【番組概要】
「オウム真理教事件」麻原彰晃。「和歌山毒カレー事件」林眞須美。「名古屋女子大生誘拐事件」木村修治。「光市母子殺害事件」元少年。これらは、すべて死刑事件である。そして、今、死刑事件の弁護を請け負う弁護士は少ない。極悪人の代理人…。人殺しを弁護する人でなし…。世間から様々な非難を受けるだけでなく、死刑事件の弁護人は、人の命が失われた事件を通して、加害と被害両者の悔恨や悲嘆に苦悶することになるからだ…。
「引き受けなければいけない」
「できれば別の弁護士に頼んでほしい」
安田好弘弁護士(63)。死刑事件の弁護の依頼を受けると二つの思いが交錯すると言う。そして、迷いに迷い、最後はすり鉢の底に落ちていくような気持で引き受ける。安田弁護士が死刑事件の弁護を受けるのには理由がある。事件の加害者の多くは、経済的に貧窮し、生活していく能力もなく、また信頼できる友人や相談相手がいないことが多い。安田弁護士は、そうした加害者に特有の弱さがあると言う。事件は、貧困と富裕、安定と不安定、山手と下町といった環境の境目で起きることが多い。加害者は個人的な弱さだけではなく、様々な社会的不幸が重なって、犯罪を引き起こしてしまう。加害者を極悪人として叩き、すべての責任を負わせるだけでは、同じような犯罪が繰り返されるのを止めることはできない。安田弁護士は、犯罪は、それを生み出す社会的・個人的背景に目を凝らさなければ、真実が見えてこないという。
弁護士になって以来、まともに自宅の布団で寝ることもなく、事務所に泊まり込み、事件記録と格闘している。
番組では、安田弁護士の活動を通して、司法の在り方を考える。