愛知と岐阜へ緊急事態宣言が再発令されてから1週間あまり、医療の現場に明るい兆しは見えてきたのでしょうか。新型コロナの最前線で戦う医師に話を伺うと、医療崩壊を食い止めるため、私たちが今一度危機感を共有する必要があるという、厳しい現実が見えてきました。

 話を伺ったのは、中等症以上の患者を受け入れる藤田医科大学病院で陣頭指揮を執る岩田充永副院長です。

Q.緊急事態宣言から約1週間経ちましたが、医療現場に変化は?

藤田医科大学病院の岩田副院長:
「今日も重症の方が11名ほどおられますし、緊急事態宣言の影響というのが医療現場では感じることができないんですけど。状況は変わらないです」

 最前線への効果は、まだ「ない」というのが現状のようです。

岩田副院長:
「1週間後にはこのうちの数%が重症になるということが分かっている病気なので、毎日数人はこれからも重症の方が発生するんだろうな。そうすると僕たちの働き方はしばらくは変わらないんだろうな」

 愛知県では1月、重症者用に確保している病床が一時6割ほど埋まるなど、ひっ迫した状態が続いています。そんな中…。

Q.愛知県内の4つの大学病院で、合わせて22床を新たに重症の方向けの病床が確保されたと聞きましたが?

岩田副院長:
「私たちのところもベッドを増やしたんですが、愛知県の色んな地域からの重症患者さんの依頼がくるので、やはりその地域では重症の方が収まりきらなくなっているんだろうなと」

 愛知県は、新型コロナ対策で連携協定を結んでいる、藤田医科大学や名古屋大学など4つの大学病院の協力を受けて、重症者用の病床を新たに22床確保したと発表。藤田医科大学病院では新たに2床増やし、重症者用の病床は17床となりましたが、それでもすでに半分以上の11床が埋まっています。

 また、受け入れ患者を増やすということは、医療全体で見ると大きなリスクを背負うことにもなるのです。

岩田副院長:
「他の3大学も同じことだと思うので、コロナの重症者の方のベッドを増やしたイコール、通常の救急対応ができる集中治療室が減ったと」

Q.重症者向けのベッドは増えても、スタッフの人数が増えたわけではない?

岩田副院長:
「コロナの重症の患者さんに対応するスタッフを増やすということは、普段コロナ以外の救急の対応をしているスタッフを減らすということですので、総数が増えるわけではありませんから」

 集中治療室は一般的に患者2人に対し1人のスタッフと言われますが、コロナの重症者の場合、2人3人と多くのスタッフが必要となります。

岩田副院長:
「これはすごく心配ですね、特にこの冬は脳梗塞ですとか心筋梗塞ですとか、コロナ以外の救急患者さんも例年と同じくらい救急搬送されていますし、その方たちのベッドは無くならないようにというのは本当に願うばかりです」

 そんな中、大きな期待がかかるのが、2月下旬からと言われるワクチンの接種。しかし、岩田副院長の表情は曇ったままでした。

岩田副院長:
「効果があってほしいと願うばかり…という感じです。最近あんまり期待して、裏切られると心が折れちゃうので」

 新型コロナの最前線で戦い続けておよそ1年。最後に今後の見通しを伺いました。

岩田副院長:
「マラソンのゴールがどんどんどんどん先になっちゃう気持ちなので今は…。もちろん医療もみんな僕たちもがんばってやっていますが、やっぱり感染しないでいただきたいなと、それが1番だな」

※画像は藤田学園提供