乳幼児揺さぶられ症候群=SBSは、虐待か冤罪かをめぐって幾度となく論争となってきましたが、岐阜県大垣市で長男への虐待が疑われた母親に対する岐阜地裁の無罪判決は、SBSの基準に疑問を突き付ける形となりました。

 SBS理論は、乳児に硬膜とくも膜の間の出血=「急性硬膜下血腫」、「網膜出血」、それに脳が腫れる「脳浮腫」の3つの兆候がみられた場合、「揺さぶり」などの虐待が疑われるというもの。

 海外で研究が進み、外からでは見えにくい乳児への虐待を見つけるための根拠として、30年あまり前から定着しています。

 厚生労働省も2013年に改定した児童相談所向けの虐待対応マニュアルで乳児に硬膜下血腫が生じた場合、「(親などが)家庭内の転倒や転落だと訴えたとしても必ずSBSを第一に疑わなければならない」と書かれていて、実際にこれを根拠に親が子供と引き離されたり、傷害や傷害致死の罪で起訴されたりするケースが多くありました。

 専門家の間からは「3症状」と「揺さぶり」の関連に疑問を投げかける声も…。

 例えば脳外科医からは「低い位置からの落下でも急性硬膜化血腫は起きうる」との指摘もあります。

 ここ数年、揺さぶりによる傷害事件で無罪判決が相次いでいて、それぞれ落下事故だったのでは…、窒息だったかもしれない…など虐待以外の可能性が指摘されています。

 弁護団によりますと、今回の岐阜のケースでは母親が「病院から児相に虐待の疑いがあると通報され、1年間子供の面会が制限された」とのこと。

 子供が重いけがをしたショック、面会ができない辛さ、それに加えて虐待の疑いがかけられるという三重苦に、母親は心を痛めてきたのです。