まだキレイなのに捨てられる…『ロスフラワー』に新たな命を吹き込む人々 美しい花たちの悲しく儚い現実
まだキレイなのに、不揃いだったり売れ残ったりなど様々な事情で捨てられてしまう花は、“ロスフラワー”と呼ばれています。一般的な生花店では、仕入れた花の3~4割が廃棄処分されるといわれています。このロスフラワーをドライフラワーにして再利用するなど、花に新しい命を吹き込む人たちがいます。彼らは、美しい花たちの悲しく、儚い現実を変えたいと活動しています。
■捨てられるはずだった花が生まれ変わる…クリスマスツリーで輝く“ロスフラワー”
名古屋駅前の商業施設「KITTE名古屋」のエントランスにこの冬、設置された大きなクリスマスツリー。
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高さ13メートルのツリーを彩る約4000本のドライフラワーは、もともと生花店や結婚式場で廃棄処分された花たちです。
施設の担当者:
「様々な事情で、売り物にならないお花を再生させる取り組みをしているフラワーアーティストさんを知って、ぜひ当施設でも発信したいと。お花を主役にすることで『再生』を表しております」
まだキレイなまま捨てられるロスフラワーは、ツリーに飾ることで生まれ変わりました。
女性客:
「『ロス』ってついていても、最初気にしなくて…。かわいいっていうイメージだけ」
別の女性客:
「『再利用』というよりは、もっといい名前をつけてあげたい。こうなるために生まれてきたってお花が思ってもらえるといいですよね」
■「花にもロスが出ていることを知ってほしい」…“ロスフラワー”をドライフラワーとして再生
東京・渋谷区にある、ロスフラワーの再生などをしている「RIN」では、全国の生産者や生花店などから廃棄処分される花を買い取っています。
RINの担当者:
「多いときだと、20箱とか30箱届くときも。お花って、咲いてしまったらあまり売れないんですね。お渡しをするときにキレイな状態でないといけないので、咲ききってしまったものは商品にならない」
売れ残ったり、出荷できなかったり、結婚式やイベントで短い役目を終えたり…。そんなロスフラワーを乾燥させてリースやブーケなどを作っています。
同・担当者:
「早くドライにしないと、色がどんどん落ちてしまいますので、湿度調整はかなり厳重にみています」
すでに色落ちしてしまったものは、ドライフラワーにした後に染色などをしています。新たな命を吹き込まれたロスフラワーは、生まれ変わりホテルや商業施設などを彩ります。
2020年には、名古屋駅のナナちゃん人形のフラワードレスに。2021年には、KITTE名古屋のツリーになりました。
同・担当者:
「花が身近にあること、文化にしていくことのきっかけを作れれば。フードロスと同じように、お花にもロスが出てしまっている、まずはその概念を知ってもらうことで、“どういう風にそれを無くせるのか”と考える人が一人でも多く生まれることが必要」
■市場に出荷できない花をドライにして販売…道の駅のお花を再生させる取り組み
全国有数の花の産地・愛知県田原市のバラ園では…。
バラ園の経営者:
「こちらが長くてしっかりした市場用で、こちらの短いお花を選別しています。枝がしっかりしたものを出荷しています。同じようにキレイに咲いてはいるが、ちょっと細かったり短かったりするので…」
茎が曲がっていたり細かったり、開きすぎた花も廃棄処分になります。愛情をかけて育てても、出荷できない花がたくさんあります。悩める農家のために、地元の道の駅では、ある取り組みを始めました。
道の駅の担当者:
「売れ残ったものとか、生産者さんの方で市場の出荷に向かないものをドライにして販売しております」
3年前に購入した食品用の乾燥機をドライフラワー用に改造。試行錯誤を繰り返し、5時間で150本のドライフラワーを作れるようになりました。
鮮やかな色の新しい菊「カラーリングマム」は、2021年12月に初めて出荷しました。
JA愛知みなみの担当者:
「ハウスで満開にさせて、それを専用の染色液で染めて作っています。今まで、仏花というイメージがあったんですけど、これからはハレの日とか記念日、ブライダルに使って頂きたい」
菊の花は、コロナの影響で葬儀が減り需要が激減。小規模な家族葬も増えたため、今後も先細りです。そんな中、田原市は「カラーリングマム」を開発。勉強会を開き、約20軒の農家が生産できるようになりました。
また、地域の花を毎月自宅のポストに届ける定額サービス、田原の花の定期便「タハナ」(3か月4500円~)もスタート。ひと月で360セットが売れました。
まだキレイなのに捨てられるロスフラワー。一般的な生花店で仕入れた花の3~4割が廃棄処分されるといわれています。
バラ園の経営者:
「少し曲がっていても、飾る中で、『(市場に)出せないけどキレイだな』と。自分たちも嬉しいし、花も一生懸命そこまで成長して喜んでくれるかなと」
美しい花たちの悲しくて儚い現実を変えたい…。ロスフラワーの再生などをしている「RIN」では、花が身近にある文化が広まり、花の需要が増えて花のロスが無くなる、そんな世界を願っています。