愛知県に、3年前に書いた処女作がベストセラーになった小学生作家がいます。この小学生が新たな本のテーマに選んだのは、心の性と身体の性が一致しない「トランスジェンダー」です。
■1人でも理解すると人生が変わる…トランスジェンダーを考える小学生作家
愛知県に住む、秋元ういさん(11)。5年生の小学生作家です。今回、新しく出版された本では、トランスジェンダーについて考えました。
<「小学生の私たちが知っているだけで、せかいをかえることができる。」(著・秋元うい)より>
『トランスジェンダーの人がいるって聞いたとき、わたしは「普通じゃない」って思った。でも、「じゃあ、ふつうってなんなの?」と聞かれたの。こたえがわからなくなった。』
ういさん:
「1人でも理解をしたり、仲良くしたりすると人生が変わると思う」
みんなにも一緒に考えてもらいたいこと。本のタイトルは、「小学生の私たちが知っているだけで、せかいをかえることができる。」に決めました。
■小2の時に処女作を執筆…12万部を超えるベストセラーに
ういさんが本を出版するのは、今回で2回目。処女作「しょうがっこうがだいすき」を書いたのは、小学2年生の時です。保育園・幼稚園の子に向け、小学校生活を楽しく過ごすためのコツが書かれています。
<「しょうがっこうがだいすき」(著・秋元うい)より>
『ゆうきをだして、おともだちにこえをかけてみよう。
なかよくなると、がっこうがおわってから、あそびにだっていけるんだよ。おかあさんなしで。
ね、わくわくするでしょ。』
ちょっとだけ先輩だからこそわかる気持ちを綴ったこの本は、絵本を合わせて12万部を超えるベストセラーになりました。
■子供向けの本が無いと困るから…きっかけは小3の夏休みの自由研究
そして今回、テーマに選んだのが、心の性と体の性が一致しない「トランスジェンダー」。
ういさん:
「“性別と心のスイッチ”っていうあまりよくわからない放送があって…。でも、おかしいなと思ったから」
ういさんが、「トランスジェンダー」という言葉を知ったのは小学3年生の時。その年の夏休みの自由研究のテーマにしました。まだトランスジェンダーについて深い知識がない中で、感じたことや思ったことをまとめ、この時も一生懸命考えました。
ういさん:
「子供向けの(本)がなくて、大人向けのはいっぱいあったけど、そういう本がないと困るから書きました」
【この記事の画像集を見る】
■あまりにも素直でどう答えたら…トランスジェンダーに投げかけたストレートな質問
もっと知りたいと、日本初となる渋谷区の同性パートナーシップ制度に関わった、杉山文野さん(39)にインタビュー取材しました。
杉山さん:
「小学生の子がそういうのを、学校の宿題とかでやるような時代になったんだなって素直に感じました」
杉山さんは2人の子供を持つパパ。戸籍上は「女性」、心の中は「男性」です。
杉山さん:
「当時から女の子が好きだな、かわいいなっていう感情があったりとか、自分は男なのにって思っている感情はあるんだけども、人にいじめられてしまうような、笑われてしまうようなそんな存在なんだと。『女性』でいるときに楽しかったことっていうと、本当にないなって感じですね」
インタビュー取材で投げかけられた質問は、小学生らしくストレートで核心をつくものでした。
杉山さん:
「(質問が)あまりにもシンプルというか素直すぎて、思わずなんて答えたらいいかなっていうことが多かった気がします」
<杉山さんへのインタビュー>
ういさん:
「女の人だった時はどう思いましたか?」
杉山さん:
「小学生の頃から、人に言っちゃいけないことだって思ってた」
ういさん:
「『トランスジェンダーだ』と、自分から言えない人は、どんな気持ちでしょうか?」
杉山さん:
「自分のことを自分ですって誰にも言えないと、嘘をついている感じ」
■小学生に読んでほしい…理解した1人がみんなに伝えると世界は変わる
取材ノートを元に、“思ったこと”、“みんなと一緒に考えたいこと”をパソコンで原稿にしました。
杉山さん:
「そういう年齢のときから、当たり前のように日常会話にそういった話題が入ってくるってことは大事だと思う。僕が正解であるわけでもないし、僕みたいな人もいるんだよって事実を知ってもらえれば…」
ういさん:
「1人でも理解をしたり仲良くしたりすると、人生が変わると思う。その理解した1人がみんなに伝えてくれると、他も変わってくれることがあるかもしれない」
ういさんは、「トランスジェンダーの人たちは、小さい頃から嫌な思いをしているから、小学生などが知っておくことが大事。だから子供に、そしてトランスジェンダーを知らない人たちに読んで欲しい」と話します。
【この記事の画像集を見る】