雨が多い季節となり、川での水難事故も発生していますが、身近な用水路にも危険が潜んでいます。水の事故に詳しい専門家に話を伺いました。
6月16日夜、岐阜県郡上市で堤防を歩いていた夫婦が足を滑らせ、曽部地川(そべちがわ)に転落しました。
夫は自力ではい上がり無事でしたが、51歳の妻は行方不明に。翌朝、約500メートル下流で見つかり、死亡が確認されました。
事故当時、川の水位は50センチほどで、付近に街灯はありませんでした。
今回は川での事故でしたが、それよりも身近な「用水路」にも危険が潜んでいます。
2020年に東海3県で用水路でおぼれて亡くなった方は5人、全国では150人以上が命を落としています。
水難学会の会長で水の事故に詳しい、長岡技術科学大学大学院の斎藤秀俊教授に、用水路での事故について伺いました。
用水路は全国に約40万キロあり、農地の宅地化に伴い住宅地にも張りめぐらされていて、特に高齢者が転落する事故が相次いでいます。
フタや柵で対策をするという考えもありますが、田畑に水を引いたり野菜を洗ったりするなど水を利用することが目的なので、塞げば利便性が損なわれてしまいます。
仮に塞いだとしても、一部でもフタが空いていると、そこから人が落ちた場合に発見や救出に時間がかかるため、あまり有効ではないといいます。
用水路の事故につながる主なケースは3つです。
1つ目は、高齢の方で足腰が弱くなり、用水路をまたいだときに転倒するケースです。
2つ目が、水に入って作業をするケースで、せき止めていた水の流れを開放すると一気に水が流れ出し、足元をすくわれて転倒してしまうことがあります。
3つ目は、道路や法面でつまずき、滑り落ちて転倒した先に用水路があるケースで、自転車で転倒して突っ込んでしまう事例もあります。
どのケースも、転倒後に頭などをぶつけて意識を失ってしまった状態などで水に浸かってしまうと、浅くても溺れてしまうそうです。
これから雨が多い時期が続き、川や用水路は水かさが増して水流も強くなり、滑りやすくなります。
斉藤教授は、事故を防ぐために「むやみにそういった場所に近づかないこと。そして、油断してはいけないということを再認識してほしい」と話しています。
※画像は斎藤秀俊教授提供