約15万人…名古屋市の65歳以上の独居の高齢者と、自宅に75歳以上だけで暮らす高齢者をあわせた数です。

 この中には、例えば足の不自由な高齢者など避難に手助けが要る人もいます。いわゆる「災害弱者」と呼ばれる人をどう救えばよいのか、名古屋市での取り組みを取材しました。

 毎年のように列島を襲う自然災害。被災した人は、まず避難所に身を寄せることになりますが、避難所への移動自体が困難な人もいます。足腰が弱った高齢者や障害のある人たちです。

 名古屋市熱田区内の集会所。この日、一番東部第二町内会の会合が開かれていました。テーマは、災害時に手助けが必要な高齢者の情報共有です。

一番東部第二町内会の会長 中島さん:
「31番の方、この方は座ることはできるんですが、立ち上がるのが非常に難儀されています」

会合に参加した男性:
「ナンバー3の方なんですけれども、今の状況は耳が遠く足腰も弱いということで」

会合に参加した女性:
「夕方にふらっと1号線を渡って歩いて行かれるときがあるので、そのときはお声掛けはするんですけど」

 足腰が弱っていたり、耳が遠かったり、認知症だったり…。いざという時に手助けが要る高齢者は、この町内でも20人いるそうです。

 この日の会合、実は名古屋市が取り組む「助け合いの仕組みづくり」の1つのステップです。今後、町内会で助けに回る人「サポーター」を決め、個別の支援計画の作成までします。

 避難のはじめの一歩につながる取り組みですが、サポーターの確保に課題があります。この町内会でサポーターになってくれそうな人は10人ほどだといいます。

中島さん:
「(手助けが要る人が)20でしょ。(サポーター候補が)10でしょ。とても手が足りないです。どんどん高齢者は増えてます、毎年のように。それとともに要支援者の方も確実に増えます。サポーターさんになってもいいよという方が、もっと増えることを願ってますけれども、現実には難しいです」

 日中は仕事などで、サポーターの成り手は少ないのが現実です。名古屋市の担当者は…。

名古屋市防災危機管理局地域防災室の担当者:
「地域の方が動かないとできないので、やはりまずは啓発とか。ただ、なかなか昼間・日中、地域の方がいなかったりするので、場合によっては町内にある企業の方にもご協力いただいてやっていくような形になるとは思います」

 誰が誰を助けるかまで決まっている自治会については、半分も届かない状態です。

 手助けを必要とする人への配慮は、避難した後にも必要です。

 西区の特別養護老人ホーム・平田豊生苑。一般的な避難所での生活が難しい人らを受け入れる福祉避難所として、名古屋市が指定した施設の一つです。ここでは、災害時20人ほど受け入れることになっています。

 名古屋市は、平田豊生苑のようにバリアフリーの設備が整っている介護施設やビジネスホテルなど、市内でおよそ150か所を福祉避難所として指定しています。

 手助けが必要な人にとって、福祉避難所は一般の避難所より過ごしやすい環境と言えますが、受け入れる側に不安がないわけではありません。

平田豊生苑の吉田苑長:
「職員が集まれるかどうかっていうことですね。当然自宅が被災してる場合もありますので、そのスタッフの確保というのは課題になるかなと」

 ここでも課題は「人」、支え手の確保です。

 実際、2016年の熊本地震で福祉避難所となった施設では、支え手が足りないために受け入れを制限せざるを得ない状況になりました。

 名古屋市は、福祉避難所から要請があれば応援を派遣するとしていますが、災害時に実行できるかは未知数です。

 災害弱者の避難を支援する担い手をどう集めていくのか、社会全体で考えなくてはいけない課題です。