テイオーの長い休日

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テイオーの長い休日

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脚本家インタビュー

業界の裏事情は昼ドラ並みにドロドロ!?
テイオー脚本家がこの作品に込めた「思いのすべて」を語る!

船越英一郎が、1年以上も仕事がない“2時間サスペンスのテイオー”を演じる土ドラ『テイオーの長い休日』(東海テレビ・フジテレビ系全国ネット)。仕事ほしさにプロデューサーの言いなりになっていた新人脚本家やドラマ志望なのに予算を守れずバラエティ班に飛ばされくすぶっている中堅ディレクターなど、業界で窮屈な思いを抱えている人たちにもスポットを当ててきた今作、その生々しい内容と、そんな若者を救う熱護のセリフに「ものすごく刺さった」「2サスの帝王だけあって言葉に重みがある」など、すべての業界に通じるお仕事ドラマとしても注目を集めている。

明日放送の第5話では業界のドロドロした部分にも切り込むという。ずばり、俳優の移籍問題だ。熱護を、なんとかドラマの仕事に復帰させようと奔走する敏腕マネージャー、吉田ゆかり(戸田菜穂)。彼女を、かつて大手芸能事務所トレランスから“追放”の憂き目に合わせた、宿敵の寿彰(前川泰之)が、熱護たちの所属する小さな事務所に、若手俳優・萩原匠(今井悠貴)の引き抜きという形で本気の揺さぶりをかけてくる――制作は昼ドラを50年以上作り続けてきた東海テレビ。テレビ業界に渦巻く、リアルな裏話をさらけ出すストーリー展開に話題が集まっているこのドラマが、ついに昼ドラばりのドロドロした局面を迎えるのか!?
“業界の生キズ”を赤裸々にさらすようなこの作品は、どんな発想から生み出されたのか。企画の立ち上がりから関わる脚本家・入江信吾氏に、その裏舞台や、脚本に賭ける思いのすべてを聞いた。

脚本家・入江信吾 インタビュー

今後も、業界のリアルな裏側や因縁なんかがますます出てきます(笑)

――いままでの放送でも、何かと“黒い影”を感じさせてきたトレランスの寿が、いよいよ本格的に動き出すようですが…。

「第1話から、“伏線”として出してきた 『吉田ゆかりがどうしてトレランスを辞めることになったか』という謎が、ゆかりと寿の確執として明かされる流れになります。大手芸能事務所が、小さな事務所に揺さぶりをかけてくるというくだりも、リアルな業界のアルアル話から持ってきて、脚本に入れ込みました」

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――「業界のウラ話さらけ出しドラマ」としての『テイオー…』が、いよいよ本領発揮!ということになってくるわけですね。

「寿の動きだけでなく、その他のところにも “業界として痛い話”を盛り込んであります。明日放送の5話の中で、役者になりたての頃の匠(熱護の付き人)が撮影でうまく芝居ができず、監督から『代わりなんかいくらでもいるんだぞ!』と怒鳴られる場面があるんですが、僕自身の生々しいキズか?と問われれば否定はできません。似たようなシチュエーションは何度も経験しているので。

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この場面を書いているときに、『こういうときに、熱護みたいな人がドンと出てきて状況をひっくり返してくれたらカッコいいよな、うれしいよな』と思いながら、書いてました。実際に、自分で書きながら『熱護、カッコいい~~~!!!』って、心の中で拍手喝采してたりして(笑)」

自分の実体験を書けるから、さらけ出しドラマになりました

――どうして、こうした業界モノのドラマにしようとお考えだったのでしょうか。

「このドラマの基軸は、“崖っぷち俳優” 熱護の再生話です。一回、栄華の時代を築いた人が斜陽産業みたいになってきたところで、もう一回返り咲く、という話なので、必然的に業界内部の話にはなるなと思ってはいました。その上で、僕自身がドラマの脚本家として今まで見聞きしてきたことや、経験してきたことを“そのまま書ける”というのがリアルな業界モノにした大きな理由です。間違いなくリアリティが出せますから。取材をまったくしないでリアリティが出せるのは助かります(笑)。そういう意味でも、ものすごく真に迫った話ができているなとは思っています。

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特に2話(工藤遥が新人脚本家・柏木美遊を演じた回。プロデューサーにより不可解な台本の修正を何度もさせられていた)は、自分の体験そのままですね(笑)。結果的には熱護が脚本を守ってくれるのですが、それでは終わらせず、プロデューサーが最後に『じゃ、予算はどうするんですか!』とキレる場面も入れました。
プロデューサーも「予算を守る」という視点では正義なんです。
悪人は誰も居ないのに、携わる人間全員が不幸になる流れになっちゃうんですよね、この業界は…。
誰かひとりが悪いわけではないんです。だからこそ難しい。2話もそうですけど、他の回でもかなり赤裸々なことを書かせていただいて“ここまで書いて大丈夫か?” と心配したんですけど、心優しいプロデューサーのみなさんがOKを出してくださったんで(笑)。書いていて、とっても楽しかったです」

2サスという戦場を失ったのは役者だけじゃない―――

――そもそも、どのような経緯で、このドラマの企画が立ち上がったんでしょうか。

「僕が、脚本のお話をいただいたのは、船越さんと長年、2時間ドラマをたくさん作られてきたホリプロの井上竜太プロデューサーから連絡をいただいたのがきっかけでした。僕自身が、2時間サスペンスがまだあった頃に、井上さんとよくお仕事させて頂いていたんですけど、その枠自体がなくなり、しばらく連絡がない状態だったんです。それが急にどうしたんだろう、と思ったら……

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『船越さんに、2時間サスペンスの帝王役をやってもらうドラマなんだよね』とご説明いただいて…。大枠は、井上さんと東海テレビの松本プロデューサーがかなり組み立てられていて、そこに僕が参加する形だったんですけど、これは面白そうだな、と思いまして。絶対やりたいと思って、ぜひ!とご返事させていただきました。」

――入江さんが2時間ドラマを描くようになったきっかけは?

「もともと僕は、連ドラとか、トレンディードラマとかを書きたかったんです(笑)。縁があって、研修生として入った東映で鍛えられて…東映は、特撮モノと刑事モノが売り物の会社だったんで、猛勉強して、刑事モノの脚本を書けるようにしたんです。そこで『相棒』というドラマでデビューして、そこからもう、僕の“刑事モノの人”としてのキャリアが決まってしまったような感じでした。その流れで、2時間サスペンスも書くようになりまして。もうなんだかんだで、20本近く書いています。僕にとっての主戦場でした。

それが、ある年を境にして急に枠自体がどんどん減っていってしまって。僕が書きだした頃には、もう火曜サスペンスもなくなりかけていました。だから、熱護じゃないですけど…僕自身も、自分の主たる戦場を失ってしまったことに対する、いろんな思いはあり、この思いをどこかでぶつけたい!と今作に臨んでいます。

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だから、2時間ドラマそのものをパロディにして、安易に笑いをとろうといった気持ちはまったくありませんでした。2時間サスペンスをモチーフにはするけど、それ自体で笑いを取る、というのではない。セルフパロディというよりは、セルフオマージュ、という感じで書いていますし、そのうえで上質なコメディにしていけるように作っています。
最初のプロットを、ああでもないこうでもないと、みんなで練っていたときに、船越さんご本人からも意見をいただいたんです。『今まで2時間サスペンスに対する思いとか、今までやってきたことへの誇りとか、そういうものを大事にしたい』と船越さんがおっしゃったので、“ああ、そうだよな!”と思って……企画の軸がその方向に決まって、それで今の形になりました」

――ということは、「2時間ドラマ」というものに対する、入江さんの思いが詰まりまくった作品になっている、という感じでしょうか。

「2時間ドラマがなくなり忸怩たる思いがありました。完全にオリジナルのシリーズ(「釣り刑事」主演・中村梅雀)も手掛けていたのですが、自分でもすごく好きで、ライフワークにしていこうと思っていたくらいなのに、パート7までやったところで枠自体がなくなっちゃって…。終わっちゃったのが悔しかったです。自分でずっとやりたかったものなので…。

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僕、このドラマの放送と同時進行で、Twitterでつぶやいていたりもするんですけど、ドラマが始まってから “かつて2サスに脇役で出られていた役者の方”とか “2サスを作っていた制作会社に居た方” とかが、コメントをつけてくれたりするんです。それを見て、ハッと気が付いたんです。そうか、この人たちも2サスが無くなったことで影響を受けてしまったんだなって…。

「釣り刑事」のときの制作会社も2サスがなくなったことで、かなり苦労をしたらしいですし、会社自体がなくなっちゃった制作会社もあったんじゃないかな、あの頃は…。戦場を失ったのは僕らだけじゃなかったんです。そして、このドラマが、“こういった人たちを応援する作品でもある”と改めて気付かせてもらいました。業界の内輪の話ではありますけど、でも描いている悩みや抗う気持ちはどこの業種でも通じるのではないかなと思っています。」

楽しい脚本作りですが、苦労もしています(笑)

――『テイオーの長い休日』は、全8回のシリーズですが、脚本の執筆で“ここは大変だった”というところはありますでしょうか。

「このドラマは基本的に、船越さんが過去にやった役を生かして、毎回謎を解いていく…事件を解決していくという話になっています。1話は、かなり初期からあの形で決まっていたんですが、過去にサスペンスでやった役…調査官とか、医者とか、弁護士だったり、探偵だったり…を毎回、なにかしら出さなくちゃいけない、ということで、そのシバリが非常に大変でした(笑)。

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毎回、その役に合った事件やら謎を起こして、毎回、解き明かしていくわけなので、それは大変でしたし、あともうひとつ、ホームドラマの要素もある。吉田家が転がり込んでくる、というところから始まって…。
そういう部分も含めて、入っている要素が、いろいろ多いので、それを整理整頓しながらやっていくってのは、なかなか大変でした。けれども面白かったです。あと、タイトルが『テイオーの長い休日』なので、熱護の仕事が成立しちゃったら休日が終わっちゃうんですね(笑)。毎回、なんとかして、仕事が成立しなくなるようにしなくちゃいけない。それもまた、大変だったかもしれません(笑)。」

とにかく、熱護のことを好きになってほしいです

――最後に、視聴者のみなさんへ、入江さんが作品に込めたメッセージをお伝えいただけませんか。

「とにかく、熱護のことを、みなさんに好きになってほしいです! 時代にうまく合わせていくのが美徳みたいに言われがちな昨今ですけど、それができない不器用で愚直なオジサンも居るんだ、と。そういうオジサンの、やせ我慢の美学みたいなものは、最近なかなか描かれなくなっただけに、そこをみんなで応援してあげてほしいと思います。見終わった頃には、みんな、熱護が大好きになってくれていると信じてますし、そうなることを願っています!」

明日放送の第5話では、熱護は、船越がかつて演じた「家裁の人」を想起させる「魂の裁判官」に変身予定だ。若手俳優の移籍問題。果たしてどんな答えに導いていくのか!?
第5話「認めない男」は、明日7月1日(土)夜23時40分の放送だ。