スギHD秘書から再三の電話「話にならない 上を出して」会長夫妻のワクチン予約 便宜はこうして図られた
各地で始まった高齢者向けの新型コロナウイルスワクチン接種の予約。ところが、この予約を巡り、ある市の幹部が特定の市民に便宜を図っていたことがわかりました。
中村西尾市長:
「市民の皆さまからの信用を著しく損ねてしまったことに対しまして、心からおわび申し上げます。申し訳ございませんでした」
11日会見で謝罪したのは愛知県西尾市の中村健市長、そして近藤芳英副市長ら市の幹部。ワクチン接種を巡り、市内在住で「スギ薬局」を展開するスギホールディングス杉浦広一会長(70)と、妻の昭子相談役(67)の予約枠を、市が優先的に確保していたことが発覚しました。
中村市長:
「通常の働きかけという言葉ではなくて、より強い、より重いものだったと思いますので、圧力やプレッシャーという形で現場としては認識をして対応したものと考えております」
西尾市の発表などによりますと、事の発端は4月12日、スギホールディングスの秘書から西尾市の健康課にあった1本の電話。会長夫妻のワクチン接種について、秘書はこう話したといいます。
<秘書の女性>
「4月19日から始まる高齢者入所施設の枠で、受けることはできませんか?」
<健康課職員>
「高齢者入所施設の枠ではできません」
一旦は断ったものの、その後も電話があり課長が対応。しかし…。
<秘書の女性>
「あなたじゃ話にならない。上を出して」
その後、健康福祉部長は特別扱いできないことを秘書に伝えたといいます。すると…。
<秘書の女性>
「夫妻は薬剤師であるので、医療従事者の枠で絡められませんか?」
<健康福祉部長>
「店舗に出ているんですか?」
<秘書の女性>
「出ていません。なんとかなりませんか」
その後も秘書からの電話は続き、近藤副市長が対応することに…。
近藤副市長:
「私の判断の根底には、スギホールディングスの会長ご夫妻にはこれまで様々な形でご支援をいただいております。なんらかの形でお返しできないかと考えたものではあります」
近藤副市長の指示で、一般予約の開始前に「仮予約」。その後、夫妻の接種は正式に予約されたといいます。そして、10日午後から接種の予定でしたが、外部から指摘を受けたことから、近藤副市長から依頼して予約は取り消されました。その際、夫妻は集団接種会場に向かって移動中でした。
市長は一連の問題を発覚まで知らなかったといいます。
なぜ、近藤副市長は杉浦会長夫妻側に便宜を図ったのでしょうか…。
(リポート)
「西尾市にありますこちらの施設は、杉浦会長夫妻らから無償で貸与された土地に建設されています」
西尾市で創業したスギ薬局。1号店だった土地には、杉浦夫妻によってトレーニング施設が建設され、市に無償で提供されています。こうした取り組みなどが評価され、4月から妻の昭子相談役は「西尾シティプロモーション特命大使」に任命されていました。
西尾市では10日から高齢者向けのワクチン接種が始まったばかり。5月6日の受け付け開始時には、限られた枠を確保しようと予約が殺到していました。市民は…。
西尾市民の男性:
「もってのほかだ。いかん!民主的なやり方じゃない。どっちもいかん」
別の男性:
「10日に受けるつもりだったんだけど、受けられなかったんです。要するにいっぱいだと。これは氷山の一角じゃないの」
一方、ワクチンを担当する河野担当相は…。
河野行政改革担当相:
「ワクチンは十分な供給量がありますので、希望する方全員に打てるわけです。何かを確保する必要は全くないと思っております」
西尾市は関係者の処分を検討しています。
スギホールディングスは「問い合わせという形で電話をしたことはあるが、便宜を図るよう依頼をしたことはない」とコメントしています。