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名取裕子さんクランクアップ「世代を問わず作品のメッセージを届けたい」
親友のさくら(真矢ミキ)と共に、子どもシェルター「ハチドリの家」で問題解決に奔走する弁護士・三谷桃子を演じた名取裕子さんが、一足早くクランクアップ。撮影を終えたいまの思いを聞きました。
一致団結した現場でした。現実的な話ですけど、冬のドラマは現場も寒いことが多いんですが、その寒さが却ってみんなの気持ちを一つにしてくれたと思います。真矢さんが若手のメンバーと真剣に向き合う姿、若い子たちのピュアな演技に私も大いに触発されました。
- 桃子を演じてきて如何でしたか?
- さくらさんは子どもたちだけでなく、子育てを頑張っている大人のことも助けようとします。桃子も弁護士として彼女なりに活動をしています。ふたりがそれぞれのやり方で子どもを救おうとする姿が印象的でした。
私はこれまでも法曹界を舞台にした作品で、医者・弁護士・刑事といろいろ演じてきて、どこかテキパキしたキャラクターが多かったんです。桃子は子どもたちのことが最優先なので、ファッションにはそんなにこだわりはなくていいかな、と思っていました。それこそいつも同じ服を着ているくらいでいいんじゃないかと(笑)。
桃子は、幸せを願う“種まく人”
- 本作の脚本家・清水有生さんの台本を読んで、どんなことを感じましたか?
- 物語自体がきれいごとでないし、重いテーマを扱っていますよね。それでも暗くならずに、どこか人間の善の部分を信じている。桃子は子どもたちを取り巻く厳しい現状をいやというほど突きつけられて、負の環境の中で問題を起こす子どもの姿もたくさん見てきたはずです。裏切られてきたこともあるでしょうが、それでも桃子は「自分自身の力で虐待されてきたような環境から抜け出して、自立して幸せな家庭を持てる大人になってくれれば」と願っています。桃子は“種まく人”でもあるのかもしれないですね。
- 桃子はきっと、立ち直った子どもも見てきたのではないでしょうか
- 数少ないかもしれないですけど、いたと思います。親との絆を信じることができなかった子や、親に何の期待もできなかった子が親になったとき、親のことが理解できたり、人として痛みがわかったり。そこまでたどり着くのは時間がかかったとしても、桃子は何とか子どもたちに進むべき道を示そうとしているのだと思います。
- さくらと桃子の関係をどう思いますか?
- 犯罪被害者の家族と、加害者側の弁護士。台本にはふたりにどんなやりとりがあったのか書かれていません。きっと修羅場もあったでしょうし、葛藤もあり、戦いもあり。その中で桃子がさくらさんに、罪を償って生き直す子どもに手を差し伸べる活動を始めるよう、背中を押したのではないかな、と私は感じています。
子どもたちに、自分が大事な存在だと伝わってほしい
- 名取さんは「オトナの土ドラ」枠の作品初出演です。夜11時台の連ドラへのご出演は珍しいと思いますが?
- 「オトナの土ドラ」…。“オトナ”ってどれくらいの年齢のことを指しているのかしら(笑)。この作品は真矢さんと同じ世代の方も、私と同じ世代の方もご覧にいただきたいですけど、「ハチドリの家」に避難している少年少女と同世代の皆さんにもご覧いただきたいです。作品からのメッセージは世代を問わず、届いてほしいものですから。
- 名取さんはかつて、学園ドラマの名作「3年B組金八先生」にご出演でした。当時と今では子どもたちを取り巻く環境も大きく違います。それでも子どもたちに届けたいメッセージは変わらないものですか?
- 今回の台本に「選ぶのは自分」というセリフがありました。たった1回しかない人生。できるならば“もったいない人生”は送ってほしくはないですね。今は情報が溢れ、何を選ぶのか、そのチョイスが難しいと思います。価値観も時代によって変わっていきます。そうだとしても、自分の人生を自分で壊したりしないように、自分は大事にされるべき存在なんだということが、この作品を通して伝わってほしいですね。
- 物語はここから終盤に差し掛かります。見どころをお聞かせください
- さくらさんは目の前にいる子どもを抱きしめ、助けようとします。一方で桃子には一人でも多くの子どもたちを最悪の環境から救い出したいという信念があります。目指す頂上は一緒でも登り方が違うことが物語にどんな影響を与えるのか見ていただきたいです。今後、ふたりの意見が分かれる場面があって、桃子の発言をもしかしたら冷たいと思う方もいるかもしれません。でも桃子の思いが伝わるセリフを清水さんが書いてくださったので、監督に「このシーンだけは編集で切らないで!」ってお願いしました(笑)。
桃子のバックグラウンドっていうのも気になりますよね。子どもを救う活動に至るまで、彼女がどんな道を歩んできたのか。桃子自身にも家庭はあるのか、子どもはいるのか…。チャンスがあるなら、スピンオフで桃子をさらに演じたいくらいです。
- 改めて視聴者の皆さんにメッセージをお願いします。
- 子どもたちを守り、幸せに導く話ではありますが、「さくらの親子丼2」は親世代の皆さんにも幸せとは何なのか、問いかけのある物語だと私は感じています。ドラマの中でさくらさんは子どもたちに“自分にできることを精一杯やる”という生き方を伝えようとします。その奮闘が視聴者の皆さんの心をきっと打つはずなので、ぜひ最後までご覧ください。