小さな町が大きく二分…『過疎地の医療』巡る戦い始まる 愛知県東栄町の出直し町長選 前職と元職の戦いに
リコール運動を受け、町長が辞職したことに伴う愛知県東栄町の出直し町長選挙が、3日告示されました。辞職した前町長と元町長の一騎打ち。問われているのは過疎地医療の姿です。
4日朝、東栄町役場には期日前投票に訪れる住民の姿が…。
期日前投票をした町民:
「(関心は)ものすごく高いです。特に医療問題ですよね。避けて通れないですから」
別の町民:
「私達の未来、東栄町がなくなっちゃうから。今、一生懸命頑張らないと」
3日に告示された東栄町長選挙は、前職と元職の一騎打ちとなりました。
医療体制縮小を進めてきた前町長の村上孝治さん(63)。
村上さん:
「皆さま方の声を聞き、在宅医療の方向に向かっていきたいと思っております。5日間、死に物狂いで頑張ります」
医療体制存続を訴える、元町長の尾林克時さん(71)。
尾林さん:
「医療は命の源です、我々の命綱です。最後の力を振り絞って頑張りたいと思っております」
人口3000人に満たない小さな町を2分する戦いの火ぶたが、切って落とされました。
東栄町唯一の医療機関「東栄医療センター」。村上前町長のもと、2019年以降救急医療や人工透析を廃止。来年秋の建て替えに合わせ、入院病床をなくすことも決定しました。
これに反対する住民らは、医療体制を存続させる条例改正案が議会で否決されたことを受け、村上町長のリコール運動を開始。必要数を上回る953人分の署名を集め、町長リコールを成立させたのです。しかし…。
村上孝治町長(今年6月):
「町長の職を辞して選挙戦に挑むことを決めさせていただきました」
村上前町長は任期途中で辞職、出直し町長選で信を問うとし、リコール団体の支援を受ける元町長の尾林さんとの一騎打ちとなりました。
村上さんが医療体制の縮小を進めてきた背景には、厳しい財政事情があります。
病院の収支は昨年度2億円を超える赤字となりました。東栄町の税収はおよそ3億円ですが、補填のため一般会計から2億円あまりをつぎ込んでいるのが実情です。
また、定年を迎えた医師らに非常勤での勤務を依頼している状態で、透析や救急を再開するためにスタッフを増やすのは不可能だと村上さんは言います。
村上さん:
「限られた財源と人材をどのように有効に活用して皆で作り上げるか、在宅医療で地域再生をという見出しでやらないと」
村上さんは、看護師による24時間体制の相談システムを設けたうえで、将来的には在宅医療へ切り替えていく方針です。
尾林さん:
「今町民の皆さま方は、『行政と議会にだまされた』『約束が違う』と口々に怒りの声をあげています」
尾林さんは、2011年から1期4年、町長を務めた経験があります。
尾林さん:
「今回の選挙の争点は医療です、と書いてある。皆さんのために最後の御奉公としてやりたいなと」
尾林さんは、村上前町長は国や県とのパイプがなく、周辺の市町村との協議も上手くいっていないと批判します。
選挙戦では、国や県に医師・看護師の派遣を要望し、近隣の市町村とも連携することで入院病床を確保し、救急や透析も再開すると訴えます。
尾林さん:
「リコールをそこまで持っていったけど、住民投票にはならなかった。その気持ちを私は受け止めて、代わって表へ出て頑張りたいと」
人口減少が続く過疎地の医療体制を、どのように整備していくかを問う小さな町の選挙戦。投開票は8月8日です。