2021年5月、愛知県西尾市の漁港にある「一色さかな広場」に、見た目が鮮やかな海鮮丼などがテイクアウトできる店がオープンしました。この店は、別の場所にある鮮魚店を営む女性が出しました。

 地物の新鮮な海の幸で作る可愛いカップ寿司や、具材をサンドしたごはんのサンドウィッチは地元の人たちに人気です。

■まるでスイーツ…色鮮やかな海鮮丼に海の幸を挟んだごはんのサンドウィッチ

 2021年5月、愛知県西尾市の一色漁港の入り口にある観光市場「一色さかな広場」にオープンした、テイクアウト専門店「魚屋さんのごはんTOTOCO」。ショーケースに並ぶのはマグロなど、地元で揚がった魚をカップに盛った海鮮丼です。

女性客:
「かわいくて、美味しそうでいいなって思う」

男性客:
「ビジュアル的にも好きな方」

 鰻や魚の揚げ物を挟んだごはんのサンドイッチもあります。

 この店を切り盛りするのは、杉浦のぶ世さん。夫婦で仲卸業「魚兼」を営むかたわら、この店を出しました。

■早朝3時半から「海鮮丼」の下準備…仲卸とテイクアウト店の二足の草鞋

 午前3時半。一色漁港に隣接する「三河一色さかな村」には仲卸が店を連ねますが、一般の人も買うことができます。その一角に構える「魚兼」に、のぶ世さんの姿がありました。土日はこの時間からテイクアウトの店で出す刺し身をおろします。

杉浦のぶ世さん:
「アオリイカ。活きだと歯応えあって美味しいっていわれるけど、(1日)寝かした方が柔らかくなるし、甘みが増す」

 キハダマグロのカマも脂がのっていて美味しそうです。

■地物のアオリイカやトリガイを美しく…自慢の「海鮮丼」の鮮度と味

 下ごしらえを終えて向かったのは、100メートルほど北にある観光市場の一色さかな広場。ここにテイクアウトの店はあります。調理場では、のぶ世さんの妹・千尋さんが忙しい姉の代わりに調理をしていました。

 看板商品は「TOTOCOスペシャル」(700円)。地物のアオリイカやトリガイに、イクラやマグロ、サーモンまで盛りました。

のぶ世さん:
「具材は妥協していない。美味しいって自分が思うモノしか入ってない」


 鮮度と味に自信をのぞかせます。そして再び、さかな村に戻り仲卸の仕事です。

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■大きな真鯛が2匹で500円…値打ちで評判の仲卸でテイクアウト店の宣伝も

 午前5時。さかな村の魚兼に、碧南の大浜漁港や一色漁港で競り落とした魚が次々と運ばれてきます。

 この日は大きな「真鯛」(2匹500円)に、刺し身がオススメの「バンコカレイ」(2枚500円)。

 大量の「赤イカ」(一カゴ500円)に、これからが旬の「ワタリガニ」(5杯1800円)もありました。仲卸とはいえ、お値打ちな商品が揃います。

のぶ世さん:
「よかったら、ご飯屋さん向こうの朝市で始めたので、お願いいたします」

 のぶ世さんは魚を販売するかたわら、しっかりテイクアウトのお店の宣伝もしていました。

■ごはんのサンドイッチも人気…鰻の蒲焼と卵焼きをごはんで挟んだ「のり五郎」

 午前6時。妹・千尋さんが準備をしていたテイクアウト店のショーケースにずらりとカップ寿司が並びました。

 この日は、キハダマグロのハラミとネギトロが盛られた「マグロ日和」(700円)や、地物のアカシャエビの天丼「あかしゃかしゃ」(500円)など5種類が揃います。

 1人の男性がショーケースをのぞき込んでいました。

幸田町から来た男性:
「女将さん(のぶ世さん)が店を開いたので。いつもずっとあっち(魚兼)で」

「魚兼」の常連というこの男性は早速、カップ寿司を購入しました。

地元の男性客:
「向こうのお魚屋さんの方で、絶対美味しいから寄って寄ってと言われたから」

 のぶ世さんの宣伝が功を奏し、次々とカップ寿司が売れていきます。日進市から来た女性はカップ寿司以外に、ごはんのサンドイッチ「のり五郎」(400円)も購入しました。

 のぶ世さんが大好きな地物の海苔を使った「のり五郎」。地元一色産の鰻の蒲焼に、卵焼きと大葉をごはんで挟みました。

断面が美しい、いわゆる「おにぎらず」です。

■「おいしい魚をたくさんの人に食べてほしい」…亡くなった次男の思い継ぎ店をオープン

 午前7時半。仲卸の仕事を終えて、のぶ世さんが店に戻ってきました。仲卸の店にテイクアウト専門店と早朝から働き詰めの、のぶ世さん。負担は大きいはずですが、新しくお店を出したのには理由がありました。

 理由は、2年前に不慮の事故で亡くなった、のぶ世さんの次男の大智さん。以前、大智さんはこの場所で食堂をやっていました。

「おいしい魚を多くの人に食べてもらいたい」が大智さんの信条で、繁盛していたといいます。亡くなった後に、のぶ世さんはGReeeeNの『空への手紙』を聴いたといいます。

のぶ世さん:
「歌詞で『思い半ばでこうなって』みたいな…。多分あの子は魚がすごく好きだったし、食堂を始めるようになって、こだわりをもってこれからだよって時にこうなっちゃったじゃないですか。あの子と同じことは私にはできないけれど、『笑って頑張ってるよ』って言えるようになりたいなって」

 のぶ世さんは大智さんの思いを受け継ぎ、同じ場所に店を構えました。可愛らしく盛られたカップ寿司には、息子の情熱を受け継いだ母の思いが込められていました。

のぶ世さん:
「小さな子からおばあちゃん、おじいちゃんまで、ニコって笑える商品がいいなって」


 魚の美味しさをたくさんの人に…。のぶ世さんはこの地で魚が大好きだった息子と共にその思いを伝えます。

「魚屋さんのごはんTOTOCO」は、愛知県西尾市の一色漁港の入り口にある「一色さかな広場」にあります。

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