愛知県の大村知事へのリコール運動を巡り署名が偽造された事件で、愛知県警は19日、リコール団体の事務局長ら4人を地方自治法違反の疑いで逮捕しました。民主主義の根幹を揺るがす事件の捜査は、主犯格とみられる田中容疑者ら4人の逮捕で真相解明に向けて大きく動き出しました。

 関係者への取材で浮かび上がってきた事件の構図です。リコール団体の会長には高須克弥院長、事務局長として田中孝博容疑者、そして幹部の1人として会計を担当していた渡邉美智代容疑者がいました。

 署名を偽造するアルバイトについては、田中容疑者が名古屋の広告関連会社におよそ470万円で発注したとみられています。その後、下請け会社のポスティング会社を通じてアルバイトを募集。佐賀県では延べおよそ1000人のアルバイトが署名の書き写しをしたとみられます。

 妻のなおみ容疑者と次男の雅人容疑者は、その現場に立ち会っていたという情報があります。田中容疑者が信頼できる身内に指示をしていた可能性もあります。

 警察は今年2月に、県内64全ての市区町村の選挙管理委員会から署名簿を押収しました。そして、その署名簿に書かれていた名前の人物に話を聞き、実際には署名を書いていないということを確認したということです。

 また科学的な捜査として、署名を書き写した紙に付着していた手のひらの模様「掌紋」の分析も進めていたとみられます。掌紋は指紋と同じように証拠の能力が高く、署名を書き写した人が誰だったのかを確認したとみられます。

 今年3月にリコール団体の事務所があった場所を警察が家宅捜索に入った際には、鑑識の捜査員の姿が確認でき、団体関係者の指紋や掌紋を採取したとみられ、実際に選挙管理員会に提出された署名簿の指印と照合していたのではないかと推測できます。

 捜査関係者によりますと警察には当初、4月の名古屋市長選挙が始まる前に逮捕する動きがあり「大号令のような空気感だった」と話していました。

 しかし事件に関わる関係者が多かったことや、田中容疑者は取材に対し、逮捕された場合「カンモクする」つまり黙秘すると発言していました。そのため、田中容疑者が警察の調べに応じなかったとしても、すでに任意で話を聞いている関係者の供述などから、容疑の裏付けを進める必要があったとみられます。

 そのために時間を要し、逮捕が今回のタイミングになったとみられます。

 警察は田中容疑者が主犯格とみて捜査を進めていますが、「署名偽造」を誰が企てアルバイトを発注したのかなど、4人の役割を今後の捜査でしっかりと明らかにしていくとしています。

 また、アルバイトを雇った費用についても一体どこから出ていたのか、今後の捜査で詳しく調べる方針です。