グルメや電化製品など様々な返礼品で人気のふるさと納税。実は名古屋市には、その返礼品がほとんどありませんでしたが、今年から大幅に充実させることを決めました。その背景には「お金」を巡る、ある大きな問題がありました。

 赤味噌の香りと深いコクが味わえる名古屋メシ・味噌煮込みうどん。大正14年から続く老舗「山本屋総本家」が新たに目を付けたのは、ふるさと納税の返礼品です。

山本屋の小松原代表:
「うちの企業も参入したいと考えました。煮込みが大好きな方に買っていただいて、納税の方をお願いしたいと思います」

 インターネットサイトから通販のように商品などを選ぶことができ、「返礼品競争」といわれるほど人気が過熱したふるさと納税。

 名古屋メシの代表格「味噌煮込みうどん」は、当然名古屋市の返礼品に入っているのではと思う人も多いかもしれませんが、実はこれまで名古屋市は返礼品競争に否定的。

 市のふるさと納税のプランは、犬や猫の殺処分を防ぐための寄付など返礼品を伴わないものがほとんどでしたが、一転、新年度から返礼品を大幅に増やし、本格参入を決めました。

小松原代表:
「非常に今コロナ禍で売り上げも下がっておりますので本当にありがたいと思います。希望が見えます」

 ふるさと納税の誕生から10年以上。なぜ今になって名古屋市が本格参入を決めたのでしょうか。その背景にあったのは「市税の流出」です。

 原則、自分が住んでいる自治体以外に寄付をするふるさと納税。名古屋市民がふるさと納税をすれば、その分市の税収も減りますが、問題なのはその金額でした。

名古屋市財政局資金課の担当者:
「だいたい81億円ぐらい、名古屋市の市税からその寄付の関係で控除されているという状況ですね」

 なんとおよそ81億円。その額は年々増え続け、名古屋市の流出額は、横浜市に次いで全国で2番目に多くなっていました。

担当者:
「80億という金額はですね、事業規模的にいってもなかなかないような金額になりますので、非常に厳しい状況ではあります」

 税金の流失を防ぎたい名古屋市。一方で、本格的な参入でコロナ下の事業者への支援にもつなげたいとしています。

担当者:
「市内の事業者が非常に厳しい状況に置かれているということで、このふるさと納税の返礼品を使って、多少なりともご支援ができるのではないか」

 名古屋市は今後、事業者などに対して返礼品の募集を始める予定で、本格参入は今年10月以降になる見通しです。