ芋の魅力を多くの人に知ってもらおうと再びスイーツの世界へ。

 実家の一角に小さな工房を設け、きんこ芋を使ったスイーツの製造販売を始めました。そしておととし、安乗岬にある休憩所の管理者を志摩市が募集していることを知って応募し、かねてから念願だったカフェのオーナーシェフになりました。

■きんこ芋が苦手な我が子でも食べられるように…店舗限定の新メニュー「プレミアムパフェ」

 そんなきんこ芋に情熱を傾ける麻衣さんですが、長男の宗一郎くんはきんこ芋が苦手。そこで子供も大人もみんなが美味しく食べられるスイーツを作りたいと、新商品を開発しました。

 その新作スイーツが「きんこ芋のプレミアムパフェ」(970円)です。チョコレートを絡めたきんこ芋や、きんこ芋を素揚げしたチップス。さらに、きんこ芋の最中などが乗った豪華な逸品です。

 お取り寄せで人気の麻衣さんのスイーツですが、このパフェはわざわざ店舗まで足を運んでくれた人にしか味わえない店舗限定のメニューとしました。

女性客:
「パフェがすごいんですよね、インスタに載っていたので。知らなければ良かったんですけど、知ってしまったらもう…」

 「生まれ育った伊勢志摩をたくさんの人に紹介していきたい」。それが麻衣さんの願いです。